6万強を動員したものの、やはりウェンブリーは満員札止めの印象が強いだけに……。イングランド代表の守護神ハート(手前)も少なからず違和感を覚えていたようだ。(C)REUTERS/AFLO

写真拡大

 ウイークデイのナイター開催とはいえ、ワールドカップ出場が決まるかどうかの大一番だっただけに、チームには少なからず動揺が走ったようだ。
 
 ロシア・ワールドカップ欧州予選のグループF、イングランドは本拠地ウェンブリーにスロベニアを迎えた。勝てば6大会連続15回目のワールドカップ出場が文句なしで決まり、引き分けでも、裏カードで2位スロバキアが勝利できなければ本大会行きを確定できる。言わば、ディサイシブ(決定的)な一戦だった。
 
 にもかかわらず、キックオフ直前になっても客足は伸びず、上段スタンドにはほとんど人影が見られない。守護神のジョー・ハートは『ESPN』のインタビューに応え、「入場した時は正直、あれ? なんでこんなに少ないんだろ、とは思った。でも試合が始まれば徐々に増えるはずだと、そう信じていたんだけどね」と苦笑い。なんと最終的な動員数は、9万のキャパシティーに対して6万1598人。そこかしこに空席が目立った。どの会場も大入りで賑わうプレミアリーグとは大違いだ。
 
 今予選におけるここまでのホーム動員数は、2節マルタ戦が8万1781人、4節スコットランド戦が8万7258人、5節リトアニア戦が7万6907人。ここまではまずまずだが、8節スロバキア戦で6万7823人と落ち込み、初めて7万人を割り込んでいた。今回の「6万1598人」はウェンブリーがリオープンした2007年以降の公式戦で、文句なしのワーストだ。
 
 ほぼワールドカップ出場が決まっていたとはいえ、代表チームとFA(イングランド・サッカー協会)にとってはショッキングな出来事だろう。昨今は代表チームへの関心度が世界規模で低下しており、プレミアリーグの隆盛が極まるイングランドでもその傾向が強まっている。ガレス・サウスゲイト監督が志向するダイレクト志向の強いスタイルは人気がなく、「退屈だ」「娯楽性に乏しい」との声が相次いでいるのも事実だ。
 
 ハートはこう振り返る。
 
「やっぱりいつもとは違う雰囲気だったよ。ここ(ウェンブリー)でここまで少なかったのは……どうかな。もう少し来場してもらえると思っていたから残念だった。でも、難しいゲームをしっかりモノにできたんでね。満足だよ」
 
 試合は後半アディショナルタイムにハリー・ケイン主将が劇的弾を決めて1-0の勝利。見事に本大会行きを決めた。ハートも再三の好セーブで快勝の立役者となったのだが、今シーズンは新天地のウェストハム・ユナイテッドや代表での低調なパフォーマンスが続き、なにかと批判の矢面に立たされてきた。
 
「そんなの僕が気にするタイプだと思う? 考え込むならもっとほかのデカい悩みだよ。どこでも仲間は僕に寄り添ってくれるし、僕も彼らを全面的にバックアップする。なんにも問題はないよ」
 
 出場決定でホッとしたのか、アドレナリンを出し尽くしたのか、試合後のハートは終始ニコヤカだった。