「建英がサイドにいるか、真ん中にいるかで、(対応は)まったく変わってくる。サイドにいれば、サイドバックに『抜かれてもいいから潰せ‼』と指示する。なぜなら、サイドバックが抜かれても、俺らセンターバックがいるから。でも、ずっとセンターバックのところ(真ん中)にいられて、あんな(ボールの)持ち方をされたら、俺らセンターバックは一発で行けない」

  あんな持ち方とは? 昌子は次のように説明する。
 
「抜いてシュートを打つわけではない。かわして打ってくる。自分のところに注目を集めておいて、ラストパスも出せる。ペナルティエリア内や近くにいられると、本当に困る。持ち方を含め、“なんでもできますよ”と言っているようなもんやし」
 
 「なんでもできますよ」というゾーンに入られたら、久保を封じるのは困難だろう。それを承知している長友は、仮に久保と対峙した場合、「彼の間合いで絶対に戦ってはいけない」と言った。
 
「(久保を止めるには)やっぱり、自分の間合いで戦わないとですね。(インテル時代に)セリエAでは(ファン・ギジェルモ・)クアドラードや(モハメド・)サラー、スソといったワールドクラスと1対1で対峙した時も、それを心掛けました。自分の間合いに引き込むのは得意なので、そういう展開に持ち込みたい。彼の間合いでやられて、『長友、18歳に負ける』という屈辱的な状況になることだけは絶対に避けたい。意地でも。最悪、ファウルをしてでも止めたいです」
 
 「ファウルをしてでも」というのはある意味、久保へのリスペクトだ。セリエAやトルコ・リーグで数多くの猛者とやり合ってきた長友をしてそう言わしめる久保の才能は本物だろう。事実、エルサルバドル戦をベンチから見守っていた酒井宏樹もその“才能”を評価していた。
 
「すごく上に行ける才能というか、技術レベルは高い。みんながパッと見るだけで分かるぐらいの上手さがある。サッカーの技術って、才能のひとつだと思っているので、それ以外のファクターも伸ばして(世界の)トップに行ってくれればいい」
 
 コパ・アメリカでのプレーを見ても分かるように、久保の技術は一級品だ。チリ戦の12分に左サイドでエリク・プルガルを相手に決めた股抜きも高い技術の証明で、そのテクニックは本物だということを印象づけている。
 
 ビッグクラブでも活躍できるだろうポテンシャルを秘めているからこそ、「順調に育ってほしい」と願う長友は久保にこんなアドバイスを送る。
 
「今後、海外に出たら、監督のシステムに合わなかったりとか、壁に直面する。そこで彼が1ランク、2ランク、上に行くためにはパーソナリティ、メンタルの部分がすごく大事になってくる」
 
 才能だけではトップ・オブ・トップになれないということを、長友は言いたいのだろう。「サッカーはひとりでやるものじゃない」と酒井も話すように、“人とのつながり”も大事なのだ。ここでいう“人”とは監督であり、チームメイトなのだが、そういうものを味方につけて明るい未来を拓けるか。大きな成功を祈りつつ、見守りたい。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集長)