最近は本命一本に絞って商品知識を研究している人が目立つ

 歴史上もっとも新車が売れたとされる、バブル経済と呼ばれていた時代には新車購入の際、より多くのライバル車と比較検討して購入するのが当たり前であった。新車購入現場などでは、ライバル車同士を競い合わせて値引き条件のアップを引き出すことを「競合(きょうごう)」と呼ぶのだが、最近はこの競合がほとんど行われないとのことなのである。

 ある新車販売セールスマンによると、「最近の傾向としては本命一本、つまり他車と比較検討などせずに商談を進めるお客様が目立ちます。その代わり、商品知識をメインに商談前によく研究されています」とのことであった。

 競合が減ってきた背景には、インターネット社会の浸透が多く影響している。各メーカーのウエブサイトには、各モデルを紹介するページが充実しており、ここで商品知識を得ることができるので、自宅でまず購入希望車をピックアップし、装備内容などを比較検討して本命モデルの絞り込みが可能となっている。

 さらに各モデルのページには「見積りシミュレーション」のようなコーナーがあり、値引き額は反映できないものの、販売諸費用や諸税をも反映されたリアリティのあるシミュレーションができるので、おおまかながら購入予算の絞り込みも自宅でできてしまうのである。

ライバル車を競合させて比較交渉するのは値引きに逆効果

 これがインターネットのないころには、まず購入希望車を扱う各ディーラーの店頭を訪れ、カタログや価格表集めからはじめなければならなかった。たいていはカタログをもらうだけでは済まず、その場で見積り作成など商談が五月雨で始まってしまい、結果的にライバル車を横並びにした商談というパターンに陥ってしまっていた。

 それがいまは、ネット社会の普及により、本命車の本命グレードで希望オプションを確定し、購入予算まで絞り込んで商談に臨んでくるお客も珍しくないとのこと。

 ただ一方では「乗っているクルマがかなり古くなったからなど、事前の情報収集なしのなりゆきで店頭にいらっしゃるお客様も目立ちます。本命で絞り込んでくるお客様と両極になっていますね」(前出セールスマン)。

 新車販売セールスマンの世界も人手不足は深刻となり、効率的な販売活動が求められているなか、昔気質のライバル車を多数並べて比較交渉してくる商談方法は、購入意思が固まっていないと判断され、いまは値引きアップには逆効果だと前出セールスマンは語ってくれた。

 カローラとサニーというような、宿命的なライバル車がなかなか存在しないことも、いまは競合がなかなか成立しないともいわれている。とにかく、いまどきの新車購入は事前の情報収集を充実させた、効率的な商談を進めることが値引きアップには大切となってくるようだ。