iMac Proにしたら、アプリの品質が向上? ゲーム開発現場の裏側に突撃
iMac Proが発売されて、およそ4ヶ月が経ちました。Mac Proを超えるパワフルなハートウェアスペックによってクリエイティブ業界からの発注も多かったと言います。気になるのはiMac Proを導入した結果、生産性が向上したのかどうか。アウトプットのクオリティが上がったのかどうか、かと思います。
今回、iMac Proを実際に導入したバンダイナムコスタジオにて、ゲームの開発、制作においてiMac Proを活用した結果、どのような結果が得られたのかを取材しました。
齋藤さんの机の上にはiMac Proが。「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」の開発チームは15〜30名ほどで、Macを使う人もいればWindows機を使用する人もいるということです。多くの人はHDディスプレイ2枚使いなのですが、齋藤さんはiMac Proの27インチ、5Kディスプレイのみで十分と言います。「5Kの解像度と27インチのディスプレイサイズがあれば、HDディスプレイ2枚以上の表示領域が確保されるので、これだけで十分ですね」とのこと。iMac Proで行っている作業は、バックグラウンドでUnity(ユニティ)でコーディングされたアプリをプラットフォーム別にBuildさせつつ、表ではJenkins (ジェンキンス) を走らせて検証などをしています。
そんな齋藤さんの足元にはMac miniが4台、積み重なっていました。iMac Pro導入前まではこちらを使って作業していたということで、Mac miniを複数台使用し、Bluild、検証、などの諸作業をやりくりしていたそうです。「Mac miniでBuildしていた時は、最適化した状態で1台あたり20〜25分かかっていたものが、iMac Proでは3台分のBluildを1台で走らせても全部で10分ほどで完了しました。もちろん、iMac Proでなくとも(Windows機であっても)高性能なマシンはあるのですが、iOS版のBuildはMacでないと行えないのでマルチプラットフォームの開発ではMacは欠かせません」
iMac Proのカスタマイズに関しては、Buildの処理などはクロック数が高い方が優位だろうとして、10コア、3GHzのXeon Wモデルを選択。メモリやSSDに関しても、必要とする最大値を積んだということです。
Mac Proなどもある中で一体型のiMac Proを選んだ理由としては、やはり最新機種、新発売の機種を使ってみたいという思いと、(Mac ProやiMacなどすでに導入している機種のスペック、フィードバックを元に)最新、最高の性能を体験したいという興味でした。
実際に導入した結果は、先に示した通り。「動作音も静かで、ファンが全開するようなことはめったにありません。まだまだ余力があるんじゃないかと思います。モバイルの開発では、GPUの性能を活かしきれていないのが残念です。」とiMac Proの性能が現時点で120%発揮されている様子。「他の部署の人が、どう?効率よくなった?って聞きに来ます。」と高性能な新型機が導入されたことに部内でも関心が高いようです。「特にエライ人(プロデューサーなど)が羨ましがってますね(笑)」
高性能マシンを使うとアプリのクオリティが上がる理由
同じくゲームプログラマの佐藤 悠氏。「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」において、進行管理や課金などの実装を担当されました。学生の頃より携帯向けアプリの開発を手がけ、バンダイナムコスタジオ入社後もずっとモバイル一筋と言います。高性能なマシン(iMac Pro)がアプリ開発に果たした役割をお話しいただきました。
今回の「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」においては、国内版、海外版を同時にリリースするために同じバージョンでも複数のBuildが作られます。プラットフォームごと、各国版ごとにBuildして検証するということを繰り返すので、一つのBuildが10分で完了するというのは非常に効率が上がります。このゲームの売りはバトルの爽快感にもあると思うんですが、モーションとかエフェクトなどの演出においても、テストプレイで「ちょっと違うな?」と思った部分を作り直したり修正しています。Build作業に時間がかかるとチェックの頻度も下がりますが、10分程度であればその場で待ってすぐに確認してリテイクの指示を出すというサイクルも維持できて、ブラッシュアップ作業がはかどりました。
結果としてリテイクの数が増える=Build数も増えることになりましたが、その分良いものに仕上がったという自負があります。ローンチの時期は決まっているので、開発が前倒しで進んでもその分クオリティを上げるためにリソースが費やされます。逆に言えば、ローンチ時期が決まっているのである程度妥協してリリースしなければならない事も時にはあるのですが、「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」においては満足できる仕上がりでリリースすることができました。
AndroidやiPhone(iOSデバイス)では、CPUやメモリなど端末、OSによって挙動が異なるので、どの端末でプレイしても同じような感覚で遊べるようチューニングが重要になります。今回もかなりの時間をチューニングに費やしています。そういう意味でもiMac ProによってBuild時間が短縮できたのは意義があったと思います。
一般的にアプリがリリースされると開発チームは縮小される場合も多いのですが、「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」に関しては、初動が好評(好調)だったという事もあり、規模を維持して新キャラやイベントなどの開発も行っています。引き続き、末長くお楽しみください。
今回の取材を通して、iMac Proのようなハイエンドマシンは、CGバリバリのキャラがヌルヌル動くような開発ではなく、スマートフォンアプリの開発にも貢献しているとわかりました。また、いつも遊んでいるスマホアプリの開発現場を垣間見れたのは興味深かったです。ゲームが好きで好きでゲーム会社に入社したという人々が、より楽しめるようにとゲームを開発している姿が印象的でした。開発者の皆さんの情熱と、それを助けるマシンスペックがあってこそのハイクオリティのゲームだと言えるでしょう。
©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
今回、iMac Proを実際に導入したバンダイナムコスタジオにて、ゲームの開発、制作においてiMac Proを活用した結果、どのような結果が得られたのかを取材しました。
「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」は、開発過程でiMac Proが使用されたタイトルで、iMac Pro導入後初のアプリとのこと。iMac Proを使用したことで、昨今の他アプリと比べても高いクオリティに仕上がったと言います。高性能のマシンを使用したからクオリティが上がる。そう聞けば当たり前のようにも思えますが、「つまり...どういうことだってばよ?」ってことで、実際に制作に携わった方にお話を聞きました。
コア数よりもクロック数を重視したカスタマイズでBuild作業を高速化
お話をお伺いしたのは、バンダイナムコスタジオ ゲームプログラマの齋藤 淳氏。「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」において、アプリのビルドを含む開発環境の整備を担当されました。齋藤さんは、小さい頃からパソコンに触れて育ち、雑誌に収録されていたコードを打ち込んでゲームを遊んでいたといいます。好きなゲームはリッジレーサー。ご自身もiPhone 3GSからのiPhoneユーザでもあります。
齋藤さんの机の上にはiMac Proが。「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」の開発チームは15〜30名ほどで、Macを使う人もいればWindows機を使用する人もいるということです。多くの人はHDディスプレイ2枚使いなのですが、齋藤さんはiMac Proの27インチ、5Kディスプレイのみで十分と言います。「5Kの解像度と27インチのディスプレイサイズがあれば、HDディスプレイ2枚以上の表示領域が確保されるので、これだけで十分ですね」とのこと。iMac Proで行っている作業は、バックグラウンドでUnity(ユニティ)でコーディングされたアプリをプラットフォーム別にBuildさせつつ、表ではJenkins (ジェンキンス) を走らせて検証などをしています。
そんな齋藤さんの足元にはMac miniが4台、積み重なっていました。iMac Pro導入前まではこちらを使って作業していたということで、Mac miniを複数台使用し、Bluild、検証、などの諸作業をやりくりしていたそうです。「Mac miniでBuildしていた時は、最適化した状態で1台あたり20〜25分かかっていたものが、iMac Proでは3台分のBluildを1台で走らせても全部で10分ほどで完了しました。もちろん、iMac Proでなくとも(Windows機であっても)高性能なマシンはあるのですが、iOS版のBuildはMacでないと行えないのでマルチプラットフォームの開発ではMacは欠かせません」
iMac Proのカスタマイズに関しては、Buildの処理などはクロック数が高い方が優位だろうとして、10コア、3GHzのXeon Wモデルを選択。メモリやSSDに関しても、必要とする最大値を積んだということです。
Mac Proなどもある中で一体型のiMac Proを選んだ理由としては、やはり最新機種、新発売の機種を使ってみたいという思いと、(Mac ProやiMacなどすでに導入している機種のスペック、フィードバックを元に)最新、最高の性能を体験したいという興味でした。
実際に導入した結果は、先に示した通り。「動作音も静かで、ファンが全開するようなことはめったにありません。まだまだ余力があるんじゃないかと思います。モバイルの開発では、GPUの性能を活かしきれていないのが残念です。」とiMac Proの性能が現時点で120%発揮されている様子。「他の部署の人が、どう?効率よくなった?って聞きに来ます。」と高性能な新型機が導入されたことに部内でも関心が高いようです。「特にエライ人(プロデューサーなど)が羨ましがってますね(笑)」
高性能マシンを使うとアプリのクオリティが上がる理由
同じくゲームプログラマの佐藤 悠氏。「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」において、進行管理や課金などの実装を担当されました。学生の頃より携帯向けアプリの開発を手がけ、バンダイナムコスタジオ入社後もずっとモバイル一筋と言います。高性能なマシン(iMac Pro)がアプリ開発に果たした役割をお話しいただきました。
今回の「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」においては、国内版、海外版を同時にリリースするために同じバージョンでも複数のBuildが作られます。プラットフォームごと、各国版ごとにBuildして検証するということを繰り返すので、一つのBuildが10分で完了するというのは非常に効率が上がります。このゲームの売りはバトルの爽快感にもあると思うんですが、モーションとかエフェクトなどの演出においても、テストプレイで「ちょっと違うな?」と思った部分を作り直したり修正しています。Build作業に時間がかかるとチェックの頻度も下がりますが、10分程度であればその場で待ってすぐに確認してリテイクの指示を出すというサイクルも維持できて、ブラッシュアップ作業がはかどりました。
結果としてリテイクの数が増える=Build数も増えることになりましたが、その分良いものに仕上がったという自負があります。ローンチの時期は決まっているので、開発が前倒しで進んでもその分クオリティを上げるためにリソースが費やされます。逆に言えば、ローンチ時期が決まっているのである程度妥協してリリースしなければならない事も時にはあるのですが、「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」においては満足できる仕上がりでリリースすることができました。
AndroidやiPhone(iOSデバイス)では、CPUやメモリなど端末、OSによって挙動が異なるので、どの端末でプレイしても同じような感覚で遊べるようチューニングが重要になります。今回もかなりの時間をチューニングに費やしています。そういう意味でもiMac ProによってBuild時間が短縮できたのは意義があったと思います。
一般的にアプリがリリースされると開発チームは縮小される場合も多いのですが、「NARUTO X BORUTO 忍者BORUTAGE」に関しては、初動が好評(好調)だったという事もあり、規模を維持して新キャラやイベントなどの開発も行っています。引き続き、末長くお楽しみください。
今回の取材を通して、iMac Proのようなハイエンドマシンは、CGバリバリのキャラがヌルヌル動くような開発ではなく、スマートフォンアプリの開発にも貢献しているとわかりました。また、いつも遊んでいるスマホアプリの開発現場を垣間見れたのは興味深かったです。ゲームが好きで好きでゲーム会社に入社したという人々が、より楽しめるようにとゲームを開発している姿が印象的でした。開発者の皆さんの情熱と、それを助けるマシンスペックがあってこそのハイクオリティのゲームだと言えるでしょう。
©岸本斉史 スコット/集英社・テレビ東京・ぴえろ ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.