燃費や環境への配慮が主な理由

 最近はスペアタイヤを搭載するクルマがほとんど見当たらない。現行型では軽自動車でも全車スペアタイヤレス仕様で、パンクに対しては応急修理セットで対処している場合が多い。

 その理由として第一に挙げられるのは「スペアタイヤは重くてかさ張るから」で、荷室の容積や燃費などのスペックを少しでも良くするためには、スペアタイヤよりパンク修理キットを積むほうが有利となる。

 また、スペアタイヤはそのほとんどが一度も使われることなく廃棄されているため、環境への配慮という観点からもあまりよろしくない。女性や高齢者ドライバーにとっては交換作業の実施がほぼ不可能に近いという現実を鑑みても、現実的にあまり有効な装備ではなくなっている。JAFや保険会社によるロードサービス網の充実や、携帯電話の電波が届くエリアの拡大なども、スペアタイヤが撤廃される方向にある理由のひとつだろう。

 パンク応急修理キットも、サイドウォールなどトレッド面以外の損傷には対応できなかったり、やはり使い方がよくわからなかったり、使用期限切れで買い換える必要があるなどの問題点も多々あるが、先進国の舗装路でのパンクは、釘やネジなどの小さな金属片がトレッド面に刺さることによるものがほとんどなので、多くの場合はパンク応急修理キットで対応できている。

一方で根強くスペアタイヤを標準装備するジャンルもある!

 それでもなお、いまだにスペアタイヤを装備するクルマもじつは少なくはない。その多くはセダンで、とくに中型クラス以下のモデルで装備するクルマが目立つ。国産の中型クラス以下のセダンを買う人は高齢の保守的な考え方を持つ人が多いということが理由だ。

 たとえばプレミオやシルフィ、インプレッサG4など、小型の国産セダンでは今でもスペアタイヤを標準装備としているモデルが多い。とくにスバルは「セダンユーザーにはスペアタイヤを装備するのが望ましい」と考えているようで、同じインプレッサでもハッチバック版の方はパンク応急修理キットを積む。

 上級モデルを見ても、ワゴンのレヴォーグはパンク応急修理キットを積んでいるのに、セダンのWRX STIやS4はスペアタイヤを搭載。スバルの現行型のセダンでスペアタイヤを搭載していないのはレガシィB4だけだ。

 セダン以外で今でもスペアタイヤを搭載しているのはSUV。ランドクルーザー系などの本格派オフローダーはもちろん、エクストレイルやフォレスターなど、悪路走破性能の高さをウリとするSUVは床下にスペアタイヤを搭載している。ヴェゼルやハリアーなど雰囲気重視の都市型SUVはパンク応急修理キットを積んでおり、どちらを積むかはコンセプトごとに決めているようだ。

 なお、国産車の場合はパンク応急修理キット搭載モデルでもオプションでスペアタイヤが選べるので、スペアタイヤ好き諸兄も心配はいらない。車種によってはオプション代が3〜4万円と高いものもあるが、ネットオークションなどで安く中古品を手に入れることもできる。