エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

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米野球殿堂博物館のミード館長にインタビュー「来季はフル稼働、1年目以上の活躍を求めないわけにいかない」

 米国野球殿堂博物館の新館長に就任したティム・ミード氏がFull-Count編集部のインタビューに応じ、大谷翔平投手への高い期待を口にした。今年7月までエンゼルス副社長を務めていた同氏は打者一本で臨んだ今季の活躍や、グラウンド外での素顔を打ち明けるなど語り尽くした。

 打者専念となったメジャー2年目は打率.286、18本塁打、62打点。9月13日に左膝を手術し、今季を終えた。大谷は「悔しいなという一言かなと。成績もそうですし、プレーしている感覚だったりとか、あんまり調子が上がらない期間が長かった。そこが一番もどかしかったなと思います」と振り返るシーズンだった。

 6月中旬まで職場としたカリフォルニア州アナハイムから、時差3時間のニューヨーク州クーパーズタウンに移り住んだミード館長。「エンゼルスの試合を見ていて、睡眠時間を十分確保できなかった」とシーズン中は“激務”だったが、大谷へ寄せる言葉の端々にはリスペクトの思いが詰まっていた。

「ショウヘイは毎日試合に出場することで、彼の中で(試合に臨む)リズムを更に強化することができたと思います。ショウヘイの素晴らしさ。それは打球の速さであり、ボールを強打できることです。右に左に、彼はとてつもないパワーで打つことができます。(悔しいと言ったのは)現在の球界で誰よりも高い水準を自身に対して設けているのだと思います。彼はそういった水準を満たし続けていくことを目指すことでしょう」

「日本での経験があるとはいえ、まだMLBでは2年目の選手だということを忘れてはいけません。彼は尊敬され、(相手チームから)恐れられています。そのような評判をこの2年間で得ることができるのは、非常に良いことだと思います」

米野球殿堂博物館の“初仕事”が大谷サイクル安打記念球「ショウヘイはサイクル安打を『責任』と捉えている」

 新たに館長に就任したミード氏にも嬉しい出来事があった。6月13日。大谷は敵地レイズ戦で日本人初のサイクル安打を達成。ミード館長は球団へ記念グッズ贈呈を要請し、サイクル安打の達成記念ボールが送られてきた。これが“初仕事”だった。

「驚異的なことですね。私も(映像を)見ていました。皆が興奮していました。ショウヘイも喜んでいたのは私たちにも十分伝わってきました。しかし、彼は非常に謙虚な人間です。彼にとって重要なことであり、間違いなくハイライトとなることですが、最高レベルの活躍をするという意味で、彼はその偉業を『責任』だと捉えていることでしょう」

 昨年10月に右肘のトミー・ジョン手術を受け、今年9月にはシーズンから痛みを抱えていた左膝の分裂膝蓋骨の手術を受けた。来季は厳格な球数制限されることが予想されるが、コンディションは万全。二刀流復活の期待がかかる。ミード館長は高い期待を込めた。

「来季はフル稼働できることになるでしょう。腕は回復し、投球に関しても十分に前進しています。膝の痛みは確かに少し悩ませていました。ショウヘイは(9月15日に右足神経腫の除去手術を受けた)マイク・トラウト同様、これ以上怪我を悪化させてまでプレーすることに意味は無いという段階まで、痛みを抱えながらもプレーしていました。なので、ショウヘイにとっては理にかなったことであり、彼の復帰のタイミングも整うことでしょう。球団内は何の不安もないと思います」

「2018年に彼が披露したこと以上の活躍を求めないわけにはいかないでしょう。彼は支配的な投手になる可能性があります。復帰に向けて、オフのコンディショニングプログラムやスプリングトレーニングをどう進めていくかなど、ショウヘイとエンゼルスには間違いなくプランがあることでしょう。エンゼルス、そしてMLB球界全てのファンにとって、2018年と同じような活躍を期待するのは公平なことです」

エンゼルス副社長時代には一緒に卓球も… 大谷の人間性は「ジェントルマン、とても礼儀正しい男です」

 6月中旬まではエンゼルスの副社長として二刀流と接してきた。チームメートにとっても良い仲間だったようだ。ミード館長はロッカールーム内での大谷の“日常生活”を打ち明けた。

「非常に素早く(クラブハウスでの)文化に順応しました。ショウヘイは球場に遅れて現れることもなければ、(早々と)最初に球場を後にすることもありません。一番最後に球場を後にする選手の一人です。そして、彼は極上の笑顔を見せてくれます。誰かがホームランを打つと、真っ先にベンチから飛び出します。通路ですれ違う時も笑顔を見せています。(ロッカールーム内にある卓球も)試合後にしていました。打撃練習後にもダイニングルームで時々やっていました。最初にイッペイと私で始めていたのですが、ショウヘイもトライしてみたかったようです。彼は上手でしたよ」

 大谷の人間性にも惚れ込んでいる。メジャーの試合中のベンチ内は飲み終わった紙コップやヒマワリの種などで荒れに荒れるが、大谷は使い終わった紙コップはゴミ箱へ。ヒマワリの種は地面ではなく、紙コップに吐いて捨てる。そんな礼儀正しさが米メディアでも話題になっていた。

「ジェントルマン。とても礼儀正しい男です。間違いなく、正しく育てられました。おそらく日本の文化が重要な役割を果たしているのでしょう。(長谷川)シゲトシも似たような感じです。(松井)ヒデキもそうでした。ショウヘイは、自分の中で大事だと思っていることを続けていくことでしょう。MLBに居心地の良さを早い時期に感じていたと思います。ダグアウト内が汚れている一方で、ヒマワリの種をコップにいれることは彼にとって大事なことだと私は思っています」

 本拠地アナハイムから遠く離れたクーパーズタウンから、今も熱い視線が注がれている。(小谷真弥 / Masaya Kotani)