車内の除湿を行いたいのならエアコンONは必須

 寒い季節、クルマに乗っているときぐらいは、温かく快適に過ごしたいもの。車内を温かくするには暖房をつければいい。だが暖房の場合、エアコンのコンプレッサーを回さずに温風だけを出すこともできる。

 オートエアコンのクルマでも、そうでないクルマでも「A/C」と書いてあるボタンを押せば、コンプレッサーのON/OFFが切り替えられる。このコンプレッサーが回ると何が起きるかというと、冷媒ガス(フロン)が循環し、熱交換器(エバポレータ)のなかで、冷媒が気化蒸発することでまわりの熱を奪って、室内気が冷やされる。同時に冷やすことで空気中の水分を結露させ、除湿する仕事もしてくれる。これがエアコンの仕組み。

「A/C」のスイッチをオンにしておくと、夏でも冬でもコンプレッサーが回り、冷媒が循環してエバポレータの出口は3〜4度まで冷やされる。その冷たい乾いた空気をエンジンの冷却水の熱で温めて、設定温度になるよう調整して風を出すのがエアコンの仕事。

 一方、「A/C」をオフにして温風だけを出す場合、外気(外気導入)もしくは室内気(内気循環)を、エンジンの冷却水の熱で温めて温風を出すだけ。コンプレッサーを回さない分だけエンジンのパワーロスが減り、燃費に悪影響を与えず室内を暖めることができる。

 ただし、エアコンの除湿機能は働かないので、外気と車内の気温差が大きいときは、すぐに窓が曇ってしまう。とくに、人が大勢乗っているときや、雪や雨で濡れた服、傘などを車内に持ち込んだときは曇りやすい。そうしたときは、「A/C」をオンにして、除湿するのが一番効果的だ。

現代のエアコンはロスを極力減らすよう制御している

 だったら、最初から「A/C」オンでいいのでは? そう、じつはそれが正解。今のクルマはオートエアコンが当たり前。オートエアコンというのは、設定温度を保つように、送風の温度、風量、吹出し口の切り替え、そしてコンプレッサーのオン・オフを自動制御してくれるようになっている。

 つまり、無駄にコンプレッサーを回し続けることはないので、燃費のために曇ったら「A/C」オン、曇りが取れたら「A/C」オフなんてことを手動でやるぐらいなら、オートエアコンにお任せしてしまった方がよっぽどいい。

 しかも、コンプレッサーの仕事は気化した冷媒を圧縮し、高圧高温にすることで外気との温度差で効率よく液体に戻して再循環させること。夏と違い、外気が冷たい冬の場合はコンプレッサーに活躍してもらわなくても、冷媒がよく冷えるのでコンプレッサーの出番は夏の何分の一と格段に少ない。

 つまり、エアコンの燃費に与える影響も最少で、冬場のエアコン利用による燃費への影響はほとんど考えなくてもいいレベル。またエアコンの冷媒には潤滑用のオイルも入っているので、これを季節に関係なくときどき循環させたほうが、エアコンの劣化やトラブルを防げるというメリットもある。カーエアコン最大手のデンソーも、「夏でも冬でも、空調は『A/C』オンのオートエアコンが基本」といっているぐらいなので、暖房もオートエアコンにお任せしよう。

 なお、除湿防止のためにもエアコンは「外気導入」で使うといい。また、エアコンのフィルターもエアコンの効率に影響するので、1年もしくは1万kmごとの交換がおすすめ。小まめな交換で、カビや雑菌の繁殖も防げる。またシートヒーターやステアリングヒーターがついているクルマはそれらと併用して、エアコンの温度が高くならないように調整し、より快適な環境でドライブできるようにしてみよう。

 頭寒足熱という言葉があるとおり、頭部まで温かくなるような室温にすると、頭がボーっとしてきたり、眠くなったりするので気をつけて……。