by ivanovgood

自我(エゴ)を手放すことに役立つとされる瞑想やヨガを実践した結果、逆に「自分は平均よりも上だ」と感じる自己高揚の感覚が大きくなるという調査結果が発表されました。

Mind-body practices and the self: yoga and meditation do not quiet the ego, but instead boost self-enhancement - ePrints Soton

https://eprints.soton.ac.uk/420273/

Yoga and meditation boost your ego, say psychology researchers - Quartz

https://qz.com/1307380/yoga-and-meditation-boost-your-ego-say-psychology-researchers/

仏教では、瞑想を行うことは自我を乗り越えることに役立つと教えられますが、一方で心理学者のウィリアム・ジェームズは「何かのスキルを訓練することは自己高揚(self-enhancement)を助長する」と主張しています。この「自己高揚」とは、自分が自信があるものについて自惚れることを意味します。ドイツのマンハイム大学が行った研究でもジェームズの説を支持する研究結果が示されています。

そして新たにサウサンプトン大学の研究者らはヨガ生徒93人を対象に15週間にわたる調査を実施し、定期的に自己高揚の感覚を評価しました。この時、評価は「他の平均的なヨガ生徒と比較して自分をどう思うか」ということを被験者に尋る方法、被験者に「私は善業についてよく知っていて、実践した」といった項目について自己評価してもらい自己陶酔傾向を調べる方法、そして被験者に自尊心の高さについて尋ねるという方法に基づいて行われました。

この結果、ヨガを行った後のヨガ生徒たちの自己高揚レベルが、ヨガを行う前24時間よりも著しく高くなったことが判明したとのこと。



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続いて研究者は瞑想の訓練をしている162人の被験者をFacebookの瞑想グループから集めて調査を行ったところ、瞑想についてもヨガがもたらす自己高揚と同様の効果があることが判明しました。つまり、1時間の瞑想を終えた被験者は瞑想を行う前24時間に比べて自己高揚の感覚が高く、「この研究に参加している平均的な生徒に比べて、私は偏見を持っていません」と自分自身を評価する傾向にあったといいます。

また、ウェルビーイングについても「人生に対する満足尺度」「幸福論的ウェルビーイング」という2つの尺度で調査が行われました。幸福論的ウェルビーイングは自主性・環境コントロール・個人的成長・他者との積極的関係・人生の目的などによりウェルビーイングを評価する方法です。すると自己高揚の感覚と共にウェルビーイングの感覚も強まっており、瞑想によって得られるウェルビーイングと自己高揚の間に関連性があることが示されました。

「自我を鎮めることはヨガ哲学や仏教の中心要素ですが、今回の調査結果を踏まえて、再考する必要があります」「さらに、自我を鎮めることは心身の訓練によって得られるウェルビーイングのメリットとして説明されていますが、それとは対照的に、我々の研究では心身の訓練が自己高揚をブーストさせ、ウェルビーイングの感覚も増加させたことが示されました」と研究者は述べています。

ただし、研究の被験者となったヨガ生徒や瞑想を行っていた人が「誤った方法で」実践していた可能性もあるとのこと。ドイツで行われた研究ではヨーロッパにおける仏教実践者は無私の実践に失敗していることが明らかになっています。非仏教徒のヨガ実践者の多くは自己改善や不安の解消にヨガを行っている傾向があるともいわれています。



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