ギプス風装具をつけた香川真司「1カ月遅かったらW杯は無理だった」
3月8日に行なわれたヨーロッパリーグ(EL)ドルトムント対ザルツブルク戦の試合後、久々に公の場に現れた香川真司の姿には、少なからず驚かされた。
2月10日のハンブルガー戦で負傷後、チームを離脱している香川真司
南野拓実と言葉をかわすためにピッチに出てきた香川の左足首には、大がかりな固定装具が装着されていた。従来のギプスとはちょっと違う、最新のギプスといえばいいのだろうか。プラスチックと緩衝材でできた取り外し可能なタイプの装具で、がっちりと固定されている。それでも左足には完全に体重を乗せることができないのだろう。バランスをとるように慎重に歩いていた。
ケガの状態や復帰に関しての情報といえば、負傷直後のアジアチャンピオンズリーグの試合会場で、西野朗日本サッカー協会技術委員長が「2、3週間かかるらしい」と漏らしたことぐらい。地元記者たちもほとほと困り果てていた。
だが、3月8日に本人が姿を見せると、翌日にはペーター・シュテーガー監督が香川について口を開いた。11日のフランクフルト戦を前にした定例会見の席上、「あと2、3週間かかるが、それよりも早く回復することを望んでいる。いくつかのケガを併発していた」と明かしたのだ。
そして11日のフランクフルト戦の後、ついに香川がミックスゾーンに姿を現した。
対戦相手のフランクフルトには長谷部誠もいる。そこに現れれば、ドイツ人記者だけでなく、日本の報道関係者の目にもさらされ、コメントを求められることになる。もちろんコメントを断ることは可能だし、実際に、過去の不調時などにはノーコメントで通すこともあった。
だが、この日の香川はここまでケガに関する情報が漏れてこなかったのが嘘のように、堂々とメディアに対応した。
――長谷部さんと会って話すのは久しぶりですか?
「そうですね。かなり久しぶりですね」
――どんな話を?
「いや、別に。今のチームと代表と(について)」
――ケガの状態は?
「報道通りですね。(あと)2、3週間くらいです」
――固定しているが、固定は最初からしていた?
「最初していて、復帰の段階でちょっとそこで炎症が見られて、痛みがなかなか減らなかったのでMRIを撮りにいき、それでこうなったという順番です」
復帰のめどが立ったからなのか、3月下旬の日本代表の合宿には参加できないと腹をくくったからなのか、香川は淡々とケガについて説明した。そして代表についても、心境を明かす。
――3月の代表合宿に間に合わせたかったのでは?
「もちろん、それを視野に入れてやっていましたけど、こればっかりはしょうがないですし。ここで長引いてもしょうがないので、ここでしっかり治して、4月中に復帰できたらいいんじゃないかなと思います」
――自分の中に焦りは?
「代表でプレーできるチャンスが少なかったなかで、ここで出られないのはすごく残念ですけど、自分の頭の中では切り替えができているし、あと4月、5月といいプレーを見せて、しっかりと調整していきたいなと思います」
――調子もフィーリングもよかったなかでの離脱でしたが?
「そうですね。これもひとつの教訓というわけではないですけど、いくら自分の中で注意したとしても、起こりうることですし。ただそれ以上にもっと気を引き締めなければいけないし、逆にこの時期でよかったです。ネイマールじゃないですけど、これが1カ月でも遅れていたりしたら、もうワールドカップは確実に無理だった」
――今の治療の段階は?
「これも1週間、固定なので、あと数日で外すと思います」
――炎症がなくなれば、強化する段階に入りますか?
「そうですね、普通のリハビリになります」
3月11日は、東日本大震災からちょうど7年が経った日でもあった。
「今も被災で苦しんでいる人たちが数万人いるというのは見ているので、そういうことを頭に入れて、何ができるかを、それぞれが考えながら、思いながら、やれればいいかなと思います。僕も去年4月の爆弾事件があったりして、いつ自分の身が不幸に陥るかわからない。あらためて生きられること、サッカーできることに感謝したいです。
ケガをしているので、そのフラストレーションはあります。サッカーができる日常が当たり前でしたけど、こういう当たり前じゃない生活になって、やはり日々に感謝したいと思いますし、日々、考えさせられる感じはしますね」
複雑な思いを率直に明かした香川。まず目指すのは実戦復帰だ。そしてその後の代表復帰、ワールドカップメンバー入りということになる。今できることは、焦らず、しっかりと調整してその日を迎えるだけだろう。
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