OPPOをたった1年で日本対応メーカーにしたOPPO Japan社長トウ・ウシン氏の実力とは

写真拡大 (全5枚)

OPPO(オッポ)は世界シェア4位のスマートフォンメーカーである。
その日本法人OPPO Japan(オッポジャパン)は、 2017年11月8日に設立後、わずか1年ほどで、
・おサイフケータイ/防水対応モデル(R15 Pro)
・カメラが本体から飛び出すモデル(Find X)
・ディスプレイ内指紋認証モデル(R17 Neo / R17 Pro)
など、日本市場に適応する7機種もの新製品を投入し、日本対応を成し遂げた。

これまでの海外メーカーではありえない驚異的なスピードだ。

この離れ業を指揮したのが、オッポジャパン株式会社代表取締役社長 トウ・ウシン氏である。


■キャリアの力が強い日本市場

OPPO Japan 代表取締役社長 トウ・ウシン氏


2018年の今年に、日本市場への参入した理由について、トウ・ウシン氏は、
「理由はふたつあります。
ひとつめですが、
OPPOは技術面、製品面、プロモーション面のすべてにおいて、海外市場を開拓する良いタイミングだと判断したからです。
今年に入ってから、日本市場に加え、ヨーロッパ市場にも進出を遂げています。
(2018年は)OPPOとしてのグローバル化の新たな一歩となると思っています。

ふたつめですが、
グローバル戦略において一番難しいのがキャリア市場の開拓です。
その中でも特に難しい日本市場に挑戦したいと考えて、今回、日本市場へ進出しました。」

日本のキャリア主導の市場は、海外メーカーにとって、参入するハードルが高いと言われている。

トウ・ウシン氏
「日本の市場は、キャリアの影響力が圧倒的に強いため、キャリアへの参入は必須であると考えています。

実際、新端末の日本へのローンチは海外に比べて少し遅れています。
しかしこれは、日本市場の仕様やニーズに合わせるために時間がかかったためなのです。」


またトウ・ウシン氏は、スマートフォンメーカーとして、キャリア展開の難しさについても認識されている。

トウ・ウシン氏
「キャリアに参入した場合には、メーカーとして直接ユーザーにコミュニケーションをとったり、リーチしたりすることができません。販売においてもキャリアを介する必要があります。

そのような状況下でキャリアの高いシェアが保たれているのは、グローバルで見ても日本だけなのです。」

日本市場では、9万円以上のスマートフォンのシェアは、3万円以下のモデルよりも高いとも言われている。


「OPPO R17 Neo」はオッポジャパン初の通信キャリア向けモデルとしてUQ mobileから発売された


トウ・ウシン氏は、日本の消費者が、
・美に対する高い意識
・製品品質についての厳しい目
これらを持っていると評価する。

こうした日本の特徴や特性は、日本市場への独自対応に活かされているという。
OPPOのグローバル展開では、現地チームに各国の戦略や対処など、判断をゆだねているそう。

トウ・ウシン氏
「どの市場においても、その市場の消費者のコアとなる需要を理解できるか否かが非常に大事であると考えています。

ビジネスや文化、習慣において、グローバル市場では、どの国も異なっています。
しかし変わらないものもあります。
それがOPPOとしての
・ビジネス理念
・消費者の需要に対する端末開発
これらは世界各国のOPPOで変わらないところです。」


■高性能モデル機種が好まれるOPPO
トウ・ウシン氏は、日本市場への進出1年目にして、どのような手応えを感じているか?

トウ・ウシン氏
「日本のSIMフリー市場では、多くのスマホがMVNOを利用するかたちです。
そうなると、月ごとの費用が限られているため、キャンペーンなどが打ちづらくなります。

そうした理由から3万円以上のスマートフォンは、なかなか売れません。

現状は、安価なモデルの売れ行きが良いという状況です。
ローエンドモデルが売れることで、消費者の方に、
(OPPOは低価格モデルメーカーという)誤解を招くのではないかと、
そこだけが心配なところです。」

スマホ全体で言えば、日本に限らず海外でも、安価な機種の売れ行きは好調な傾向にあるようだが…

トウ・ウシン氏
「OPPOのスマートフォンは、安ければ安いほど売れるというわけではありません。
実際、ほかの市場では、ミドルまたはハイエンドのモデルが多く売れています。

従って、ローエンドは我々のメインの戦場でないと考えております。

OPPO全体としては、日本円でいうと、5〜7万円台の機種が一番よく売れており、2〜3万円台の機種の売上はそこまで多くはありません。」

世界各国で販売されていた
「OPPO R11s」(販売時の実売価格:日本円で税別57,980円相当)
このモデルは、Androidスマートフォンとして、グローバル市場で売上台数No.1を記録している。


OPPO Japanのフラッグシップモデル「Find X(ファインド エックス)」はトウ・ウシン氏も愛用している



■OPPOのブランドを広めたい
OPPOは、日本に参入した海外メーカーとしては後発にあたる。

トウ・ウシン氏の目には、
先行して日本市場に参入し、実績をあげているHUAWEI(ファーウェイ)やASUS(エイスース)は、どう映っているのだろうか?

トウ・ウシン氏
「どちらかといえば、彼らの方が我々の動向を注視されているのではないかと思います。

とはいえ、(OPPOは)後から日本市場へ参入したので、我々としても彼らの動向は気にはしていますが、先行しているブランドの皆様には、自分たちの現在のシェアを伸ばすことだけに専念して頂きたいです。我々の動きをそんなに注視されていても、しょうがないですからね。
我々としては、自分のブランドを広めることに専念していきます。」

日本の市場、社会は、サポートに対する要求が強い傾向にある。
先行するHUAWEIやASUSもサポートの強化を打ち出し、リアル店舗でのサポートセンターも展開している。

トウ・ウシン氏は、エンドユーザーに対するサポートをどう考えているのだろうか?

トウ・ウシン氏
「品質について(OPPOは)大変自信を持っています。
(OPPOの)端末の故障率はおよそ0.02%以下になっています。
他と比較してもこれは相当低い数値ではないかと思っております。

しかし消費者が必要なときに便利なサービスも提供できないといけません。
『郵送の場合には、12時間以内に修理して消費者に返送する』というサービスは、現在も継続しています※。2019年1月7日から修理工房さんと提携し、対面で修理できるサービスを10店舗から提供し始めます。」

※特殊な状況の故障などは除く

かなりやり手なトウ・ウシン氏。
彼は、日本のCEOに就任する前は、インドネシアやシンガポールでCEOを務め、新規市場の開拓を手がけてきた実力をもつ。


トウ・ウシン氏は、
・インドネシアで第2位
・シンガポールで第3位
と、OPPOのシェアを引き上げ、成功を成し遂げた立役者でもあったのだ。

とはいえこれだけの成功が簡単の達成できるとは考えにくい。
当時のことをお聞きしたが、詳しくは語らず、
「インドネシアにいた時は睡眠時間は短く、シンガポールと日本では睡眠時間は長いですが、よく悪夢を見ています。そういうイメージです。」
と話した。

「インドネシアにはキャリアがない状況でしたので、ビジネスとしてかなりの努力が必要となり、睡眠時間が短くなります。シンガポールでは、キャリアからの採用を待たないといけない状況です。どの機種がキャリアに選ばれるのかを待つ必要があります。待っている間に心配したりして悪夢を見るという感じです。」

これは、相当に苦労をされたことがうかがえる。

こうした経験が、
日本市場において、1年で7機種を展開し、その対応スピードの早さで、業界やスマートフォンユーザーを驚かせた原動力になっているのかも知れない。




では、次の一手となる、来年はどう考えているのだろうか?

トウ・ウシン氏
「我々は、日本市場においては1年足らず。
まだ始まったばかりという状況です。

しかし、この1年のおかげで、日本市場おいて、OPPOというブランドについて、ある程度の理解が深まったと感じています。

たとえば、
スマートフォンに対する日本の消費者の需要に対してもある程度、把握できています。
これをOPPOと、どのように合わせられるのかを、もう少し試してみようと思っています。

来年は引き続き有力な製品を出していきます。
ここで公表はできませんが、ぜひ、ご期待いただきたいと思います。

今後、販売チャンネルを拡大していきますので、消費者もOPPOの製品を、より身近に手に取って感じて頂けると思います。

できれば、消費者ともっと有効なコミュニケーションの方法を探りたいと思っています。
そして最終的には、より多くの消費者にOPPOを受け入れてもらって、ぜひ、購入いただきたいです。」

日本政府は最近、HUAWEIの製品を政府調達から事実上、排除する方針を決めた。

この点について、トウ・ウシン氏にも聞いてみた。

するとトウ・ウシン氏は、
HUAWEIとZTEは中国政府が資本に入っているメーカーだが、
OPPOは完全独立の民間企業であり、そこが大きな違いだと強調した。

そもそもOPPOはHUAWEIのように携帯基地局向けなどのいわゆる通信設備などの市場には参入していない。
純粋にスマートフォンを開発、製造、販売するメーカーで、日本で販売されている他社のSIMフリースマートフォンと同様に、各国の市場の法規に則った製品を提供し、既存キャリアの基地局を利用する立場であるという。

トウ・ウシン氏
「キャリアについてはUQ mobile様で採用いただいていますが、来年はさらに良いニュースをお伝えできればと考えております。」
と、2018年でのキャリア販売はUQ mobileだけだったが、来年の展開について自信を見せた。


来年のOPPOは、
・どのようなスマートフォンを発売するのか?
・どのキャリアから販売されるのか?
・どのようなサポートを展開するのか?

2019年のOPPOでのトウ・ウシン氏の手腕が楽しみになってきた。


執筆:ITライフハック 関口哲司
撮影:2106bpm