西武・愛斗【写真:(C)PLM】

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花咲徳栄高時代には甲子園出場、愛斗が見せる飛躍的な成長

 西武のファンの中には、本拠地・埼玉県の高校野球には一家言を持っているという方も多いのではないだろうか。強豪ひしめく埼玉の高校野球界で名を挙げて、埼玉西武から指名を受けた選手も少なくないため、地元のファンはそんな「生え抜き」選手を、特に親しみを持って迎え入れていることだろう。

 現役に限ってみても、豊田が浦和学院高校、斉藤が春日部共栄高校、木村文が埼玉栄高校を経て、埼玉西武の一員になっている。そして今季高卒2年目のシーズンを終えた愛斗もまた、埼玉県勢で初めて夏の甲子園を制した花咲徳栄高校の出身だ。

 2015年の夏の甲子園、3年生の愛斗は「4番・中堅手」として花咲徳栄打線を牽引し、初戦でランニング2ランを放つなど大きな話題を呼ぶ。残念ながら、小笠原(現・中日)と吉田凌(現・オリックス)を擁する東海大相模高校に準々決勝で敗れるものの、3試合で打率.500、長打率.857という圧巻の成績を残し、守備でも躍動。同年のドラフトで「走・攻・守バランスの取れた将来性豊かな選手」と評され、埼玉西武から4位指名を受ける。

 スラッガーの育成には定評のある埼玉西武の環境下、愛斗は1年目からファームで74試合に出場した。そして2年目の今季、早々と大器の片鱗を見せ始める。一般的に、高卒の野手が1人立ちするには投手に比べて時間がかかると言われるが、イースタン・リーグで43試合に出場し、53安打8本塁打25打点、打率.358という好成績。長打率.615は、高卒2年目の野手としては驚異的な数字だ。

 6月15日には待望の1軍昇格を果たす。力みもあってかプロ初安打はならなかったものの、1軍の大歓声を体感できたことはこれからの大きなモチベーションとなるだろう。

高校の後輩・西川愛也も加入で良い刺激に

 そんな愛斗の持ち味は、何といっても圧倒的な身体能力だ。50メートル6秒台の俊足と遠投120メートルの強肩を誇り、自分の背にバットが触れるほど大きくフォロースルーを取る打撃フォームは、左右は異なるが先輩の森や浅村を彷彿とさせる。もちろん、まだまだ粗さが目立つものの、豪快なフルスイングはスラッガー候補生の雰囲気を醸し、「走・攻・守」のいずれをとっても大きな可能性を感じさせてくれる選手だ。

 今年のドラフトでは、愛斗の花咲徳栄高校の後輩・西川愛也が埼玉西武から2位指名を受けた。西川は愛斗が3年生の頃の1年生。奇しくも同じ大阪府堺市出身で、中学時代も同じ少年野球チームに所属していた。ともに外野手で、名前には同じ「愛」。今季終盤に靭帯を痛めた愛斗は、何かと縁のある後輩の仲間入りを歓迎しつつも、ポジションを争う相手として意識する。まだ若く可能性に満ちた2選手にとっては、お互いの存在が良い刺激になることは間違いないだろう。

 埼玉西武の外野のポジションは、秋山を筆頭に主力がひしめく激戦区だ。そこに毎年のように有望なルーキーが絡んでくる。しかし愛斗が、それらに食い込んでいけるだけの潜在能力を持っていることはファームですでに証明済み。来季は1軍の舞台で完全覚醒を果たし、一流への階段を駆け上りたい。1年ごとに、加速度的にそのスケールを増していく愛斗の成長を楽しみにしている。(「パ・リーグ インサイト」吉田貴)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)