A代表の試合でも確かな存在感を示す久保。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

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 ボールを持てば何かやってくれそう──。今季のJ1リーグ、さらにエルサルバドル代表とのキリンチャレンジカップ(親善試合)、さらにコパ・アメリカのエクアドル戦で感じたことをひと言で表現するなら、こうなる。とにかく見ていて楽しいアタッカー、それが久保建英なのだ。
 
 久保の凄さを“DF目線”で分かりやすく説明してくれたのが、現日本代表で32歳の長友佑都である。
 
「なんていうか、ドラえもんみたい。引き出しが多すぎて、何を出すか分からない。本当に読めないよね。左利きの選手(久保はレフティ)って、止めやすいんですよ、僕は。左足でのクロスやカットインとか、外から中に仕掛けてくる相手には対応しやすい。でも、(久保)建英の場合は縦にも行ける持ち方をするので、中だけを切れない。あの持ち方は本当に。凄い才能ですよ」
 
 中にも縦にも行ける、言い換えればプレーの選択肢が豊富ということになる。対峙するDFからすれば、次の一手が読みにくいわけで「めちゃくちゃ嫌なタイプ」(長友)だ。
 
「ドリブルだけならいいけど、建英はパスもある。そのパスも視野的にゴールへとつながるところに出すから怖い。(飛び込もうにも)ボールが(久保の)真下にあるからね。その状態でキュンと緩急をつけたり、ボールを動かしたりするので(DFからすれば)厄介ですよ。緩急に加え、スピードもあって、ここにきてフィジカル的な部分も伸びてきた。久しぶりに化け物が出てきたって感じです」
 
 無暗に突っ込んだら簡単にかわされる。そういうイメージがあるから、長友にとって久保は「厄介」なのだろう。事実、長友はこの18歳のアタッカーを「最悪のプレーヤー」と評す。
 
「ドリブル一辺倒の選手だったらやりやすいですよ。そういう選手なら自分の間合いで勝負できる自信があって、絶対にやられない。ただ、建英みたいな選手は……。常に味方と“つながっている”からマークするのが難しい。中にいる味方へのパスコースを切ると、それを察知して縦に仕掛けられたり、縦を切ったら、今度は違うスペースを使われる。それって、最悪でしょ。相手からすれば、(久保は)最悪のプレーヤーですよ」
 FC東京の試合ではセンターサークル付近からドリブルで仕掛ける場面が多かったが、久保は決してドリブラーではない。「ドリブルよりパスのほうが早いので」というサッカーの本質を突く本人のコメントからも分かるように、局面に応じてドリブルとパスを使い分けているのだ。
 
 エルサルバドル戦で見逃せなかったのは、73分のシーン。左サイドでふたり抜きをする前の、ドリブルでのボールの持ち方がなにより素晴らしかった。
 
 相手ふたりが寄せてきそうなタイミングで、久保は左足のアウトサイドでボールをこすりながら「パスも出せますよ」というスタンスでプレーしていた。当然ながら、パスも警戒する相手ふたりは中途半端なポジショニングとなり、結果、久保はふたりの間をドリブルで抜けて行った。
 
 この「パスも出せます」という意識を相手に刷り込ませたからこそのふたり抜きであって、そこに久保のインテリジェンスの高さが窺えた。中島翔哉との華麗なワンツーを決めたこともあり、エルサルバドル戦での活躍を「上々のA代表デビュー」と謳うメディアもあったが、その試合にCBとしてスタメン出場した昌子源の目には、久保が不完全燃焼のように映った。
 
「持っているクオリティを考えれば、おそらく満足していない。ここ1週間、あいつ(久保)のプレーや練習を見ていても(感じるが)、たぶん、もっとできたと思っているはず」
 
 いずれにしても、昌子も久保の才能は認めている。仮に久保と対峙した時、昌子はどう止めるのだろうか。そう質問したわけではないが、今回の代表活動を通して久保に以下のような印象を抱いている。