筆者が「株価は一段と上昇する」と読む根拠は何だろうか(写真:AP/アフロ)

NYダウが新年初取引日(2日)に330ドル高の2万8868ドルとなり、ナスダックやS&P500と3指数揃って終値での史上最高値を更新した時には、筆者の前々からの予想である「大発会(6日)の日経平均2万4000円は当たったも同然」と思っていた。

「乱高下の後」の相場は上がることが多い

だがその直後に米国防総省がドナルド・トランプ大統領の指示でイラン革命防衛隊の精鋭組織コッズ部隊のガーセム・ソレイマニ司令官を殺害したと発表。大発会の日経平均株価はあいにくの451円安。その後も、7日370円高、8日370円安、9日535円高と日本の令和2年は波乱で始まることになった。

「4日連続での日経平均300円以上の乱高下」は滅多にないことだが、過去の例では意外なことに、その後市場は安定して上がっている。今回も、一時は25日移動平均線を割れたが、次の75日移動平均線にサポートされる形で、すぐに25日移動平均線の水準も回復し、チャートの形は悪くない。先週末の10日の日経平均は110円高と3ケタ高を何とか達成した。

ただ、この日はSQ(特別清算指数)算出日で、その1月SQ値は2万3857円と、この日高値が2万3900円台だったのでいわゆる弱気シグナルとされる「幻のSQ」にはならなかったが、昨年12月のSQ値2万3895円には僅か届かず、このゾーン(2万4000円)に壁を作ってしまったことは事実だ。それでも今回のコラムでは「その壁はいずれ越えていく」という理由を語って見たい(もちろん前回の「2020年に『日本株ブーム』が来ると予想する理由」でも十分なのだが)。

FRB(米連邦準備制度理事会)が公表した昨年12月10−11日開催分のFOMC(米公開市場委員会)議事録では、多くのメンバーが引き続き「リスクの存在」を確認し、利上げよりも利下げの可能性が大きいと見ていた。

ドットチャート(FOMCのメンバーによる政策金利の予想分布)では、2020年1年間「利上げも利下げもない」ということになっているが、景気不安や世界の多くの不透明事例は払しょくされておらず、引き続き金融は緩和状態を持続せざるをえないだろう。筆者の読みでは、その裏でアメリカでも「MMT化」が静かに浸透して行くというのが、筆者の強気の基本にある。

MMTとはご存知の通り、Modern Monetary Theoryの略称。直訳すれば「現代貨幣理論」であり、「新表券主義」などとも呼ばれている。要は「独自の通貨を持つ国は、自国通貨を限度なく発行することが出来るので、デフォルト(債務不履行)に陥ることはない。従って、政府債務残高がいくら増加しても問題はない」という考えだ。

さらに言えば、「政府は貨幣を創造できるのだから、そもそも借入などする必要がない。従って、国債発行は借入とはみなさない」などという議論も出てくる。本当にそうなら、2019年度末で897兆円となる見通しの日本国債発行残高も「何の問題もない」ということになる。しかし、昨年シカゴ大学が40人の経済学者にアンケートを取ったところ、賛同者はゼロだったことでもわかるように、エコノミストにとっては極めて「危険な理論」でもある。

日本を「手本」に、世界でも「MMT化」が進む?

ただし、以下の話はどうだろうか。もちろんいろいろな見方はあるが、先進国では債務残高がGDP比で突出しているのにもかかわらず、安定している世界唯一の国が日本である。一方で、債務比率で言えば、日本よりも健全なギリシャやイタリアなどがデフォルトリスクを問われるのは、両国はユーロを勝手に発行できないからに過ぎないとも言えるだろう。

今や、ネガティブな表現で「日本化」が世界に浸透しているとも言われている。「低インフレ」「低金利」「低成長」のことだが、まさに日本が対GDP比で高い債務残高であっても安定しているのはこのMMTが陰で支えているからではないか。結局、世界のエコノミストも、否定しながらも自国のMMT化に対して強く反対できないのは日本の存在があるからだと思う。

もちろん、政府債務の過剰な増加は、どこかの時点でインフレをひき起こす可能性があり、MMTは危険な理論かもしれない。

だが、ここで重要なのは、投資家はそれが良いか悪いかはともかく、今静かに進んでいる「世界のMMT化」によって、株式市場がどちらに動くかを考えれば良いだけだ。

株の量よりもカネの量が多ければ当然株は上がる!このMMT理論が、デフレに近い状態に陥ってしまった世界を救うかもしれない。

実際、アメリカの対GDP比債務残高も今や108%であり、日本の半分にもならないとはいうものの、じりじりと日本化が進んでいる。その意味で、2020年は、FRBとMMT賛同者らしいトランプ大統領との攻防戦に注目したい。ちなみに安倍晋三首相・黒田東彦日銀総裁緒の「アベ・クロ政策」は赤字国債発行も復活させる計画であり、さらなるMMT化の準備は整っているといえよう。

次の「相場の上昇エンジン」は何か?

さて、つぎにこの相場の「上昇エンジン」になるテーマは何だろうか。筆者に言わせればそれはEUVということになる。

EUV(Extreme Ultravioletの略)とは、極端紫外線と呼ばれる非常に短い波長(13.5ナノメートル)の光を用いるリソグラフィ技術(半導体を製造する際、基盤に電子ビームなどで回路パターンを転写する技術)であり、次世代通信規格の5Gを根本で支える微細半導体の製造に欠かせない技術だ。

2020年はいよいよ5Gの時代が本格的に到来するわけだが、この微細半導体なくして実現は出来ないといっても過言ではない。

すでにアベノミクス相場は動き出しているが、この関連銘柄の評価が、2020年日経平均の水準を決める大きな要素の1つになるのではないか。特に昨年の後半は、このEUV技術関連で、東京エレクトロン、アドバンテストなど多くの銘柄が人気化し、昨年は「EUV元年」(ウシオ電機の牛尾治朗会長)とも言われた。だが、まだ日本企業で大きな売り上げが立っているところはない。

すでに海外のメーカーでは一部出荷しているところもあり、これからの日本企業の巻き返しが期待される。とにかく出荷が開始される少なくとも数か月先で、5G関連人気はこれからまだまだ続き、日経平均の高値へのエンジンになって行くと思っている。

なお、その人気持続のバロメーターとして、筆者は新光電工(6967)を観察している。PER(株価収益率)などの株価指標から見れば常識では買えない水準だが、この異常さこそがEUV関連の期待の大きさを示すと思う。まずは全体相場である日経平均が2万4000円を抜けるのを、ゆっくり見守りたい。