「とろみ」付けられる自動販売機が存在感増す(アペックス提供)

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飲食物を飲み込みづらい人のため、飲み物に「とろみ」をつけることができる自動販売機が存在感を増している。

医療・介護施設をはじめ、高速道路のサービスエリア(SA)などにも設置例があり、その数は全国約200台にのぼる。メーカーの担当者は「公共機関の手すりのような存在になりたい」と話す。

調理に手間かかる「とろみ付き飲料」施設職員の負担に

「すごい!こんなんあるんや」「これ、いろんなところにあったらいいな〜」

2022年1月上旬、東北自動車道・蓮田SA(埼玉県蓮田市)に設置された、ある自動販売機の写真がツイッター上で注目を浴びた。コーヒー、ココア、お茶などの飲み物に「とろみ」を加えることができる「とろみ自動調理機」だ。とろみの濃さは「薄い」「中間」「濃い」の3種類から、必要に応じて選べる。

カップ式自動販売機などを手がけるアペックス(愛知県大府市)が18年10月に開発した。医療・介護施設では、食べ物や飲み物を飲み込むための「嚥下(えんげ)機能」が低下した患者に対し、喉を通りやすいよう、飲み物に「とろみ」をつけて提供している。職員は飲み物に「とろみ材」を加えてかく拌し、とろみの程度を調整する工程を手作業で行う。短時間で一度に大量の飲料を作らなければならず、大きな負担となっていた。

そこに目をつけたのが、同社だった。とろみ材を製造するニュートリー(三重県四日市市)とともに、飲み物に自動でとろみをつけて提供する調理機を開発。医療・介護施設に設置を進め、職員の負担軽減につなげた。19年5月にはサーバータイプ、20年2月には給茶機タイプの調理器を開発するなど、多様なニーズに応えている。

「人前でむせてしまい恥ずかしい」外出控える患者も

現在は全国に約200台設置されている調理機だが、前述のSAや百貨店などの集客施設にも設置例がある。アペックスの広報担当者は1月12日、J-CASTニュースの取材に、設置の背景を話す。

「とろみ付き飲料を必要とされる方は外出される際、あらかじめ自宅で調理したとろみ付き飲料や、とろみ材を持ち歩いています。そこには『調理の手間がある』『飲料を持ち運ぶ手間がある』『外出時の飲み物のバリエーションが制限される』『できたての飲料が飲めない』『人前でむせてしまい恥ずかしい』など多くの課題があり、外出を控えるようになる方もいらっしゃることが分かりました」

飲み込みが不安な人でも、安心して外出してほしい――。そんな思いから、様々な施設で設置を進めた。担当者は「高齢化が進む中、飲み込みが難しい方は決して特別な存在ではありません。誰でもどこでも何歳になっても、好きな飲料を好きな時に楽しめる社会にしていきたいと考えています。公共機関の手すりのような存在になりたいと考えております」と今後の設置拡大に意欲を示した。