「酔ってる自分が“素”なわけがない」チャラ芸人・EXIT兼近の“酒を飲まない哲学”
時代の変化とともに、その印象や存在感が変わりつつある「お酒」。クラフトビールやクラフトジンなど多様な種類のお酒が流行する一方で、「飲み会が嫌い」という人もよく目にするようになりました。
R25世代にとって、いまベストな「お酒との付き合い方」はどんなものなんだろう…。
特集「新・飲酒論」では、いまの時代をとらえた「お酒」の話を深堀りしていこうと思います。

テレビで活躍する人気の芸人さんのなかにも、そんなテーマでお話をきくのにピッタリな人がいました。

【兼近大樹(かねちか・だいき)】1991年生まれ。2017年にりんたろー。と「EXIT」を結成。チャラ男キャラでネタを行う「ネオ渋谷系漫才」で人気。愛称はかねちー
「パリピぶってるけどベビーシッターのバイトをしててめっちゃいいヤツ」でおなじみ、EXITの兼近さん(かねちー)です。
チャラ男キャラでブレイク中ながら、兼近さん、飲み会でもほとんどお酒を飲まないんだとか。
豪快に遊ぶことがよしとされる芸人の世界で、いったいどんな価値観を持っているのか…? 「飲まない哲学」について聞いてきました。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
芸人になったばかりのころは「週5で飲み会」だったが…
天野:
兼近さんは、お酒自体は飲めるのに、飲まないようにしてるんですよね…?
兼近さん:
そうっすね!
たぶん体質的には飲めるんですけど、味がうまいと思ったことがなくて。
いまではほとんど飲まないですね。

兼近さん:
チャラいキャラなのにお酒が好きじゃないっていうのはさめるよなあと思ってて隠すつもりでいたんですけど、かなり早い段階で世間に広まっちゃいましたね〜。
天野:
以前は飲みに行ったりしてたんですか?
兼近さん:
芸人になって1年目はめちゃめちゃ行ってました! 先輩についていって、週5ぐらいで。オールしたり、テキーラ瓶ごといったりしてましたね。
天野:
そうなんですね! どんな芸人さんと飲みに行ってたんですか?
兼近さん:
……。

ん?
兼近さん:
そのとき行ってた人は、もうほぼいないです…
みんな芸人辞めちゃってますね。
天野:
えっ、なぜですか?
兼近さん:
そんなに毎日遊んでて、面白くなれないんですよね。
芸人とはいえ、マジメなほうが評価されるに決まってるじゃないですか。
天野:
全員いなくなっちゃったんですね…
兼近さん:
あ、1人いまもやってる人いるかな…
天野:
お、どなたですか?
兼近さん:
バビロン・千葉…
天野:
…?

兼近さん:
…知らないですよね! オッケーです!!!
まあそういう感じなんですよ…

「バビロン」は吉本興業所属の3人組。ツッコミの千葉恵さんはTシャツを破られるのが持ちネタとのこと
兼近さん:
結局、飲みに行く目的がちがってたんですよ。当時の先輩たちは、「女子をお持ち帰りしたい」から飲んでた。僕は面白いエピソードトークを持ち帰りたかったんで、お持ち帰りしたいものがちがってたと。
飲み会でも、自分が楽しいっていうよりはまわりを楽しませてる感覚でした。
いろんな人間模様が見られる場所ではあったし、コミュニケーション力は培われたと思いますけどね。
「飲んでない自分が“素”の自分に決まってる」
天野:
ふつうに飲めるのにお酒を口にしないようになった理由を、もう少し教えてほしいんですが…
兼近さん:
ジュース飲んでたほうが「自分が変わらなくて済むな」って気付いたんですよ。
僕は、「お酒飲んでるときの自分はウソの自分」だと思ってるんで。

天野:
ウソの自分…
兼近さん:
「酒飲んだら本音で話せる」ってよく言いますけど、飲んでない状態がその人の“素”に決まってると思いません? その状態でいるほうが長いんで。
なんで「酔うと腹を割れる」っていう意味わかんない通説ができてんのか、不思議でしょうがないですね。

兼近さん:
飲んで普段と違うキャラになっても、そのキャラでいる時間って短いじゃないですか。それこそが偽物だと思いますね。
「酒飲んでさらけだしちゃってる自分」を演じてるというか。
だって、すごい大事な話するときってお酒飲まないですよね?
天野:
そうか…
でも、「仕事のときはマジメにしてなきゃいけないけど、酒を飲んだら人間的な部分も見せられる」ってこともないですか?
兼近さん:
もしお酒を飲んだときだけが“本音”なら、普段はめちゃめちゃ嘘ついてるってことじゃないですか?
それがもうツライですよね…

取材中はコールドプレスジュースを飲んでいました
飲まないで、先輩との付き合いは大丈夫なの?
天野:
芸人の世界では、破天荒に遊ぶことで「ツヤが出る」とか言いますよね。
先輩から「芸人なんだから飲めよ」みたいに言われないんですか?
兼近さん:
いまそんなこと言う先輩はほとんどいないです!
もしそんなこと言われたら僕、「古っ!!!」って言いますもん(笑)。
「あ〜あ〜、これツイッター案件だわ」って。

兼近さん:
いまの時代にそんなこと言う人、明らかにキモイじゃないっすか。
天野:
お酒好きの芸人さんとかも言わないですか?
兼近さん:
ないですね。
大悟さん(千鳥)とかすごい飲んでますけど、本人が好きで飲んでるだけで。「お前飲まんもんな」って感じですね。
むしろそうやって覚えてもらえてめっちゃラッキーっすよ!

お酒を飲まない兼近さんの「恋愛観」
天野:
なるほど…
プライベートではどうですか? たとえばお酒って恋愛にも影響しそうですけど。
兼近さん:
「女性は言い訳が必要」ってよく聞くじゃないですか。「酔ってたから口説かれちゃった」みたいな。それはその通りで、お酒飲まないと「勢いで口説く」みたいなことはできなくなりますよね。
ただ、そんなにマイナスだと思ってないっす。
天野:
なんでですか?

兼近さん:
「お酒を理由にする女性」を、僕が好きにならないんで。
「言い訳が必要」ってのはわからなくもないですけど、お酒を理由にしないとそういうステップに行けないって人、逆に危ないじゃないですか?
酒のせいでイケちゃうって、ちょっと怖いなと。
天野:
じゃあ、アルコールなしで口説くんですね。
兼近さん:
僕はお酒ゼロで行きますね。そっちのほうが強いと思いますよ。
「1ミリも飲んでないし酔ってないけど、あなたのことが好きです」って言ったほうがイケると思います。おれが女子だったらそっちのほうがうれしいですもん。

これが好感度か…
兼近さん:
実際かねちー、めちゃめちゃ無責任な人なんです。
責任を取りたくないんですよ。
天野:
無責任?
兼近さん:
酔った状態で口説いて、もし成功したら、相手の人生に多少なりとも影響を与えちゃうじゃないですか。
人生を変化させたことに対する責任はとれるのか?って思っちゃいますね。
だからこそ、お酒が入ってると嫌だなと思います。
天野:
全然無責任じゃない…!

どこまで好感度が上がってしまうんだよ…
世代は関係ない。どんな意見を持っていても「時代の主人公」
天野:
兼近さんと話してると、「いまの時代をとらえてるな」という気がします。
兼近さん:
そうすね。カッコいいこと言うと「僕が時代」なんで。
天野:
おお…20代で大ブレイク中ですし、「自分の時代が来てる」と。

兼近さん:
あ、世代は関係ないです。僕も含めて、みんなが時代の主人公だと思ってて。
たとえば60代の人も、いまの時代に60代で生きてる主人公じゃないですか。
彼らのなかでは「最近の若いヤツは酒飲めないのばっかりだなあ」「そうだよなあ」っていうのがマジョリティ。向こうからしたら、僕らのほうが変なんですよ。
天野:
お酒を飲まない価値観が正しいとは思ってないんですね。
兼近さん:
ツイッターがあるから若い世代の意見が“主人公”に見えるだけで、みんな狭いコミュニティのなかでは主役なんですよね。学校みたいな。
ネットに意見を表明しやすいから、20代のほう勢いがあるように見えるだけだと思います。

兼近さん:
だから僕は、酒を飲んだほうがいいって意見も否定しないですね。
全部合ってると思います。

天野:
自分が後輩のときは、「飲み会で説教する先輩には絶対なりたくない」って思ってても、いざ先輩になるとやっちゃってることってあるじゃないですか。
兼近さんのように、フラットな気持ちを忘れないようにするにはどうすればいいでしょうか?
兼近さん:
「他者をナメない」ってのが一番ですね。
人って、絶対他者をナメるんですよ。誰かを下に見て雑な扱いをすることって、僕でもあるんで。
そこに気を付けるだけでいいと思います。

「パリピぶってるけどいいヤツ」兼近さんの“飲まない哲学”を聞いたら、やっぱり好感度がブチアガる結果となりました。
読者の皆さんも、会社の飲み会で「飲めよ」と強制されそうになったら、この記事のURLをそっと送り付けるといいと思います。
そして、後輩にエラそうに振る舞いそうになったら、「他者をナメない」の一言を思い出してみてくださいね…!
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
EXIT、現在全国ツアー中!
EXITのおふたりは現在、全国ツアー「EXIT初来日チャラ卍バイブスぶち上げJAPANツアー光×光それ即ち音になりけり〜おそくなってんじゃん〜」を開催中!
EXIT初来日チャラ卍バイブスぶち上げJAPANツアー光×光それ即ち音になりけり 〜おそくなってんじゃん〜★控えめに言っ
https://www.yoshimoto.co.jp/lumine/liveschedule/pc/2019/09/exitjapan.php
さらに7月17日にはfeaturing企画第2弾として、山田菜々を迎え、EXIT featuring NANA名義で「ワンチャン・サマLOVE」が配信スタート!
ワンチャン・サマLOVELaugh&Peace Music(ラフ&ピース・ミュージック)
https://lpm.yoshimoto.co.jp/3923/
YouTubeチャンネル「EXIT Charannel」も更新中です!
EXIT Charannel
https://www.youtube.com/channel/UCr_Zyf2yUXCyk-hUSXFqcaQ
【3日連続公開】特集「新・飲酒論」
「お酒をあまり飲まない派」の兼近さんからとてもいいお話が聞けた第1回。
明日は、逆に「飲む派」の人に、その考えを聞きました。
登場するのは、稀代の人気編集者・箕輪厚介さん。本音でぶっちゃけていくスタイルの箕輪さんから、どんな「飲酒論」が飛び出すのか!?
…明日もお楽しみに!

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