LIXILが12月に都内で披露したIoTハウス

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 IoT(モノのインターネット)技術の活用がさまざまな分野で進む中、住宅分野でもIoT化によって快適で安全・安心な住まいを実現しようとする動きが目立つ。クラウドコンピューティングや人工知能(AI)の発達により、膨大なデータの収集と高度な解析が可能になった。家電や建材、太陽光発電システムなどを単にネットワーク化するだけでなく、複数の機器を連動させることもできるようになってきた。米アマゾンの「エコー」やグーグルの「グーグルホーム」など、AIスピーカーの相次ぐ登場で、一般消費者もIoT化の利点がイメージしやすくなり、IoTを活用したサービスを商用化する動きも加速している。各社の取り組みを追った。

大和ハウス工業/できないことをサポート
 大和ハウス工業は主力の一戸建て住宅「ジーヴォΣ(シグマ)」にIoTサービスを搭載し、2018年上期に発売する予定。グーグルホームと家電コントローラー、ドアなどに取り付けるセンサー、見守り用のカメラなどをパッケージ化。さらにユーザーの希望に応じて電動カーテンや照明、テレビなどを音声認識で操作できるようセッティングして提供する。同社が機器同士の安全な連携を担保し、アフターサービスも含めて提供する。

 サービスの特徴は生活者視点で暮らしのシーンをとらえ、利便性を向上することに主眼を置いた点。起床時の天候に応じて自動的にカーテンが開いたり照明が付いたり、グーグルホームに「おやすみ」と話しかけると自動でテレビが消えて消灯する、といった具合だ。

 とはいえ、「やみくもに利便性向上を優先させるわけではない」(有吉善則取締役常務執行役員)。人ができることを機械にさせるだけでは意味がなく、「(高齢化などにより)住む人ができないこと、できなくなっていくことをサポートする」考えを示す。

 現在は大阪府吹田市などの住宅展示場で、グーグルホームを活用したIoT住宅の実証実験を進めている。来場者にサービスを体感してもらい、使いやすさなどを検証し、サービス拡充に生かす。大友浩嗣取締役常務執行役員は「家電の制御だけでなく、住まいのエネルギー消費の最適化を含めた『IoT住宅』を考えている」と将来像を示す。

LIXIL・レオパレス21/留守宅見守り・スマホで施錠&解錠
 LIXILは玄関ドアや窓シャッターなどの建材とAIスピーカーを連携させるIoTシステムを18年4月に発売する。センサーや音声認識による機器類の自動制御、留守宅の見守り、建材や家電の遠隔操作などさまざまな機能で快適な暮らしを支援する。

 同社は09年から人やモノ、家、社会がネットワークで結ばれた「住生活の未来」に関する研究に着手。13年には既存の一戸建て住宅を改修し、実証実験を重ねてきた。将来的には、トイレで人が倒れたのを検知して自動的に救急車を呼ぶ仕組みなど、地域と連携したサービスの提供も視野に入れている。

 IoT化の流れは賃貸アパートにも及ぶ。レオパレス21はグラモ(東京都豊島区)と組み、グラモの家電制御機器をベースにした「レオリモコン」や、スマートロック「レオロック」を新築アパートに順次搭載している。

 レオリモコンは住戸内に標準で備え付けられている家電などをスマートフォンから遠隔操作できる。レオロックはテンキーによる暗証番号入力のほか、スマートフォンによる施錠・解錠が可能。遠隔から暗証番号を割り振れるため、入居者変更の際もカギの受け渡しに手間取ることがなくなる。両機器の搭載により、施錠・解錠と家電や照明の制御を連動させることも可能だ。

 1月にはグラモが開発中のAIスピーカーを新築全戸に標準装備する予定。賃貸アパートをIoT化する端末の設置数としては国内最大となる見通しだ。