瞬く間に鳥栖のアイコンとなり、残留争いに喘ぐチームを奮い立たせたF・トーレス。来季も妙技の数々でファンを楽しませてくれるはずだ。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 夏のJリーグ参戦以降、日本中で一大フィーバーを巻き起こしたのが元スペイン代表FW、フェルナンド・トーレスだ。残留争いの只中にあったサガン鳥栖に救世主として招聘されると、成績こそ17試合出場3得点・2アシストに終わったが、ゲーム中は常に眩いばかりの輝きを放ち、チームを力強く牽引し続けた。

 12月中旬にはオフを利用して東京都内を観光。渋谷のスクランブル交差点や明治神宮を訪れた様子をインスタグラムに投稿して、こちらも大きな話題を呼んだ。いまやオン&オフ・ザ・ピッチで日本のサッカーファンをざわつかせる、注目の的である。

 そんな“エル・ニーニョ(神の子)”は現在、母国スペインに帰省中で、生まれ育った首都マドリードで英気を養っている。12月19日には古巣アトレティコ・マドリーの本拠地ワンダ・メトロポリターノを訪問し、その後は自身がスポンサー契約を結ぶ企業のイベントにも参加。そこで地元メディアの取材を受け、およそ20分間に渡り立ちっぱなしでインタビューに応じた。

 やはり質問の大半は、アトレティコに関するもの。選手本人にとっては、イングランドとイタリアでの8年間を挟んで、ジュニア時代から足掛け15年間を過ごした心のクラブだ。とはいえ、矢継ぎ早な質問ラッシュにタジタジの様子。「もちろんいまでも応援しているし試合をチェックもしているよ。でも僕はもう退団した身だし、あれこれ意見を言える立場でもないからね」と前置きしたうえで、「今シーズンもリーガとチャンピオンズ・リーグで素晴らしい戦績を残している。ただ、もうこれ以上の故障者はご勘弁だよね。さらに状況が悪化しないように祈っているよ」と話した。

 好調を維持するアトレティコだが、たしかに主力に怪我人が多い。ファンフラン、フィリペ・ルイス、ホセ・ヒメネス、トマ・ルマール、ジエゴ・コスタと枚挙に暇がないほどだ。裏を返せば、ディエゴ・シメオネ監督の用兵の巧みさが際立っており、「チームをひとつの方向に向かわせるシメオネ監督の手腕は見事だ。だから心配はしていないよ」とトーレスも信頼を寄せる。質問者に「でも前線の補強が急務です。戻って来る可能性は?」と問われると、「いやいや、扉はもう閉まっているよ。いまの僕はアトレティコの一ファンに過ぎないんでね」と交わしていた。
 当然、日本での日々についても問われ、名ストライカーはこう答えている。

「日本での現状にはすごく満足しているし、ハッピーだ。まだ(鳥栖とは)数年の契約が残っているから、それを全うしたいと考えているよ。クラブが当初に設定した目標を達成するために、できるかぎりの貢献をしたいと思う。どうなるか見てみよう」

 それでも、アトレティコの番記者による執拗な質問は続いた。「引退したらどうする?」「またアトレティコに帰還するのか?」と詰め寄られる。するとトーレスは笑みを浮かべながら、「さあどうなるだろうね。引退後にどの方向へ向かうかなんていまは分からないし、まだ思い浮かべてもいないよ」と率直に回答。そして、「まだまだ現役を続けたいし、プレー自体を楽しみたいんだ。時間はたくさん残されているとも思っている。いまはプレーを続けたい、その気持ちでいっぱいなんだ」と力を込めた。

 アトレティコは年明けの2月、チャンピオンズ・リーグのラウンド・オブ16でイタリア王者ユベントスと対戦する。「アトレティコは勝てると思うか。クリスチアーノ・ロナウドはやはり脅威か」と尋ねられ、熱いアンサーでサポーターを喜ばせている。

「ロナウド? アトレティコはどんなものにもどんな選手にも恐れを抱いたりはしないさ。普段通りに準備して、普段通りにプレーするだけでいいんだ。勝者のメンタリティーを携えてね。もし恐れを抱いているとするなら、それはユーベのほうじゃないかな?」

 最後に「僕とアトレティコの関係は永遠だ」と話し、颯爽と会見場を後にしたトーレス。はたして入団2年目のJ1リーグでは、どんなパフォーマンスを披露してくれるのか。ヴィッセル神戸所属の同胞コンビ、アンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャらとの競演にも特大の注目が集まるだろう。