「ヤングケアラー」支援の輪を広げる 栃木県が来年度調査へ
特集です。皆さんは「ヤングケアラー」という言葉を知っていますか。
ヤングケアラーとは障がいや病気のある家族を支える18歳未満の子どもをさし、社会問題として顕在化してきています。
一方で、こうした実態はなかなか把握が難しく、彼らをどう支えていくかが課題となっています。
仲田 海人さん:「お姉ちゃんが学校に行けなくなっている時期があったので昼夜逆転の生活をしていたんですね。ボクは学校に行っていたので夜中起こされて話を聞いてほしいとかっていうのが続いていて。ボクも学校に寝不足で行かなきゃいけないという状況が続いていました」
那須塩原市の仲田海人さん28歳です。
仲田さんは精神障害がある3歳上の姉を両親とケアしてきたヤングケアラーでした。
仲田さんは幼いころ家族とよく旅行に出かけたといいます。
しかし、小学校高学年のころ姉が精神的に不安定になり生活が一変しました。
仲田海人さん:「受験とかやっぱり意識し始めるとこの生活がずっと続くのかっていうことが不安にもなるし、勉強する環境、落ち着く環境がほしいというのがあって自分から倉庫とかに入って寝起きするっていうことをやっていた時期もありましたね」
こうしたことから大学への進学に不安を覚えた仲田さんは学校の先生からスクールカウンセラーの紹介を受け進路について相談をしました。
仲田海人さん:「君の心の整理のお手伝いはできるけど君の家庭環境にボクは何もできないということを大人に高校2年生のときに言われたので、ボクが何かやりたいことを選択しても我が家の家庭の問題というのは誰も周りの環境も解決してくれないんだというふうに思ったところがあったんです。なので家族に役立つ仕事っていうところで作業療法士っていう仕事に。色々調べたんですけどねリハビリテーションっていう考え方にとても共感したところがあったので」
工学部に行ってロボットを作りたいという当初の夢をあきらめ、仲田さんは今、作業療法士として障がいのある子どもなどのリハビリをサポートしています。
仲田海人さん:「作業療法士っていう仕事は本当に心と体、両方見れる強みがあって人の心の痛みを共有して話し合って一緒に明るい未来を見い出せるっていうやりがいを感じていて」
ヤングケアラーについて知ってもらいたい。
仲田さんは那須塩原市で去年3月に立上がったヤングケアラー協議会に参加しています。
毎月1回、福祉や医療などさまざまな関係者と支援の在り方について意見を交わし、啓発活動に取り組んでいます。
2020年度、国は公立の中学校1000校と全日制の高校350校のいずれも2年生を対象にヤングケアラーの実態調査を初めて行い、およそ1万3000人から回答を得ました。
「世話をしている家族がいる」と回答した中学生はおよそ17人に1人、高校生はおよそ24人に1人の割合でした。
そして「ヤングケアラー」という言葉や内容といった認知度については中学生も高校生も「聞いたことはない」が8割以上で、「聞いたことはあるがよく知らない」も含めると9割以上を占める結果から理解を深めるために丁寧な説明が求められています。
こうしたなか栃木県はヤングケアラーに必要な支援策を検討するために来年度、県内の小中高生5万人を対象に本格的な調査に乗り出します。
家庭内の問題であるため表面化しにくいこの問題について広く知ってもらう契機にすることを目指しています。
栃木県保健福祉部保健福祉課 吉成恵美子係長:「調査を実施することによって本人が自分はヤングケアラーであると気付いて、例えば家族のお世話をしていて大変だなとか、困ったなと悩んでいる子がいたら1人で悩まずSOSを出して周りの大人の方たちに頼ってもいいんだよということを伝えるきっかけになればなと思っております。ヤングケアラーが子どもらしい生活を送れるように、また成人してもヤングケアラーはケアラーとしての生活は続いていくということから学校とか地域で孤立することがないように適切な支援につなげていくため、この調査が第一歩となるように進めていきたいと考えております」
仲田さんはこうした県の動きから福祉に対する意識が高まることに期待を寄せます。
仲田海人さん:「ヤングケアラーに付随する福祉とかモノの在り方をどうしていくのかっていう指針を示す機会になるのかなっていうことは期待しています。それだけ調査をした上で県としてどうするかっていうところ。例えば支援者の人各地方自治体の人の意識って変わってくるのですごい大きな第一歩だと感じていますね」
一方でヤングケアラーはヤングでは終わらないと指摘します。
仲田海人さん:「18歳になったからどこかの誰かがそれを解決してくれるんだったらいいと思うんですけど、そういうわけじゃないんですね。社会人になっても続いていることなので本人も家族も自分自身の生活を大切にできる生活を築くっていうのを世の中、社会、福祉、医療がサポートできる世の中になってほしいなってことを願うだけなので、そこがボクが1番ヤングで終わらないっていう意味で伝えたいことですね」