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新型コロナウイルスによる新型肺炎のニュースが国内外で連日報道される中、これをネタにドッキリを仕掛ける動画が量産されています。「コロナウイルスごっこ」とも呼ばれる悪質なドッキリを日本で軽率に行なうと、厳しく罰せられる可能性があると弁護士は指摘します。

●全身防護服の男性が「コロナウイルス」の液体を電車にばらまく

アメリカのニューヨークでは、全身を防護服に包んだ2人の男性が「コロナウイルス」と書かれた容器に入った液体を電車内にこぼすというドッキリを実行し、その様子をインスタグラムに投稿しました。

他の乗客たちは鼻をつまんで息を止めるジェスチャーをしたり、こぼれた液体から走って逃げ出したり、一定の嫌悪感を示していました

また、ロシアではもっとひどいドッキリが行われました。マスクをした男性が地下鉄内で咳き込みながら突如倒れこみ、激しい発作を起こす。そんな動画がアップされています。

男性の仲間と思われる何者かが「コロナウイルスだ!」と叫ぶと、多くの乗客が一目散に電車から逃げ出していきました。現地メディアの報道によると、これを実行したブロガーは警察に逮捕されたそうです。

ジョークだとしても全く笑えない新型コロナウイルスをネタにしたドッキリは今のところ海外で目立っていますが、日本で同じようなことをした場合、罪に問われることもあるのでしょうか。甲本晃啓弁護士に聞きました。

●威力業務妨害罪の成立、傷害罪・傷害致死罪の恐れも

ーー海外の動画のように、「コロナウイルス」と書かれた液体を電車内に持ち込んでばらまいたり、新型肺炎にり患していると装って公共の場で騒ぎを起こしたりする行為は法的にどのような問題があるでしょうか。

日本の車内で動画のような行為をすれば、乗客にパニックが発生することは想像に難くありません。パニックになると列車の運行を止めることにつながり、実際に運行が止まれば鉄道会社に対する威力業務妨害罪が成立します。

このような行為は死傷者を出すことにもつながりかねません。パニックになった乗客が我先にと車外へ避難しようとして将棋倒しになったり、線路に降りた乗客らが他の列車と接触したり、転倒したり、線路外へ転落したりするなどして、死傷者が出れば傷害罪・傷害致死罪に問われます。

また、不必要に防護服を着用して町中を出歩くほか、「コロナウイルス」と書いた液体を持ち歩くだけでも、軽犯罪法に問われる可能性があります。

●日本がサリン事件を経験したという特殊事情

ーー電車内で「コロナウイルス」だといって液体をばらまく行為は、過去の地下鉄サリン事件をほうふつとさせます

海外の動画のように新型コロナウイルスをドッキリの「ネタ」として扱うことは極めて危険です。日本は過去に地下鉄サリン事件を経験しており、そのような特殊事情・背景から、海外で同じ行為をするのに比して、反社会性、反倫理性が特に強いと考えられるからです。

1995年3月に発生した地下鉄サリン事件は、鉄道の車内で致死性の化学物質サリンを含む液体がまかれた事件で、多数の犠牲者を出し、今でも後遺症に苦しんでいる人たちがいらっしゃいます。

密室となる列車内で「病原体が入っている」と言って液体をまいたり、感染者として病原体をまき散らすフリをしたりするといった行為は、遭遇した乗客にとって死を感じさせるほどの強い恐怖を与えるもので、この事件の再現にあたりかねず、悪ふざけでは済まされないことは明らかでしょう。

●「フェイク」であっても重罪になった事例

ーー「コロナウイルス」を騙って不安をあおることが問題の本質

地下鉄サリン事件のわずか3カ月後に起きた全日空857便ハイジャック事件は、犯人が液体入りのビニール袋を用意し、サリンを持っていると客室乗務員を脅したというものです。この液体は実際には無害の水だったのですが、刑事では懲役10年の実刑判決、民事では5000万円を超える賠償命令が出されています。

ーー「コロナウイルス」のドッキリは絶対にやめるべきですね

以上のように、実際にサリンをまき、死者を含む多くの犠牲者を出した地下鉄サリン事件で は、犯人が厳罰に処されたことは言うまでもありませんが、死傷者を出していないハイジャ ック事件でも大変厳しく処罰をされています。

日本は今、新型コロナウイルスによる死者も出始め、誰もが感染拡大を恐れています。そんな現状で、列車内で動画のような行為におよんだ場合、威力業務妨害にあたります。混乱を巻き起こして人を死傷させるなどの事態に至れば、傷害致死罪の場合には最高で無期懲役となる重罪として処罰され、民事でも億単位の賠償責任を負うことが想定されます。このような行為は絶対にやめるべきです。

【取材協力弁護士】
甲本 晃啓(こうもと・あきひろ)弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える弁護士・弁理士。東京大学大学院出身で、専門は分子生物学、元ウイルス学の研究者でPCR分析にも明るい。鉄道・航空の安全に関する造詣が深く、多くの企業法律顧問を務める。弁護士の専門分野はIT、著作権・商標権。
事務所名:弁護士法人甲本総合法律事務所
事務所URL:http://komoto.jp