医師が推奨する“短期集中”糖質制限ダイエットのやり方&おすすめメニュー。悪い噂の真偽は?
最近、コンビニでもよく見かける「糖質ゼロ商品」。ダイエットのための食事法として「糖質制限」がスタンダードになってきています。実際に糖質制限ダイエットをした方のブログを読むと、10kg、20kgのダイエットに成功したという猛者も…。
しかし、雑誌やWebサイトで糖質制限ダイエットについて調べてみると、「糖質制限は危険!」「糖質制限のデメリット」など“悪い噂”がたくさんでてきました…
そこで今回は、この“悪い噂”の真相を、自らも糖質制限ダイエットで15kgの減量に成功したという、糖質制限を指導する医師、亀川寛大先生にぶつけてみることにしました!
![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/5/b/5b0b9_1658_2fdec039d4ccef0fd50149afa0f23473.jpg)
【亀川寛大(かめかわ・かんだい)】2017年に熊本市のなごみクリニック院長、2018年に糖尿病再生医療研究所所長に就任。元外科医として、がん患者が増え続ける現状に疑問を持ち、予防医療を推進。患者への糖質制限指導を始める。「ラーメン先生」と呼ばれるほどのラーメン好きで毎日ラーメンを食べていた1日1麺生活を改め、自らも糖質制限食により15kgの減量に成功。現在は外来診療のかたわら、全国で行う食事指導のセミナーを開催。亀ドクの愛称でブログ、SNSで情報発信も行っている
糖質制限ダイエットで痩せる理由は、“糖質の摂取が減ったから”だけではない
そもそも糖質とは炭水化物から食物繊維を引いたものを指します。糖質が含まれる代表的な食べ物には、お米やパン、パスタなどの主食や、スイーツ、ビールなどが挙げられます。
自らも糖質制限で痩せた経験を持つ亀川先生は、「糖質制限では単に体重を落とすことが目的ではなく、見た目もをスリムにすることができる!」と推奨しています。
その理由は、糖質制限ダイエットにはカロリー制限ダイエットでは難しい、「食生活の改善」が期待できるという点にあるようです。
亀川先生:
ダイエットと聞くと、大抵の方は「野菜をたくさん食べて、お肉はパサパサで脂身のないものを食べないといけない」と思いますよね。
これって、いわゆる「カロリー制限」的な考え方なんです。
それでも一時的に体重は減るのですが、結果的には、体全体の代謝が落ちてしまい、脂肪をうまく燃やせなくなり、見た目に変化が現れづらくなってしまうんです。
ライター・サトー:
僕も、体重は減っているのになかなか見た目に変化がでなくて、なんでだろうと思っていたことがあります。
亀川先生:
糖質制限はそれとは考え方が違います。
普段摂り過ぎている糖質の摂取量を抑えることで脂肪の蓄積を防ぎつつ、今まで不足していた栄養素、特にタンパク質やビタミン・ミネラルをたくさん摂りましょうという食事法なんです。
✔︎覚えておきたいポイント
糖質制限ダイエットでは、糖質を減らす代わりに脂肪を燃やす筋肉のもととなる、脂質・タンパク質や脂質が含まれる食品をの食べる量をむしろ増やすことが推奨されています。
タンパク質を摂取しないと、筋肉量が落ちてしまうと言われています。そのため、脂肪を燃やす筋肉の量を維持することはダイエットにおいて重要なのです。
ライター・サトー:
なるほど〜。糖質制限って、とにかく「食べる量を減らすこと」にフォーカスしているんだと思っていましたが違うんですね。
でも、「糖質制限をはじめたらすぐ痩せた」と言っている人もいませんか?
亀川先生:
糖質の摂取量を抑えると、体内のグリコーゲンが分解されて水分が排出されます。そのため初期段階は、水分が抜けることで一気に体重が落ちるんです。
なのであくまでもこれは一時的なもので、「糖質を制限しつつ、タンパク質や脂質の摂取量を増やすことで見た目も変化させる」というのが糖質制限ダイエットの基本です。
糖質制限ダイエットは「ガチ」からはじめて「マイルド」へ移行するのがポイント!
亀ドク式糖質制限ダイエットの方法は大きく2つ。1つは、1日の糖質摂取量を60g以下に抑える「ガチ糖質制限」。もう1つは、1日の糖質摂取量を130g以下に抑える「マイルド糖質制限」です。
亀川先生がおすすめするのは、まず「ガチ糖質制限」からはじめて、そこから緩やかに糖質量を調整しながら「マイルド糖質制限」に移行する方法です。
亀川先生:
糖質制限ダイエットをはじめたばかりの体内は、タンパク質・脂質が不足しています。
なので「こんなに食べていいのかな?」と心配になるくらい、ステーキや焼き鳥など動物性のタンパク質や脂質を積極的に食べるようにしましょう。
✔主食に含まれる糖質量
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分量
|糖質量
ご飯(精白米) | 茶碗1杯(150g) | 55.2g
食パン | 6枚切り1枚(60g) | 26.6g
うどん | 1玉(240g) | 49.9g
そば | 1玉(170g) | 40.8g
中華めん(蒸し) | 1玉(150g) | 54.8g
スパゲティ(乾燥) | 1束(100g) | 71.2g
出典 『ラーメン大好きの医者が教える 糖質制限の外食ガイド』(マキノ出版)P.182〜183より
✔肉類に含まれる糖質量
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分量
|糖質量
牛肩ロース(脂身つき) | 1個(150g) | 5.6g
牛バラ(カルビ) | 薄切り1枚(25g) | 0g
豚ロース(脂身つき) | 薄切り1枚(25g) | 0.1g
豚もも(脂身つき) | 1枚(90g) | 0.2g
鶏もも肉(皮つき) | 1枚(250g) | 0g
鶏むね肉(皮つき) | 1枚(250g) | 0.2g
出典 『ラーメン大好きの医者が教える 糖質制限の外食ガイド』(マキノ出版)P.182〜183より
✔野菜類に含まれる糖質量
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分量
|糖質量
トマト | 1個(150g) | 5.6g
ニンジン | 1本(200g) | 12.6g
ブロッコリー | 1株(250g) | 1.5g
キャベツ | 1/2個(600g) | 20.4g
レタス(蒸し) | 1個(400g) | 6.8g
トウモロコシ | 1本(175g) | 107.7g
ジャガイモ | 1個(150g) | 24.4g
出典 『ラーメン大好きの医者が教える 糖質制限の外食ガイド』(マキノ出版)P.182〜183より
✔️覚えておきたいポイント
精白米だと、ご飯1杯で糖質量は55.2gですが、おかずに含まれる糖質量もあるのでオーバーしてしまいます。「ガチ糖質制限」であれば、1日でお米なら茶碗半分、食パンはなら1枚以下に抑える必要があります。
亀川先生:
ちなみに、「ガチ糖質制限」では根菜類は糖質量がオーバーしてしまうのであまり食べられません。わかりすく言うと、土の上で育つ葉物野菜はOKで、土の下で育つ野菜はNGです。
ライター・サトー:
なるほど。
亀川先生:
昔一緒に働いていたビール好きの女医さんは、1日ジョッキ3杯は飲みたいという方でした。でも、ビールの中ジョッキ1杯に含まれる糖質量は約15g。
だから彼女は、ビールを飲んだ日はお米を食べないと決めていましたよ(笑)。
ライター・サトー:
なるほど〜! こうして例をあげてみると結構大変ですね…
亀川先生:
現代の食生活って、いわば糖質「無」制限なのが現状です。
日本食の特徴でもあるのですが、圧倒的に炭水化物(=糖質)を食べる頻度が高く、タンパク質・脂質を多く含む食材を食べていない。
糖質制限が、その乱れた食生活を見直すきっかけにもなるんです。
コンビニご飯、おやつ、外食時はどうすれば? ビジネスマンでも続けられる糖質制限メニューって?
糖質制限で悩みどころなのが、外出先や間食に何を食べていいかわからないという点。
そこで、亀川先生がガチ糖質制限ダイエット中に実際に食べていた食材・メニューの中から、コンビニ、おやつ、そして外食時におすすめなものを聞いてみました!
コンビニなら塩系のホットスナック・惣菜で! おでんは“汁なし”にしよう
亀川先生:
コンビニはファミリーマートの焼き鳥がいいですね。塩系のメニューは糖質を抑えられるのでおすすめです。
炭火焼きとりもも塩
http://www.family.co.jp/goods/friedfoods/0251242.html
亀川先生:
おでんはカロリーも低くダイエットにおすすめですが、なかでもゆで卵や牛スジ、ウインナーなどがいいでしょう。
ただし、おでんの汁は私調べで100mlあたり8gの糖質量が含まれています。絶対に汁なしにしましょう。
おやつはナッツやチーズがおすすめ! 糖質ゼロのならお菓子やチョコレートも◯
亀川先生:
間食に食べるおやつなら、良質な脂質を多く含むナッツやチーズがいいと思います。あとは最近よくコンビニでも発売されている低糖質・糖類ゼロのお菓子やチョコレートもおすすめです。
糖質を考えたふわっとパフケーキ|ローソン公式サイト
http://www.lawson.co.jp/recommend/original/detail/1350302_1996.html
亀川先生:
ちなみに手間はかかりますが、羅漢果(ラカンカ)という植物から抽出した成分を使った、ラカントという天然甘味料は、砂糖と同じ分量で甘いお菓子が作れます。
甘いものを食べたくて料理をする方はぜひチャレンジしてみてください!
外食は「お肉をそのまま食べられるお店」を選ぼう
亀川先生:
ダイエット中にかなりお世話になったのが、「いきなりステーキ」。お肉、ハンバーグをそのまま食べられるお店は、メインを頼んでもほぼ糖質ゼロなので、糖質制限ダイエット中は天国に思えますよ。
あっ、もちろんライスは抜きで(笑)。
@ikinariofficialさんのInstagramの投稿
糖質制限のデメリットって? 悪い噂の真相は…?
亀川先生は糖質制限ダイエットを行うことで、これだけの効果を得られると話します。
"・糖尿病が改善される
出典 『ラーメン大好きの医者が教える 糖質制限の外食ガイド』(マキノ出版)P.20〜25より
糖尿病患者が4ヶ月の糖質制限を行なった結果、空腹時血糖値などが大幅に改善
・痩せる
亀川先生自身が糖質制限を実施して、約1年で15kgのダイエットに成功
・美肌になる
肌の材料となるたんぱく質の摂取量が増えるので、皮膚細胞の新陳代謝がスムーズになる
・精神状態が安定する
糖質摂取量が減り、血糖値が上下しなくなるので気持ちが落ち着きやすくなる
・更年期障害が改善される
糖質制限によって更年期障害が改善、54歳で生理が戻ったなどの声も
・日中の眠気がなくなり集中力が高まる
食後の眠気の原因と言われる、血糖値の乱高下がなくなるため
・生活習慣病を予防、改善できる
血糖値の乱高下がなくなることで、血管などを傷つけてしまう活性酸素の発生を抑えられる"
しかし、ネットなどで糖質制限について調べてみると、さまざまなデメリットがあるという意見も。こうした糖質制限にまつわるネガティブな情報の真偽についても聞いてみました。
噂1:糖質制限をするとかえって太るし、すぐリバウンドする!?
亀川先生:
糖質制限ダイエットをはじめると、多くの方は初期段階で体重が減るのを実感すると思います。
しかし、人間の体は、体重によって消費するエネルギー量もおおよそ決まります。なので、体重が減るに伴って、食べる量も自然と減っていくのが当たり前なのです。むしろ、体重が減っても食べる量が減らない人は何かしらの栄養不足を考えるべきです。
ライター・サトー:
太ってしまう人や、すぐにリバウンドしてしまう人は、体重が減っても同じ食生活をつづけているということですか?
亀川先生:
そうですね。僕の患者さんのなかには、昨晩食べたものや前回の検診からの食生活を聞いても問題ないのに、体重が減っていない人がも結構いるんです。
おかしいなと思って詳しく聞いてみると、「そういえば、おやつを食べてた」「果物は良いかと思っていた」ということが多いんですよ。こちらから掘り下げないと思い出せないくらい、食べることが無意識の習慣として定着しているんです。
ライター・サトー:
普段何を食べているのか、きちんと意識する必要があるんですね…
噂2:低血糖で頭の回転が遅くなるんじゃない?
亀川先生:
あ〜。これは、最初の3、4日は耐えてください(笑)。
ライター・サトー:
つまり…噂の通りということで…?
亀川先生:
いえ。徐々に体が慣れることでラクになっていきます。
糖質を体に取り込むと、グリコーゲンというエネルギーとして体内に貯蔵されます。その量が足りなくなると、「糖新生」といって脂質などからエネルギー源を作るんです。
✔︎覚えておきたいポイント
人間の体は、糖質>脂質>たんぱく質(アミノ酸)の順番でエネルギーを使うようにできています
ライター・サトー:
糖質制限ダイエットの場合、糖質が入ってこない分、脂質を使うようになって、結果体脂肪が減っていくんですね。
亀川先生:
体内の赤血球は1時間あたり2g、脳は1時間あたり4g、1日で合計144gの糖質が必要で、本来糖新生にはこれだけの糖質(=エネルギー)を作りだす能力があるはずなんです。
しかし、1日3食糖質をモリモリで食べていたり、間食に糖質を食べている場合、体内には糖質が十分すぎるほど存在しています。そのため、糖質制限ダイエットをはじめたばかりのときは、糖新生の能力がさび付いているので、うまくエネルギーを作れないんです。
ですので最初はつらいんですが、それは正常な証でもあるので安心してください。
噂3:糖質制限をすると老ける? 認知症のリスクが高まる?
亀川先生:
糖質制限が老化につながるという話は、マウスを使った実験の結果がその根拠になっています。
1913年にロシアの病理学者が行ったウサギを使った実験でも、食動物であるウサギにコレステロールを食べさせると動脈硬化になったという結果が出ていますね。
ライター・サトー:
えっ、ここにきてついにデメリットが…
亀川先生:
いえ、違います。マウスもウサギも草食で、種子・穀物類が主食で、人間の食性とは全く異なるのです。彼らの研究結果がそのまま雑食の人間に当てはまるかと考えると…僕はこの噂には無理があると思っています。
また、身体を糖化させる糖質を抑え、身体をつくるタンパク質をしっかりと摂りますので、糖質制限はむしろアンチエイジングにつながります。ダイエットに成功しても、「お肌つやつや!若返った!」という方が多いのも糖質制限の特長です。
ちなみに、コレステロールに関しては多くの医師・研究者が反対の声を上げていて、2015年には厚生労働省が日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃したという事実もあります。これまで言われてきた、「1日玉子1個」は嘘なんです。
ライター・サトー:
食べていいよというお墨付きが国から出てるのか。
亀山先生:
認知症のリスクについては、九州大学が行なった「久山町研究」が有名です。
町に住む糖尿病の方、あるいは糖尿病予備軍の方を調べたところ、他の方と比べてアルツハイマーになる確率が2倍も高いという結果が出ました。
このことからも、その噂は真逆で、むしろ糖質制限は認知症対策に効果があるかもしれないと言えると思います。
糖質制限を成功させるコツは、短期集中ではじめて中毒症状を抑えること
ライター・サトー:
亀川先生はラーメンを食べながらの糖質制限でダイエットに成功されたと聞いています。最後に、成果を出すためのアドバイスをいただきたいです。
亀川先生:
糖質を食べると血糖値が上昇しますよね。実はそのときに幸福感を得られるようにできているんですよ。だから血糖値が下がると、「また糖質を食べたい」と思ってしまう。
「甘いものを食べると幸せを感じる」と言いますが、それは逆。「幸せを味わうために甘いものを食べている」という、ちょっとした中毒症状なんですよ。
ライター・サトー:
うっ…
亀川先生:
逆に言うと、一度糖質の摂取を断てば、こうした中毒も抑えることができます。
なので、まずは平日でも休日でも3日間だけ「ガチ糖質制限」を試してみることをおすすめしています。
ライター・サトー:
中途半端だと中毒症状を抑えきれなくなるから、思い切って減らすんですね。
亀川先生:
3日続けてみて調子が悪くなってしまったらマイルドな糖質制限にシフトすればいいし、続けられそうならそのまま続ければいい。
できそうなら3週間、もっと続けられそうなら3ヶ月チャレンジしてみてください。そこまでできたら、一度糖質制限を緩めても大丈夫です。
大切なのは、「糖質過多すぎる」中毒的な食生活に戻らない状態にするということで、「今後一切食べてはいけない」ということではないんです。
ちなみに、亀川先生は今でも大好物のラーメンを週に1、2度程度食べているとのことですが、「ガチ糖質制限」「マイルド糖質制限」をうまく組み合わせて体重キープに成功しているそうです。
取材前、糖質制限ダイエットもカロリー制限と同じで、「食事量を減らすダイエット」だと思っていましたが、亀川先生のお話を聞き、それは誤解だったということがわかりました。
みなさんも、知らず知らずのうちに糖質を食べ過ぎていませんか?
ギクリと感じた方は、ぜひ明日から3日間のガチ糖質制限にチャレンジしてみてください!
〈取材・文=サトートモロー(@tomorrow_p_sato)/編集=宮内麻希(@haribo1126)〉
亀川寛大糖質off-icialサイト
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