<東京暮らし(2)>「モネ それからの100年」展
<文 中島早苗(東京新聞情報紙「暮らすめいと」編集長)>
今月は東京都心からもほど近い、横浜美術館で開催されている美術展「モネ それからの100年」(9月24日まで)を見に行って来た。
主催は私が編集している情報紙「暮らすめいと」の発行元、東京新聞ほかで、本紙面でも告知を何回かにわたり掲載している。
日本人が大好きなクロード・モネは、美術展が繰り返し開催されてきたし、国内の美術館で作品の幾つかを見ることができるが、今回のモネ展はテーマがちょっとおもしろい。モネが初期から晩年に描いた絵画25点と共に、20世紀及び現在活躍中の国内外の代表的アーティスト26人の作品を展示。モネの革新性と、その後のアーティストに与えた影響、時代や地域、ジャンルを超えたつながりを見出すというのがそのテーマである。
平日午後でも盛況
行ったのは平日の午後だったが、その盛況ぶりに驚く。やっぱり日本人はモネが好きなんだと再認識すると共に、もう一つの理由に気づいた。モネ以外の作家作品も想像以上に充実していて、現代美術展としても十分見ごたえのある内容になっているのだ。
会場で見た中で私が好ましく思い、印象に残った作品をあげてみたい。モネの作品では、「ヴァランジュヴィルの風景」。木の間越しの構図は、モネが葛飾北斎などの浮世絵から学んだものだという。フランス、ジヴェルニーにあるモネの自宅の食堂には、モネが集めた数々の浮世絵が今も飾られているそうだ。
ロンドンの定宿、サヴォイ・ホテルの部屋から眺めた、霧に煙るテムズ河の光景を描いた「チャリング・クロス橋」「テムズ河のチャリング・クロス橋」もいい。
モネ以外の作家作品もよかった。たとえばウィレム・デ・クーニング、中西夏之、湯浅克俊など。ほかにもマーク・ロスコ、モーリス・ルイス、サム・フランシス、ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホルなど、錚々たる作家の作品が並んでいるので、じっくり見ていたらあっという間に1時間半ほど経ってしまった。モネや印象派ファンだけでなく、現代アートファンも満足する展覧会になっている。
最後の空間に掛けられている「睡蓮」の連作を見ていたら、ジヴェルニーのモネの自宅を訪れ、かの庭を見てみたくなった。それぞれのアーティストが作品に込めた命を感じる展覧会である。
東京暮らしの魅力の一つは、都内各所のみならず、今回の横浜みなとみらい地区など、隣県のカルチャーの拠点にアクセスしやすい点である。モネ展のようなクオリティの高い展覧会や、歌舞伎などの舞台、ライブコンサートなど、毎月、毎週バラエティに富んだイベントの選択肢がある。本物のカルチャーに触れられるチャンスの多さが、東京暮らしの大きなメリットなのだ。