さまざまな布地で空気中をただよう粒子をろ過する実験結果から、「一般に流通している素材で高性能な布マスクを作る方法」が判明しました。

Aerosol Filtration Efficiency of Common Fabrics Used in Respiratory Cloth Masks | ACS Nano

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acsnano.0c03252

Scientists Have Figured Out The Best Materials to Use if You're Making a Mask at Home

https://www.sciencealert.com/if-you-re-making-your-own-mask-at-home-researchers-show-the-best-materials-to-use

Scientists Have Figured Out The Best Materials to Use if You're Making a Mask at Home

https://www.sciencealert.com/if-you-re-making-your-own-mask-at-home-researchers-show-the-best-materials-to-use

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「医療マスクやN95マスクは医療機関向けに優先的に確保されるべき」との考えから、一般の人々に対してTシャツやバンダナ、コーヒーフィルターなどを使用した自作マスクの作成と着用を推奨しています。

マスクの着用方法とバリエーション豊富な作り方をアメリカ疾病予防管理センターが公開 - GIGAZINE



そこで、アルゴンヌ国立研究所とシカゴ大学の研究チームは、一般的に流通している普通の材料を使用して、マスクとしての性能を検証する実験を行いました。

今回使用された材料は、「綿90%の生地」「綿100%の生地」「綿65%、ポリエステル35%のフランネル」「ポリエステル90%、スパンデックス10%のシフォン」「天然シルク」「合成シルク(ポリエステル)」「ポリエステル97%、スパンデックス3%のサテン」「ナイロン52%、ポリエステル39%、スパンデックス9%の生地」「ポリエステル100%の生地」です。



そして、実験に使用された装置の概略図が以下です。まず、右下のエアロゾル発生装置から塩化ナトリウム(食塩)の溶液で作られた大小さまざまなサイズの液滴が発生します。エアロゾルは、人間の安静時の呼吸と同じ流量の空気が流れる円筒形のチューブに固定された生地に吹き付けられます。そして、吹き付けられる前と後のエアロゾルの濃度を測定することで、生地のマスクとしての性能が評価される仕組みです。



この実験の結果、「綿」「天然シルク」「シフォン」は、しっかりと織られたものであればエアロゾルの50%を除去できることが分かりました。また、布1枚だけでなく、「綿2枚」「綿とシルク」「綿とシフォン」「綿とフランネル」など、綿を中心に複数の素材を組み合わせた「ハイブリッド生地」は、粒子の大きさが300ナノメートル未満の場合は80%、300ナノメートル以上の場合は90%以上の割合でエアロゾルを除去することができました。



さらに、研究チームが「2枚のシフォンで綿を挟んだ3層構造」でテストしたところ、エアロゾル粒子が最大で99%除去され、N95マスクに匹敵する性能を発揮したとのことです。この結果について研究チームは、「布を組み合わせることで、物理的なろ過作用と静電気との複合効果が発生し、マスクの性能が飛躍的に向上すると思われます」と推測しています。

こうした結果から、研究チームは論文の中で「全体として、一般的な布マスクに使われるような、入手が容易な繊維を組み合わせることで、エアロゾル粒子に対して有効な保護効果を実現できる可能性があると判明しました」と記しました。

一方で、マスクに少しでも隙間があると、せっかくの効果が半減してしまうことも分かっています。研究チームが、マスクと顔の間の隙間を再現するため、実験に使用する生地に全体の面積の1%に相当する小さな穴を開けたところ、粒子を捕捉する性能が60%以上も低下してしまったとのこと。

このため、研究チームは「今後布マスクを製造するにあたっては、吐いた空気が効率的に排出されるように注意しつつ、『フィット感』も重視して隙間の問題を考慮する必要があります」と記して、隙間がないようにマスクを作ることが重要だと指摘しました。