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地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター(都産技研)は2019年5月29日、「サービスロボット事業化交流会」2019年度第一回全体会議を開催した。筆者(森山)の講演のほか、相鉄企業株式会社とGROUND株式会社によるロボット活用事例の紹介、サービスロボット事業化交流会の活動についての紹介が行われた。筆者は昨今のサービスロボット活用事例について概観を紹介した。他の話題についてレポートする。

●相鉄企業の清掃ロボット活用 操作が簡単でないと現場が使いこなせない

相鉄企業株式会社 営業開発部 主幹 和田誠之氏

相鉄企業とは相鉄グループ30社の一つで、ビルメンテナンスや清掃など総合管理業を請け負う会社。虎ノ門ヒルズや恵比寿ガーデンプレイスなど商業施設も管理している。

相鉄企業の和田氏は清掃ロボットの活用について、人手不足の現状から紹介を始めた。パート募集をかけても反応がゼロだという。そこで清掃業にロボットを使っていこうということでシーバイエスの掃除ロボットなど大手メーカーのロボットを試験導入して、主に共用部での清掃に活用をはかってきた。そのほかマキタの自動掃除機やアマノの自動掃除機なども活用している。

相鉄企業での清掃ロボット活用。このほかソフトバンクロボティクスの「Whiz」も試験しているとのこと

機械導入コストは大型床洗浄機タイプが500-700万円程度、中型バキューム掃除機タイプが200-300万円程度、消耗品、保守費用などランニング費用が年間50-150万円程度。ちなみに相鉄企業での標準的な清掃作業員の人件費は女性パートや定年再雇用が多く、一名あたり時給1500円程度で、ロボットの減価償却費と人件費の兼ね合いはシビアだという。

ロボット化の問題点としては、まずマッピングやティーチングを挙げた。ルンバのような家庭用ロボットと違って、業務用の掃除機は最初は一度ティーチング・マッピングする必要がある。現場ではその精度と難易度が課題となる。マップ作成後に新たなオブジェクトが置かれるとロボットが自己位置を見失ってしまう機種もあれば、ある程度タブレットやパソコンでのアプリケーション操作に知識が必要になる。また掃除中に人や障害物があると現状のロボットは迂回するが、そうすると掃除しない手残し部分ができてしまう。掃除終了後にはメールなどでそれを通知して、清掃品質を管理する必要があることには留意が必要だ。

また、対象床材が限定されることも課題だ。掃除ロボットには樹脂や石材など「ハードフロア」を水洗浄する湿式タイプと、主にカーペットを吸引する乾式タイプがある。混在する部分は一機種では対応できないので二台のロボットを導入する必要が出てきてしまう。そうなると費用面でペイしなくなる。そのため、どちらかを優先的に選ぶことになる。人の作業との切り分けによる割り切りも重要だ。

また運用上はバッテリーも重要だ。バッテリーが本体に固定されているタイプだと充電中は使えない。急速充電が可能なタイプでも連続作業ができないので、人が対応しなければならなくなる。使い勝手が良いバッテリーが現場では求められている。

3つ目の課題が、ロボットを使いこなすための人側の問題だ。一般の人は、ロボットは自動で動くので手をかける必要がないとか、対象場所の隅々まで清掃できないと役に立たないといった認識を持っている。また、ロボットに自分の仕事を奪われてしまうだとか、ロボットの世話を焼く仕事が増えてしまうといった認識もあるという。

これらに対して、ロボットが清掃できない壁際や隅、椅子やテーブルの下などは人の手で補助することが必要であるとか、全てがロボット化できるわけではないことを説明し、人とロボットが協働して作業を進める必要があると説明し、理解を求めているという。

和田氏は最後に「こんなロボットがあったらいいな」という現場からメーカーへの希望として、低価格化と、作業エリア設定の容易さを挙げた。現時点での価格では一つの現場に複数台入れるのは難しいが、大型洗浄機タイプで400万円程度、中型バキュームタイプで150万円程度であれば導入ハードルはかなり下がるという。ルート設定については、メカに不慣れな女性や年配者でも容易にルート設定や修正が行えることが重要だと強調した。人が設定した作業エリアに対し、障害物などで清掃できなかった部分は人が対応しなければならなくなるので、そこを明確化してほしいと述べた。

また、アタッチメント交換などでの一機種での様々な床材への対応、長時間稼働できるバッテリー、残量減のときの通知機能、予備バッテリー交換の容易さなどが必要だと述べた。さらにできれば、マルチファンクション、すなわち警備や案内もできるように一台のロボットに複数の機能が欲しいと語った。エレベーター側の対応もしてほしいという。

最後に和田氏は人手不足と賃金上昇が予想されるなか、反面、顧客からは低コスト化の要求が高まっていることから、ビルメン業界ではさらなる省力化・機械化が「会社の存続にまで関わる重要事項」だと述べ、ロボット活用が急務になっていると強調した。このような背景から、業界全体でロボット普及がハイスピードで実際に進行中だ。しかし一方、大手メーカーのロボットはなかなか現場にマッチしたチューニングができていないことから「開発各社から現場にマッチした使いやすいロボットが登場することを期待している」と要望を述べて、講演を締めくくった。

●GROUNDの物流倉庫での協働ロボット活用 社内PoCでの仮説・検証を重視

GROUND株式会社 経営戦略室 事業開発マネージャー 平野一将氏

GROUNDの平野一将氏は物流倉庫で用いる自律走行タイプのAMR(Autonomous Mobile Robot、自律型協働ロボット)について紹介した。

GROUNDはロボット、ハードウェアを使ったエンジニアリング、ソフトウェアを使ったロジスティクス最適化、そして経験と知見に基づいた物流オペレーションに強みを持っている。ロボットはインドのGreyOrange、米国Soft Robotics、中国のHRGなど海外から調達して組み合わせて用いている。GreyOrangeの「Butler」はニトリやトラスコ中山でも導入され、話題になった。様々な物体をハンドリングできるSoft Roboticsの製品をはじめ、GROUNDのソリューションは大手航空会社系列企業などの物流領域以外でも導入検証中だという。Soft Roboticsはボストン・ハーバード大発ベンチャーで物流のほか食品分野でも注目されている企業だ。

平野氏は、GROUNDの役割について、ハードウェア開発初期段階からメーカーと関わることで、現場での実用性の高いハードウェア・ソフトウェア開発の支援を行うことを挙げた。GROUNDの持つ知見を用いることで、実用性の高いロボットを物流市場に提供できるという。

「playGROUND」での検証作業の様子

GROUNDは「playGROUND」というラボを持っている。ダンボール製の棚を用いて物流倉庫を模擬した「playGROUND」では、ロボットの走行アルゴリズムのみならず、テストシナリオに基づいた仮説検証が行われている。このテストシナリオで、どれだけ安全性や生産性を検証できるかが重要だという。

実用上は、ロボットと人とを協働させることによって、どれだけ省人化できるのかが重視される。そこで、現行オペレーションのまま人力で作業した場合、ロボットと人とを協働させた場合の比較検証を行う。評価基準は生産性、ピッカーとよばれる作業者の歩数やアイドルタイムだ。また、Eコマースにはアパレルや工業部品、日用品など様々な事業者があり、分野によってオーダーの特性が異なる。その検証も行う。

作業効率をあげるためのロボット運用についても事前検証を行う。人とロボットが一緒に動いて一筆書きのような動きで一気にやるのか、あるいは作業者がポイントポイントにいるようなかたちを目指すのか。ロボットの台数と人数との組み合わせをどうするのか。どうすれば1日2万歩歩く作業者の負荷を下げて作業性を挙げられるのか。顧客先でのPoCの前に、事前シナリオを立てて仮説を検証することが重要だという。

GROUNDのロボット導入による省人化効果の例

なおGROUNDでは基本的に各作業者が決められたゾーンで待機し、複数のロボットがピックアップすべき棚の前まで移動し、最寄りの作業者がロボットに設置されたカゴのなかに商品を入れていくというかたちを取っている。作業者の歩行距離が削減され、生産性が向上するという。実際に倉庫に近い環境で既に実験して検証しているのが販売につながるキーポイントになる。

GROUNDがHRGと共同開発中のAMR

物流倉庫は一般にWMS(Warehouse Management Sysytem)というシステムで管理されているが、ロボットとの連携はGROUND独自開発のコンバーターを用いる。クラウドを使うためサーバの設置は必要ない。AMRは現在開発中で、2019年夏から顧客先でのPoCを行なって、秋以降に拡販していく事業戦略だという。

●東京ビッグサイトでも運搬・清掃・警備・受付など4種類のロボットを実証実験へ

東京都立産業技術研究センター プロジェクト事業推進部プロジェクト事業化推進室 倉持昌尚氏

最後に、都産技研の「サービスロボット事業化交流会」の今後の活動について、都産技研プロジェクト事業推進部プロジェクト事業化推進室の倉持昌尚氏が紹介した。「サービスロボット事業化交流会」にはメーカー、ユーザー、SIerなどが参加しており、会員は150社強。2019年度は5年間の事業の最終年度にあたり、ロボット実用化を目標にしている。都産技研では事業で開発したロボットの改良作業を含めて協力していくという。

倉持氏は、サービスロボット活用の今後について、「実際に使いたいと思っている人がどれだけ増えるかによる」と述べ、ロボットが色々なところに使われていることを世の中に知らしめることが重要だと語った。「今後は在庫管理システムなど既存ITシステムのコンポーネントの一つとしてロボットが使われていくといった可能性も高い」と述べ、「コストの問題はあるが、解決されていけば従来のシステムのなかにロボットをはめこんでいくことはできる。ぜひ活用事例を増やしていきたい」と語った。事業化支援やサービスロボット活用人材の育成を進めていくという。

一件につき200万円を上限として支援を行う事業化支援も、既に二件が採択されている。テレプレゼンスのiPresence合同会社と、案内ロボットの株式会社プラネックスだ。

株式会社プラネックスによる葛西臨海水族園での案内ロボット実証が実施予定

サービスロボットSIer人材育成事業も進められている。こちらは一件につき上限2000万円。中小企業が全体経費の7割を使用することが要件で、ユーザー企業とロボットの活用・導入検討を行い、実証実験を実施して市場化可能なサービス・ビジネスモデルを創出することが求められている。こちらも既に採択されている企業がある。日立システムズとイームズロボティクスによる準天頂対応大型LTEドローンの開発、そしてGROUND、ダイヤモンドヘッド、HRGによる物流分野でのサービスロボット開発、ソリューションゲートと中萬学院による学習塾での先生ロボット開発の3件だ。

ソリューションゲートと中萬学院による学習塾での先生ロボット開発

また、東京ビッグサイトにおいて4種類のロボットを実証利用する。運搬・清掃・警備・受付案内ロボットで、運用期間は3ヶ月から6ヶ月。2019年6月末に委託契約を行い、7月に開始。2020年3月に終了予定だ。清掃チームの1名を置き換えて、どのくらいのコストであれば釣り合うのかデータを収集する。ノウハウ含めて、活性化事業の成果ということで発表していきたいという。

東京ビッグサイトで4種類のロボットを活用

(森山 和道)