ロンドン五輪金メダリストの村田諒太選手(2018年7月撮影)

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日本ボクシング連盟の山根明会長が告発状の提出後初めて生出演したテレビ番組で、現役選手への「人格批判」を繰り返した。

ロンドン五輪金メダリストの村田諒太選手(32)に「生意気」、リオ五輪代表で助成金を不正流用された形となった成松大介選手(28)には「だまされた」と、統括団体トップでありながら選手を次々に罵倒。一方で自身の進退を問われると「なぜ進退という話が出るんですか?」と落ち度を否定した。その態度にインターネット上では「子どもがそのままおじいちゃんになった感じ」などと呆れ返る声が続出している。

自分の「尽力」でメダル取れた?

山根会長は2018年8月3日の「スッキリ」(日本テレビ系)で、大阪から中継をつないで生出演。助成金不正流用や不正審判など連盟の疑惑を指摘する告発状が7月27日付で提出されてから初めて、生放送番組に姿を見せた。

騒動が起きていることについて、各都道府県のアマチュアボクシング連盟にお詫びを述べ、「日本連盟会長として責任を感じる」と陳謝。低姿勢な言葉ではじまったが、五輪金メダリストでWBA(世界ボクシング協会)世界ミドル級王者の村田諒太選手の話になると一変した。

「村田君はね、学生時代は非常にええ選手であった。だけど、1人でメダルを取れる力はありません」

山根会長の話では、村田選手がアマチュア時代のアジア選手権(韓国)で、その試合内容から監督代行から「使いもんにならん。日本の恥だから、もう二度と海外遠征で使うべきじゃない」と提言があった。一度は「もう使わない」と応じた山根会長だが、「いろいろ考えてみたら、この子には精神的な暗示を与えたら強い選手になるのではないかと。だからもう一回チャンスをあげよう」と思い直した。

そして、アジア選手権後の世界選手権代表にも選出。村田選手はその後の12年ロンドン五輪で、日本史上48年ぶり2人目となるボクシング金メダルを獲得する快挙を成し遂げた。「1人でメダルを取れる力がない」というのは、山根会長の「尽力」がなければ、第一線で試合を続けられなかったということだろうか。

五輪後にプロ転向し、世界王者にまで上り詰めた村田選手だが、今回の告発問題に絡み「そろそろ潔く辞めましょう、悪しき古き人間達、もうそういう時代じゃありません」と7月28日にフェイスブックに投稿。連盟に反旗を翻す格好となった。

「仮面をかぶってますね」

番組司会の加藤浩次さんは「当然、村田選手も周りの力があって金メダルを取れたと思っているでしょう。その選手がこういう言葉を使った」と、事の重大性を指摘。だが、山根会長は

「生意気だよ。あの選手はね、まだ社会人じゃない。現役ボクサーとして言うべき話じゃありません」

と、自身の責任について触れず、逆に村田選手を罵倒した。

ロンドン五輪の裏でも自身の奔走があったと主張した。1回戦後に国際ボクシング連盟(AIBA)から、頭から突進していく村田選手のスタイルが反則になると指摘されたが、「私が(過去に)たまたまAIBAの常務理事を8年間していた」ことから、五輪当時にも懇意にしている重役がおり、交渉。その結果「この形は反則を取らない」という判断を勝ち取り、「村田選手は準決勝、決勝までいった、といういきさつがあります」という。

怒りの矛先は16年リオ五輪代表の成松大介選手にも及んだ。告発状で、15年に日本スポーツ振興センター(JSC)から交付された助成金240万円を、他2選手と3等分するよう山根会長から命じられたとされるその人だ。山根会長はもともと3選手を助成金対象にしたかったが、「1人しか受け取れない」ことから、将来性を見込んで最も年下の成松選手を選んだという。ところが番組では、

「当時の成松選手はね、あの顔にだまされましたよ。おとなしい顔してるけどね」

とその評価を一転。「だまされた」とはどういうことかと突っ込まれると、

「顔ですよ。おとなしい顔して澄ましとるけどね、やっとることはね、仮面をかぶってますね」

と答えた。

これだけ罵倒しながらも「僕はね、選手の批判はしません」と続け、

「当時、本人から喜んで3等分しますからと言った人間(成松選手)がですよ、それを山根明がこのように指示したとか、自分はやりたくなかったけど怖いからやったとか、そんな怖い話は一切してません」

と自身が不正を命令したことを否定した。

「なぜ進退という話が出るんですか?」

「強化選手なんだから3等分してもええやろと、軽い気持ちで分けました」というが、告発状によれば別の2選手に渡った分の160万円は、その後連盟側から成松選手に支払われている。番組で「良くないことだから戻したと見えるが?」と聞かれた山根会長だが、

「間違いやったと分かりましたので、私は息子から買ってもらった時計を売って、160万円を成松選手に送りました。非常に息子から大事な時計を買ってもらったんですけど」

と、自らお金を工面した「努力」を説明し始めた。加藤さんは「そこじゃないんですよ山根会長...」と苦い顔をした。

大揺れの連盟。告発された多くの疑惑に山根会長が絡んでいると指摘されているが、進退問題については、

「この問題で進退は考えてない。なぜ進退という話が出るんですか? 連盟は何の落ち度もありません」

と断言。会長を継続する意向のようだ。

告発状は全国の連盟関係者333人が名を連ね、JSCや文部科学省、スポーツ庁など複数機関に提出されている。連盟トップでありながら告発内容に対する自身の責任に触れず、現役選手への批判を繰り返した今回の生出演には疑問の声も多い。ツイッターでは、

「保身の為に頑張ってる選手の悪口言うってあり得ないわ 山根おじいちゃんは早く辞めなはれ」
「選手の性格が悪いとか、自分の保身の為であっても言わないよね?」
「自分や自分の身内のためなら、連盟関係者だろうが選手だろうが平気で人格批判までする人なんだな」

といった声が続々とあがっている。

こうした延々と保身に終始するような発言と態度には、

「子どもがそのままおじいちゃんになった感じ」
「ホントおもちゃ買ってもらえなかった子供よな」
「あれだけ音声データが流出しても子供みたいな言い訳出来るのは逆に凄い」

と、幼さも感じられているようだった。