■AI時代にこそ、反省日記のススメ

学歴と収入には相関関係がある。学歴が高いほど年収は多くなる傾向がある(図)。

とはいえ、例えば東大卒の中にも個人差があり、残念ながら平均年収を下回る人もいる。高学歴で成果を出す人、高学歴なのに活躍できない人の差はどこから生まれるのか。

「残念ながら一流大学卒の肩書は出世も高年収も約束していません。たしかに高学歴の人材は知識の修得力や論理的思考力は優れているので部下としては重宝されますが、部下をまとめるマネジャーやリーダーとしての能力は必ずしも高くないため出世できないのです。私の高校の同期も3人に1人が東大に入りましたが、上場企業の社長や役員になったのは、実は一握りです」

こう語るのは多摩大学大学院名誉教授の田坂広志さんだ。東京教育大学付属高校(現筑波大学付属高校)から東大に入学、同大学院で博士号を取得後、民間企業で長くビジネスの現場を見てきた実感だという。ではマネジャーやリーダーに必要な能力とは何か。

「何より大切なのは、相手に対する細やかな配慮や相手の気持ちを感じ取る『人間関係力』です。それがなければ、営業では顧客の心を掴めず、社内では部下を励まし、育てることができません。さらには、多くの部下が『あの人と一緒に働きたい』と思ってくれるような人生観や生き様、志や使命感といった『人間力』が問われます」

■表情やしぐさから無言のメッセージを推察

しかも、これからのAI(人工知能)時代には、.リエイティビティ、▲曠好團織螢謄、マネジメントという能力のいずれかがない人材は淘汰されていくという。

「3つに共通するのは、コミュニケーションの8割を占めるとされるノンバーバル(非言語)コミュニケーションの力です。相手の眼差しや表情、声の余韻やしぐさなどから、無言のメッセージを感じ取る力は、AIでは真似できないからです。そのうえで、,魯繊璽爐鯀箸鵑妊瓮鵐弌爾涼匏辰鮟犬瓠⊃靴燭淵▲ぅ妊△鯀禄个垢詢呂里海箸任后△賄然、ノンバーバルコミュニケーションの力が不可欠になります。そしては『心のマネジメント』のことです。部下の悩みを聞き、励まし、仕事に働き甲斐を感じられるようにする力。また、互いに協調、協力し合って成果を上げられるようにする力です」

しかし、この人間関係力や人間力は一朝一夕には身につかない。そこで、田坂さんは「反省日記」を勧める。

「毎晩10分程度、その日の商談や会合を振り返り、相手の発した言葉だけでなく、その表情やしぐさから無言のメッセージを推察する。自分の発言に対する相手の反応を思い出し、心の内を想像する。その習慣が人間関係力を大きく高めてくれます。人生100年時代のいま、定年後の再就職やNPO活動などにも生きてきます」

資料注:2018年3月〜2019年7月にOpenWorkへ登録のあった年収および出身大学データのうち、50件以上データのあった大学100校、1万8651人が対象。大学院は除外し、各大学の年収と年齢の分布から30歳時想定年収を算出

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田坂広志
多摩大学大学院名誉教授
田坂塾塾長。1951年生まれ。74年東京大学卒業。81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。90年日本総合研究所の設立に参画。2000年多摩大学大学院教授に就任。08年ダボス会議のGACメンバーに就任。13年全国5400名を超える経営者やリーダーが集う田坂塾を開塾。著書は90冊余。

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(ジャーナリスト 田之上 信)