ジタハラ(時短ハラスメント)が新たな問題として起きています。写真はイメージ(写真:keroking/PIXTA)

今年4月から順次施行されている働き方改革関連法。長時間労働に対し、世間の目が厳しくなりました。しかし、そのような中、新たな問題として出てきたのが、「時短ハラスメント」。

そこで、自身の体験から過労自殺について取材した書籍『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』の著者であるイラストレーターの汐街コナさんにこの問題について聞きました。

よく考えると「時短ハラスメント」ではない


この1〜2年ほどで、「働き方改革」の文字をよく新聞等で見るようになり、数年前まではまだ当たり前だった「残業は多いほうがよい」という価値観も、少なくとも表向きでは見ることが少なくなりました。

実態はまだまだ変化の途中とは思いますが、それでも「変わらなければならない」という意識が浸透してきただけでも、ずいぶん進歩があったように思います。

一方、意識が変わってきた中で、「どうして、そっちに行っちゃうの?」と思った言葉が、「時短ハラスメント」です。

マンガの中に描いたとおり、「時短」自体はハラスメントではありません。

この場合の時短とは、「定時より早く帰る」タイプのものではなく、単に「残業せず定時で帰ること」を指すようですので、なおさらです。

本来、「定時で帰る」のは「当たり前のこと」なのです。

それを「ハラスメント」と表現すること自体、大きく感覚が歪んでいると感じました。

残業しないのは当たり前


もちろん、定時内には到底終わらない業務を命じられ、残業もできず、やむなくこっそり家に仕事を持ち帰り、結果として「表に出ない残業」が増えてしまった……というような事例もあると思います。

しかし、それは「残業できない」のが悪いのではありません。「定時内に終わらない業務量を命じる」のが悪いのです。

ハラスメントなのは「時短」ではなく「業務量」です。

業務の効率化や業務量の見直しをすることなく、ただ残業を禁止したところで、まじめな気質の人は、仕事を途中で放置して帰宅するということもできず、苦しむことになります。

それは当然、「業務の効率化や業務量の見直しをしない」ことに問題があるのです。

時短ハラスメントではなく「超過業務ハラスメント」

時短ハラスメント」という言葉は、本当のハラスメントの原因をミスリードしてしまうので、私はなるべく使用してほしくないなと思います。

言葉としては「超過業務ハラスメント」か、それに似た意味を持つ言葉を使ってほしいと思います。



権利を主張すると「迷惑をかけるな」と説教する人々

これも、社会に出ると、よくあることだと思います。

残業代未払いが許されないのは当然として、経営者や管理職の立場になれば、突然人が辞める・休むのに対応することは非常に大変だと思います。人手不足が取りざたされる昨今では、なおさらでしょう。

しかし、「大変だから」といって、責任の所在を間違えてはいけないのです。


本来ないはずの義務を背負ってしまわないために

従業員がきちんと憲法、法律、あるいは就業規則に定められた権利を主張しているなら、それを否定はできません。それによって起きる不都合なことを処理するのは、経営者や管理職の仕事であり、従業員に転嫁していいことではないのです。


同時に、従業員側も、まじめで謙虚な人ほど、「おまえのせいで周囲が迷惑をこうむっている」という論調でこられると、「自分の責任だ」と考えてしまうかもしれませんが、それははっきり言って誤りです。

自分に何の権利があり、何の責任があるのか把握していないと、言われるがままに、本来ないはずの義務まで背負ってしまうことになりかねませんので、少しでも「そういうものなのだろうか」という疑問が心をよぎったら、調べる癖をつけるといいでしょう。

なお、就業規則や契約書に記載があることでも、法律に反していたりすると、無効になることもありますので、そこまで含めて調べることも必要です。