宇野昌磨【写真:Getty Images】

写真拡大

米メディアのシカゴ密着で語った「尊敬する人」羽生への想い「スケートへの姿勢が好き」

 フィギュアスケート界の新シーズンが、いよいよ本格的に幕を開けようとしている。平昌五輪が控えるシーズン、66年ぶりの連覇を目指す羽生結弦(ANA)とともに日本で注目されるのは、宇野昌磨(中京大)だ。米スケート専門メディア「アイスネットワーク」は8月に米シカゴで練習した宇野に密着。羽生について「尊敬する人」と語り、「誰かを追いかけるのは楽」と将来は王者の重圧を受け継ぐ存在になる決意を明かしている。

 記事によると、宇野は8月に3週間、米国で過ごしていた。本人が屋外が好きではないという理由から、シカゴ西部の屋内スケート場で、昨季も師事して「とても早く自分が上達したので驚いた」というウクライナ出身のウリアシェフコーチの下、トレーニングに励んだ。

「彼の踏み切るタイミングはほぼ毎回ダメだ。じっとして、長く滑りすぎてから踏み切っている」

 厳しい指摘もしたウリアシェフコーチによると、3週間の滞在中に4回転ルッツと4回転サルコーを跳んだという。さらに、今季はフリーで5つの4回転ジャンプを取り入れる予定だとしている。

「新・4回転時代」に突入し、年々ハイレベル化している男子フィギュア界だが、記事では「これが4回転という参加料が年々上がるこの時代にトップ男子スケーターに求められるものなのだ」と記している。

ウリアシェフコーチ「依頼があったときは驚いた」…それでも、指導を引き受けたワケ

 宇野にとって、ウリアシェフコーチとの相性は良好のようだ。

 記事では2年前から4回転ループに挑戦を始め、その模様を収めた映像を同コーチに見せてから、2人はジャンプを磨き上げ始めたと記述。そして、昨季の四大陸選手権で+2.43のGOEスコアを得たことを紹介している。

 さらに、両氏の出会いについても言及。宇野のコーチを務めていた樋口美穂子氏が、ウリアシェフが指導していた女子のグレーシー・ゴールド(米国)のジャンプに魅せられ、宇野が教えを受けたらどうなるか見てみたいというきっかけで連絡を取り、昨季4度、師事を仰いだとしている。

「彼らから依頼があったときは、それは驚いたよ」と同コーチは当時の心境を明かした上で、その理由について「私は米国や世界でトップレベルのコーチというわけではないからね」と明かし、世界最高の若手スケーターをコーチすることにナーバスになったという。

 それでも、旧友であるダラスフィギュアスケートクラブのコーチ、アレクセイ・レトフ氏の後押しを受け、依頼を受ける決断を下した。一方、反対に宇野もウリアシェフの期待が不安を覚えていたという。

王者・羽生へ明かした想いと覚悟「将来はその重圧を引き受ける一人になれたら」

 記事では「最初はそれぞれの練習に全力を出していて、身体的に疲れました」と話した宇野は「今はコントロールする方法を知っていて、トレーニングをもっと調節しています」と手応えを語り、再びウリアシェフコーチの下に舞い戻った理由をこう明かしている。

「いい結果を出すことができたので、今シーズンも戻ってきて、よりたくさんのことを身につけたかった」

 恩師との出会いによって、昨季は著しい躍進を見せた。世界選手権(ヘルシンキ)では2位に入り、表彰台に上がった。その時、真ん中に立っていたのが、羽生だった。

 記事では、運命の五輪シーズン、羽生の2番手の立ち位置でスタートするとし、宇野も絶対王者への想いを語っている。

「尊敬する人」と表現した19歳は「スケートへの姿勢が好きなんです。もちろん、偉大なジャンパーですが、僕は彼をバランスのとれたオールラウンド・スケーターだと思っています」と理由を明かし、将来は羽生の後を受け継ぐ覚悟を述べた。

「誰かを追いかける、常に上にいる人を持つのは精神的に楽です。でも、恐らく僕は彼よりも長くスケートを続けるでしょうから、将来はそのようなプレッシャーを引き受ける一人になれたらと思います」

今季初戦は9月14日ロンバルディア杯、勝負の1年の目標「最終的なゴールはもっと先」

 宇野の初戦は9月14日開幕のロンバルディア杯(イタリア)。果たして、勝負の1年をどう挑んでいくのか。

「今シーズンは特定の目標を持ってはいません。最終的なゴールは今シーズンではなく、もっと先なので」

 こう語ったという宇野。一方、ウリアシェフコーチは19歳の人間性について称える。

「自分が本当に好感を持つ人々と会い、彼らを助けることの全てが幸せになることがある。英語が喋れなくても、彼の人間性はそれ。もし、自分の機嫌が悪い時も彼が機嫌を上向かせてくれる。彼はいい天気のように明るい」

 そして、記事はこのように結んでいる。

「ウノが外に出る必要がないのは、このためかもしれない。彼は自分自身で氷上に太陽と温かみをもたらすのだ」