観測データを元にメロディーが作成された天の川銀河の中心方向(上)、超新星残骸カシオペヤ座A(左下)、わし星雲の「創造の柱」(右下)の画像(Credit: NASA/CXC/SAO/K.Arcand, M.Russo & A.Santaguida)


「ハッブル」宇宙望遠鏡をはじめとした宇宙望遠鏡が観測したデータを私たちはよく画像として目にしていますが、もしも宇宙望遠鏡の観測データを「音」に変えたらどのように聞こえるのでしょうか。


X線観測衛星「チャンドラ」の管制を担うスミソニアン天体物理観測所のチャンドラX線センターでは、天体の画像を音に変換して伝えるソニフィケーション(※)プロジェクトで作成されたメロディーを公開しています。まずはYouTubeで公開されているこちらのダイジェスト版で、その音色に耳を澄ませてみて下さい。



※…非言語音を使って情報を伝える手法のこと。可聴化とも


■銀河中心、超新星残骸、暗黒星雲の観測データからメロディーを作成

3つのメロディーの完全版は、こちらのページで公開されています。


Sonification Collection
https://chandra.harvard.edu/photo/2020/sonify/


天の川銀河の中心方向(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/STScI; IR: Spitzer NASA/JPL-Caltech)


最初に掲載されている「天の川銀河の中心方向(Galactic Center)」のメロディーは、ハッブル宇宙望遠鏡、X線観測衛星チャンドラ、それに赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」による幅およそ400光年に渡る領域の観測データをもとに作成されています。


画像を音に変換するというと難しく聞こえるかもしれませんが、その仕組みはオルゴールに似ています。たとえばこのメロディーでは、画像の縦方向が音の高さ(画像の一番上は最も音が高く、下になるほど低く)に割り当てられています。メロディーは観測データの明るい部分ほどその高さの音が強く鳴るように画像の左から右に向かって再生されていきます。


3つの宇宙望遠鏡による画像は地球からおよそ2万6000光年離れた天の川銀河の中心付近におけるさまざまな現象を示していて、ハッブルは星形成領域の輪郭を、スピッツァーは輝く塵の雲を、チャンドラは超大質量ブラックホールが存在するとみられる天の川銀河中心のX線源「いて座A*(エースター)」や星の爆発によって数百万度に加熱されたガスを捉えています。


超新星残骸「カシオペヤ座A」(Credit: NASA/CXC/SAO)


2つ目は超新星残骸「カシオペヤ座A(Cassiopeia A)」の画像から変換されたメロディーです。カシオペヤ座Aの場合は広がる衝撃波を追いかけるように中央から上下左右へと外側へ向かって音が再生されています。音の高さはケイ素、硫黄、カルシウム、鉄といった元素の分布や衝撃波に対応していて、チャンドラの観測データをもとに作成されています。


「わし星雲(M16)」の南側にある「創造の柱」(Credit: X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/STScI)


3つ目は「わし星雲(M16)」の南側に位置する暗黒星雲、通称「創造の柱(Pillars of Creation)」をメロディー化したもので、天の川銀河の中心方向と同じように左から右へと再生されていきます。メロディーはチャンドラとハッブルの観測データをもとに作成されています。


 


Image Credit: NASA/CXC/SAO/K.Arcand, M.Russo & A.Santaguida
Source: chandra.harvard.edu
文/松村武宏