アーセナルのアーセン・ベンゲル監督【写真:Getty Images】

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「日本にいた時にスモウを観戦した」…アーセナルの世界的名将が提言、その真意は?

 サッカーのイングランド・プレミアリーグ、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督は1995年から96年途中までJリーグの名古屋グランパスの指揮を執り、日本代表監督候補にも度々名前が挙がる親日家としても知られる。名門の在任21年を数える名将はフットボール界に「スモウから学べ」と珍提言している。果たして、その真意は――。

「マンチェスター・ダービーのトンネルでの乱闘後、フットボールは相撲から学ぶべきだ、とアーセン・ベンゲルは訴える」と特集したのは、英地元紙「デイリー・ミラー」だ。

 記事によると、ベンゲル監督は記者会見で「ビッグゲームで敗れた後に、対戦相手が100%のセレブレーションをしているのを目の当たりにすることは受け入れることが難しいことだ」とイングランドサッカー界を震撼させた“ある事件”に触れ、こう語った。

 10日に行われたマンチェスター・シティ―マンチェスター・ユナイテッドのダービーマッチで、敵地だったシティが2-1で勝利を収めた。試合後、シティの選手は宿敵を倒した高揚感からドレッシングルームで喜びを爆発させたが、この後に問題が起こった。

 宿敵の行動に怒ったユナイテッドのモウリーニョ監督は相手のロッカールームに乗り込み、GKエデルソンとの口論が白熱、さらに両軍選手、スタッフ20人が入り乱れる乱闘に発展したと英メディアで報じられている。モウリーニョ監督はペットボトルが当たり、牛乳をかけられるなどの被害を受け、シティのアルテタコーチはパンチを眉間に受けて流血。警察が介入する大事になった。

 冒頭のベンゲル監督の発言は、歓喜を見せつけられる敗者の気持ちを思いやった格好だ。記事によると、名古屋監督時代に観戦することもあった日本の国技を例に挙げ、リスペクトの精神を説いている。

「スモウはどちらが勝者かわからない」…ベンゲル監督が感じる日本文化の美徳

「だからこそ、私は日本にいた時にスモウを観戦したんだ。なぜなら、相撲の世界では、どちらが勝者なのかわからない。相手への尊敬の念から勝者は喜びを表現しないんだ。それは、お互いを思いやる文化的な奥深さを示しているんだよ」

 日本古来の神事でもある相撲は、相手への尊敬などからガッツポーズを含め、土俵上で喜びを表現することは禁じられている。さらに、世界的名将は「横綱」について語り、フットボールの世界でも相手を思いやることが大事だと強調した。

「横綱になるということはトップ中のトップになるということだ。最低でも6場所のうち2場所で優勝しなければいけない。審議委員会の前で評価されることは非常に興味深いことなんだ。達人の中の達人となる横綱になるためには、倫理の部分での判断力も持ち合わせていなければいけない。正しい振る舞いができなければ、優勝したとしても横綱にはなれないんだ」

 強さだけではなく、品格が求められる横綱を例に挙げ、敵地で喜びを爆発させたリーグ首位のシティを諌めているベンゲル監督。昨今は日馬富士の暴行問題で揺れているが、指揮官にとって、相撲が本来持つ「敬意と思いやり」は重要なようだ。

「誰もがどんな時でも学ぶことができる。世界の色々な場所で生活することの楽しみは、その文化を学べるということなんだ」

 相撲と日本文化の美徳を称賛した名将は、フットボール界に相撲から学ぶように心から提言をしていた。