「職場さしすせそ」とは?

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 もうすぐ新年度。新しい職場や部署で業務が始まるなど、4月から職場環境が大きく変わる人も多いのではないでしょうか。しかし、新しい職場に気難しい上司や先輩がいると、人間関係の構築が大きな負担となる可能性もあります。そんなとき、「職場さしすせそ」というものが使えるそうです。どのように活用すれば職場で良好な人間関係を築けるのでしょうか。

話を発展させ、自己肯定感を高める

「職場さしすせそ」のもとになっているのは、合コンで使われる「合コンさしすせそ」だそうです。女性が男性を気分よくさせるために使う「合コンさしすせそ」は、「さすが!」「知らなかった!」「すご〜い!」「センスよいですね!」「そうなんだ!」の頭文字を取ったもので、それぞれ適宜会話中に盛り込みます。

 この「合コンさしすせそ」を応用して職場でどのように使えるのか、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会代表理事でキャリアコンサルタントの小野勝弘さんに聞きました。

Q.本音の退職理由を聞いた複数のアンケートで、常に上位に挙がるのが「人間関係がうまくいかない」です。職場での人間関係に悩む人は、以前よりも増えているのでしょうか。

小野さん「私は若者を中心に話を聞くことが多いのですが、『人間関係』を理由にした退職は以前よりも増えている気がします。特に、上司や先輩との関係で悩んでいる人が多いように思います。上司との間では、『人の話は聞かないのに、指示ばかり強制されてムカつく』『やりたくない仕事ばかりさせられる』『自分がやった仕事なのに上司が評価されている』といった声を聞きます。

一方、先輩との間では、『質問しても教えてくれない』『OJTとは名ばかりで、都合のいいときだけ先輩面してくるのがうざい』といった声があります。また、入社が1日早いだけで先輩と呼ばないといけない空気がある場合なども、若者が人間関係がうまくいかないと見なすケースが多いです」

Q.人間関係に悩む人が増えているからこそ、「職場さしすせそ」なのでしょうか。そもそも「さしすせそ」の効果は。

小野さん「人が話をしているときに『さしすせそ』で応答することができれば、相手に不快感を与えることなく話を発展させたり、相手の自己肯定感を高めたりすることができ、男女問わずに使えます。もともと、合コンで女性が男性に使う話法としての意味合いが強いものとされていますが、本質は相手を承認することにあります。認められてうれしく感じるのは男女ともに一緒で、上司や先輩も同様です」

Q.「合コンさしすせそ」と「職場さしすせそ」に違いはありますか。

小野さん「基本的には同じものですが、職場では上下関係や職務遂行上のヒエラルキーがありますから、それらに配慮して応用し、丁寧な表現を用いる必要があります。例えば、次のような使い方です」

【さ=さすがですね】
「初めての訪問先だったけど、契約取れそうだよ!」
→「さすがですね!」など

【し=知りませんでした】
「今回のようなケースは、こうする方がうまくいくよ」
→「知りませんでした。精進します」など

【す=すごいですね】
「今度リーダーを引き受けることになったよ」
→「すごいですね! すばらしいですね!」など

【せ=センスよいですね】
「今回の社内報、評判が良いんだ」
→「センスよいですよね!」など

【そ=そうなんですね】
(どんな話題でも対応可能。受け止める効果があるため、先を促しましょう)
→「そうなんですね、それで、どうなったんですか?」など

Q.あまりやりすぎると「わざとらしい」と思われそうです。使いこなすコツは。

小野さん「尊敬、謙譲の要素を含ませるとともに、さらに一言付け加えて使うことが望まれます。例えば、『さすがですね!』と伝えるときにも、相手を上げる(尊敬)のか、自分がへりくだる(謙譲)のかでも伝え方に差がでます。例えば、

『さすが××さん。××さんにしかできない発想ですね』(尊敬)
『さすが××さんです。私では全く思いもしなかった視点でした』(謙譲)

といった応答になるでしょう。もう一つ付け加えるなら、さらにもう一言『どこがさすがだと思ったのか』も伝えるとよりよいでしょう。

『さすが××さん。○○という視点は××さんにしかできない発想ですね!』(尊敬)
『さすが××さんです。○○ということにとらわれすぎていた私では、全く及ばない視点でした』(謙譲)

このように応用してみてください」

覚えておきたい「かきくけこ」

Q.「職場さしすせそ」以外で、職場の気難しい人と良好な人間関係を築くためにできることは何でしょうか。

小野さん「『さしすせそ』とともに、『かきくけこ』に注意することを私はお勧めしています。『かきくけこ』とは、相手にしっかり向き合い、関係性を築くための心構えです。具体的には次の通りです」

【か=観察する】
相手がどんな状態か、表情や声の調子、喜んでるいるのか悲しんでいるのか、いつもとどう違うのかなどしっかり観察しましょう。観察することで、普段と違うことに気づくことにもつながります。もしかしたら、気難しさの根本が分かることもあるかもしれません。

【き=聴く】
聴くというのは、聴いている姿勢を見せることです。アイコンタクトやメモを取りながら聞くなど、話をしている相手が安心して話せる環境をつくりましょう。

【く=繰り返す】
相手が力を入れた言葉や単語は、忘れず返しましょう。同じ言葉を返すというのは、受け止めていると相手に伝える一番簡単な方法です。依頼であっても指導であっても、相手が伝えてくれたことを確認するために繰り返すというのは、相手に安心感や信頼感を与える方法になります。

【け=結論から話す】
職場という特殊性から、電話が鳴ったり、唐突に仕事が入ったりする可能性があります。そうしたときでも、相手にしっかり自分の言いたいことが伝わるように、結論から話すということも、相手に配慮するということになります。また、上司や先輩はビジネスマナーとして、結論から話せということを徹底されている可能性もあります。結論から話すことで相手の時間を取らないということにもつながります。

【こ=こだわらない】
自分の考えにこだわってしてしまうと、どうしても相手を論破したくなったり、不満がたまったりしてしまうものです。自分が正しいことももちろんあると思いますが、心構えとして自分の考えにこだわらず、相手を受け止める姿勢を持つことをお勧めしています。

小野さん「このように『さしすせそ』を使うとともに、『かきくけこ』に注意して相手にしっかり向き合うことができれば、仮に職場に気難しい人がいても、良好な人間関係が築けるのではないでしょうか」