スティーヴン・チョボスキー監督

写真拡大

 映画「ワンダー君は太陽」のプロモーションのため、主演のジェイコブ・トレンブレイさんと来日したスティーヴン・チョボスキー監督。同作は、遺伝子疾患で人とは違う顔に生まれ、27回の顔の手術のせいで自宅学習を続けてきたオギー(トレンブレイさん)が、偏見や好奇の目にさらされながらも成長していく物語です。

 オトナンサー編集部では、チョボスキー監督にインタビューを実施。今回の作品で核にしたことや、“特別な顔”に対する理解などを聞きました。

事前にディスカッションせず

Q.今回の作品で核にした部分は何でしょうか。

チョボスキー監督(以下敬称略)「物語に内在しているエンパシー、共感力、思いやりを持つこと。オギーの物語だけならば脚色しようとは思いませんでした。オギーの姉ヴィア、ヴィアの友達ミランダ、オギーの同級生ジャック・ウィルの物語でもあり、そういうところが情熱を感じさせてくれた理由でもあります」

Q.役を選ぶ時は人柄、次に共通点とおっしゃっていました。トレンブレイさんとオギーの共通点はどんなところですか。

チョボスキー「ジェイコブについては、普通の男でありながら、すごい才能を持っている人物です。パーフェクトなコンビネーションがまさにオギーだと思いませんか。あんなに飛び抜けた才能がありながら、どこにでもいる子どもでもあります」

Q.オギー以外の子役の、オギーの特別な顔に対する理解をどう深めていきましたか。

チョボスキー「そういう話はあえて子どもたちにしませんでした。ホームルームのシーンで、オギーが子どもたちの間を歩いていきます。子どもたちはその時に初めて、メイクをしたジェイコブを見ます。リアルな反応を捉えたいと思ったので、事前にディスカッションしてしまうと、実生活から離れてしまうと思いました」

Q.アドバイザーに、オギーと同じ症状を持つナサニエルの名前がありましたが、彼からのアイデアはありましたか。

チョボスキー「今もジェイコブと友人で、彼に良い影響を与えてくれました。僕もナサニエルにはいろいろ教えてもらいました。ナサニエルと会った時に気付いたのですが、彼は『トリーチャー・コリンズ症候群』で、それについて聞かれることが多いそうです。でも僕は、どんなことをしている時が楽しいのかを聞きたかったです。手術のことを話すのはつらいことだと思うので、彼にとってのリアリティーを考えました」

Q.観客の感想で、心に残っているのはどんなことですか。

チョボスキー「フェイシャルディファレンスの11歳の女の子が『一番のお気に入り作品になりました』と言ってくれたのが、本当にうれしかったです」

Q.この作品が人に与える影響について、期待していることは。

チョボスキー「特に若い方が、親切な心を持ち、必要な人がいたら手を差し伸べる。声を上げる。想像してみてください。全ての子どもに頼れる人がいたら、外の世界と向き合う時に、心を守る術(すべ)を持つことになるのです」

Q.さまざまな格言が出てきますが、一番ハッとした格言は何でしょうか。

チョボスキー「『正しさと親切だったら親切を選ぶ』という言葉。この映画を作ってから、自分の人生に応用してきました。ある意味、人間は100%はできないかもしれませんが、トライすることが重要です。

僕もフラストレーションがたまることがあります。レストランで違うものが出てきたり、渋滞に巻き込まれたりしてイライラすると、妻が『あなたワンダーの監督でしょ? あの格言、覚えている?』と言われます。そこで、我慢我慢、親切な心となります(笑)」

 映画「ワンダー君は太陽」は6月15日から全国公開。