iPhoneのハイエンド世界一が危うい? 買い控えと5G時代が勢力図を書きかえる

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日本では、スマートフォンは右も左もiPhoneだらけだ。
こんな日本の状況を日々見ていると、世界のスマホのシェアは、
1位 サムスン
2位 ファーウェイ
という現実を信じがたいだろう。

ちなみにアップルは世界シェア3位。
その後ろには、日本での躍進著しいOPPOやシャオミ、Vivoが4位グループを形成している。

もちろんiPhoneは日本やアメリカほどでないにしろ、ほかの国々でも売れているのだ。

そもそもスマートフォンは、低価格なエントリーモデルからiPhoneのように高価格なハイエンドモデルまである製品だ。国民所得が高い国では、ハイエンドモデルが売れ、所得の低い国ではローエンドモデルが売れているにすぎない。

つまり、市場ごとに売れ筋モデルが異なるわけだ。
そこで調査会社は、価格帯別のシェアも算出している。

例えばカウンターリサーチ社では、400ドル以上の高価格モデルを「プレミアムスマートフォン」と定義している。
その「プレミアムスマートフォン」の2019年第1四半期(1月〜3月)のシェアは、
1位 アップル
2位 サムスン
3位 ファーウェイ
なのだ。
しかもアップルのシェアは47%と半数近くを占めている。
サムスンはアップルの約半分25%、ファーウェイは16%だ。


プレミアムスマホのシェア。アップルの強さがわかる


やはりiPhoneは、高所得者層には圧倒的な人気を誇っているのだ。
とはいえiPhoneがこのままシェアを維持できるとは調査会社も考えていない。

その理由は、アップルのシェアが前年比で2割も低下しているからだ。
プレミアムスマホ全体も前年比8%のダウンだったが、アップルの減少はそれを大きく上回っているので、アップルの凋落が顕著と判断されている。

こうしたiPhoneのシェア低下の原因は、新型iPhoneの買い控えだと見られている。
これまでは、iPhoneの買い換えは2年程度だった。
しかし現在は、買い換え期間が3年など、買い替えなくなっているのだという。

iPhoneの特徴は、
・古いモデルもOSのアップデート対象で長く使える
・古いモデルの修理、バッテリー交換などのサポート対応もよい
こうした古いモデルが延命して使える一方で、最新モデルは、新機能にめざましい進化がなりを潜め、価格だけが上がっている。
こうなると、
「もう1年使おう」
そう考え、買い替えを控えるユーザーも増えても仕方ないのかもしれない。


では今後プレミアムスマホ市場はどのように動いていくのだろうか?

「プレミアムスマートフォン」市場で、アップルからシェアを奪ったのは、サムスンだ。
サムスンは、Galaxy S10とS10+というハイエンドモデルが世界的にヒットしており、順調に販売台数を増やしているという。

また3位のファーウェイも年々「プレミアムスマートフォン」市場でシェアを高めている。
しかし今年はアメリカと中国の貿易摩擦問題に巻き込まれてしまい、第2四半期以降はシェアを落としてしまう可能性がある。

iPhone以外でも買い替え控えが起きる可能性はあるので、「プレミアムスマートフォン」市場の販売数はしばらく減少していくだろう。

こうした状況を打破する可能性を秘めているのが、5Gスマートフォンだ。
2019年は5G元年であり、すでに5機種以上の5Gスマートフォンが販売されている。
5Gの普及が各国で続けばプレミアムスマートフォン販売数も増加に転じる可能性もまだある。


海外では5Gスマートフォンの販売が始まっている


現在、5Gスマートフォンを出しているメーカーは、
・サムスン
・LG
・ファーウェイ
・シャオミ
・OPPO
・OnePlus
・ZTE
など。

サムスンとファーウェイは今後5G対応の折りたたみ型スマートフォンも販売する予定だ。
物珍しさもあり新しいもの好きな消費者はすぐに飛びつくのは間違いないだろう。
5Gスマートフォンの販売数が本格的に増えるのは2020年以降だ。
とはいえ現時点で5Gスマートフォンを出すメーカーは
「高性能端末が得意」
こうしたイメージを消費者に植え付けることができることは間違いない。
そして今後のプレミアムスマートフォン市場で優位なポジションに立てる。


カウンターポイントの調査によると、プレミアムスマホの4位と5位はOnePlusとグーグルだった。

OnePlusは日本での販売はされていないが、ハイエンドスマホに特化したスマートフォンメーカーとして認知されており、日本の国内ファンも既にいる。
しかもすでに5Gスマートフォンを販売中でもある。
OnePlusとグーグル両者のシェアは2%と微々たるものだが、5Gスマートフォンを対応し、販売開始したことで、OnePlusの認知度や信頼度が上昇し、販売数を大きく伸ばすかもしれない。


プレミアムスマホでシェア4位のOnePlus


アップルの5G対応iPhoneは、早くても2020年と言われている、
となれば、5G対応iPhone登場までは、さらに買い控えが進むことが考えられるだろう。
またiPhoneから5G対応のAndroidスマートフォンへの流出も進むかもしれない。

5Gスマホの展開次第では、ハイエンドスマートフォンに特化し、プレミアムスマホ市場で4位に出たOnePlusのように、ほかのメーカーもトップ5入りできる可能性は十分ある。

いまはまだアップル、サムスン、ファーウェイには及ばないが、近い将来、シェアを伸ばして3社を抜き去る可能性も無いとはいえない。

5Gの開始は、スマートフォンメーカーの勢力地図を劇的に変えるターニングポイントになるかもしれない。


執筆 山根康宏