婚約報道をする5.17の朝日新聞紙面より

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眞子さまの「婚約相手」の小室圭さんが注目されている。その魅力をさぐると、出身大学であるICUの校風やカリキュラムに行き当たった。ICUは、近年、企業の人事部からの人気も高まっているという。なぜなのか――。

■眞子さま、小室圭さんの出身大学「ICU」とは?

宮内庁は5月25日、秋篠宮ご夫妻の長女・眞子さま(25)が婚約される見通しであると発表しました。お相手は、横浜市在住の小室圭さん(25)。国際基督教大学(ICU=International Christian University)の同級生です。

婚約内定をいちはやく報じたNHKによれば、小室さんは音楽大学の付属小学校を卒業後、中学・高校はインターナショナルスクールに通学。英語が堪能で、ICUを卒業した後は、メガバンクに勤務。現在は、一橋大大学院国際企業戦略研究科(専攻は経営法務)に通いながら、東京都中央区の法律事務所に勤務しているそうです。

また、18歳で神奈川県藤沢市の「湘南江の島 海の女王&海の王子コンテスト」に応募し、「海の王子」に選ばれています。20歳となった2012年に、渋谷区の飲食店で開かれたICU主催の「留学に関する意見交換会」の席で同い年の眞子さまと出会い、現在に至るとのことです。

なぜICU男子は女子にモテるのか?

さて、こうした報道の余波で、僕の母校(2012年卒)のICUが注目されています。眞子さま、小室さんと同じ時期に在籍していたため、周囲からあれこれと聞かれることが増えました。

特に、女性からは、皇族のハートを射止めた小室さんを筆頭とする「ICU男子」についての質問をよくうけます。そこで大変僭越ながら、OB目線でICUの特徴を少し考察してみたいと思います。

題して、「なぜICU男子はモテるのか?」。対女性、対企業の2つの側面でアプローチしてみます。

■なぜ、眞子さまは小室さんを好きになったのか?

正直に言えば、ICUでは、男子というだけでそこそこモテます。学内では「ICUマジック」という呼び方があるぐらいです。これは、ICUの男子は、ICU外の男子に比べて1段階イケメンに見える、という意味の言葉です。ICUマジックにかかると、普通の子→イケメン、イケメン→神、に格上げされるというのです。

ICUの男女比は4:6。英語の上級クラスになると、7〜8割が女性ということもあります。そうした男女比の偏りが、ICUマジックを生み出している背景だといえそうです。

小室さんが、このICUマジックの効果を得たのかどうかはわかりませんが、まっとうな「交際相手」として認められたポイントのひとつとして考えられるのが、ICUのカリキュラムです。

ICUは「文系で日本一忙しい」といわれるほど、授業では多くの課題が出ます。課題をこなすために、平日の夜に図書館へこもる、ということも頻繁にあります。特に大学1〜2年次の忙しさは、定時で帰社できるようなビジネスパーソンを軽く超えます。このためICU 生の間には、「ともに頑張っている」という連帯感が生まれやすいのです。

ICUの必須カリキュラムの特徴のひとつに、ELA(English for Liberal Arts Program)と呼ばれる英語教育プログラムがあります。英語の習熟度別にクラス分けされ、集中教育を受けるため、英語ができない人ほど英語漬けになるシステムとなっています。これがとても大変なのです。

クラスメートは「セクメ」。男女間でファーストネームで呼び合う

英語論文を読んで意見交換をする「ディスカッション」や、英語でエッセーを書く「ライティング」など、さまざまな形で英語4技能(リーディング・リスニング・スピーキング・ライティング)を鍛えていきます。ICUに入学する時点で、多くの学生は英語を得意科目としているはずですが、それでもほとんどの生徒は授業についていくだけで精一杯。その結果、クラスの団結力や結束力はとても強くなります。

クラスメートのことを一部の学生は「セクメ」(セクションメイト)と呼びます。このセクメとの絆はかなり強いものになるのが常です。また学内は英語文化なので男女間で呼び合うときにファーストネームを使うのが当たり前です。だから眞子さまと小室さんが、“ファーストネームの関係”だとしても驚くことではありません。

ほかの大学では、バイトやサークル、遊びなど学業以外がキャンパスライフの中心になることもあるようですが、ICUは完全に「学びの場」なので、真面目な努力家が多いように思います。こうした点は、小室さんを含むICU男子の魅力のひとつでしょう。

■「リベラルアーツ教育」は人の器を大きくする?

ICUの学生は英語だけを学ぶわけではありません。「リベラルアーツ教育」による教養の高さも、ICU男子がモテる理由と言えるでしょう。リベラルアーツ教育とは、ICUの説明を借りれば、「文系・理系の区別なく幅広い知識を得た後に専門性を深めることで、豊富な知識に裏打ちされた創造的な発想を可能とする教育」というものです。

ICUは、教養学部1学部で、その中に31のメジャー(専修分野)を設けています。入学時に専攻を定める必要はなく、3年次になる前の段階でメジャーを決定します。

メジャーには、「文学」「社会学」「数学」「生物学」「美術・文化財研究」「ジェンダー・セクシュアリティ研究」「グローバル研究」などがあり、さらに1つだけでなく、2つのメジャーを同時に組み合わせる「ダブルメジャー」、2つのメジャーを比率を変えて履修する「メジャー、マイナー」という履修方法を選ぶこともできます。通常の大学では経済学部に入学すれば、卒業まで同じですが、ICUは入学時の志望通りに学び続けることもできますし、途中で変えることもできるのです。また文系と理系を変更することもできます。だから、自分の興味と適性を見極めながら、学問を深めていけるのです。

こうした型にはまらないスタイルが学生のモノの考え方や生き方にも作用し、「人としての器」を大きくしていくような側面があるかもしれません。だからこそ、外見だけでなく、相互の知性においても信頼することができ、お二人の関係も良好なのではないかと推測します。

なぜICU生は人事採用担当者にもモテるのか?

『2018年度版 大学ランキング』(朝日新聞)の「人事採用担当者なら気になるランキング」で、ICUは16位でした。旧帝大や早慶などには及ばなかったものの、神戸大、上智大、中央大、筑波大などよりは上でした。前年までは圏外でしたから、最近になって採用担当者からの評価が高まっているようです。

また、週刊ダイヤモンド(2014年10月18日号)の特集「最新大学評価ランキング」では、ICUは「使えるグローバル人材輩出大学」の項目で1位になりました。

ICUでは、外資系企業など、カタカナ系の企業に進む学生が多いようです。私の知人でも、外資系企業(IT、広告、PRなど)に就職し、アメリカ、フランスなどの海外支店で活躍している人が数多くいます。

小室さんのように日系のメガバンクに就職する学生もいますが、やはり目立つのは外資系企業です。ICUのホームページにも、日本アイ・ビー・エムやデロイトトーマツコンサルティングなどの名前が並んでいます。また、英語を社内公用語化した楽天などのIT企業にも多くの人材を輩出しています。

■ソニーCEO平井一夫氏もICU出身

OB・OGで言えば、ソニーの社長兼CEOの平井一夫さんや、バンク・オブ・アメリカ・エヌ・エイ東京支店副会長の木越純さん、サミットなど重要な国際会議の通訳者として有名な長井鞠子さんなど、英語のスキルを武器に、国内外のビジネスシーンで名をはせている卒業生がたくさんいます。

ちなみに、TOEICの全国平均スコアは500〜550点ほどですが、ICU生は700点前後。800〜900点以上の人もかなりいます。前述した大学1、2年時のELAの授業でしっかり英語を身に付けることで海外の企業も選択肢のひとつにできるのです。

前述したリベラルアーツ教育も、多くのOBが、就活や仕事で大いに役立ったと話します。

出世する人にはリベラルアーツの教養が必須

リベラルアーツは、特にここ数年、各方面でクローズアップされています。たとえばアップル創業者の故スティーブ・ジョブズも、晩年にリベラルアーツについてこんなコメントを残しています。

<アップルのDNAには、技術だけでは不十分だと深く刻まれています。人々の心を震わせるような成果をもたらすのは、リベラルアーツや人間性などと結びついたテクノロジーだと、私たちは信じています。私たちは、(リベラルアーツ、人間性に結びついたテクノロジーを前提とした)正しいアーキテクチャーが、製品などはもちろん組織にもしっかり組み込まれていると思うのです>(2011年アップルスペシャルイベント講演より)

また、世界史・日本史に精通するライフネット生命の会長兼CEO(この6月に退任予定)である出口治明氏も、著書『人生を面白くする 本物の教養』の中で、リベラルアーツの重要性を強調しています。今後、グローバルな競争環境では、リベラルアーツの素養なくして、人の上に立つことはできないでしょう。

■コミュニケーション上手は仕事上手・恋愛上手

ICU生は、このリベラルアーツのエッセンスや初歩がたたき込まれている分、企業生活の中で他大学出身者よりもアドバンテージがあるかもしれません。

近い将来、AIの進化で、「人間の仕事が奪われる」といわれます。その際、ビジネスパーソンに求められるのは、幅広い教養に基づいた発想力や行動力です。リベラルアーツはそうした「答えのない課題」を解決していくための最強のスキルであり、一流と呼ばれる人には必須になると私は思います。

ICUの授業は、主に対話形式で行われ、ディスカッションやプレゼンテーションの機会が多いのも特徴のひとつです。一方的に教授が講義をして終わるという授業はほとんどありません。そうした学習環境であるがゆえに、相手の話を聞きつつ自分なりの意見も持つ、ビジネスコミュニケーションのスキルを持つ卒業生も多いように感じます。

教養があり、コミュニケーションも上手い。小室さんが眞子さまの心を射止めたように、そうした点が、ICU男子がモテる理由なのかもしれません。

(英語学習の情報ポータルサイト『English Hacker』編集長 佐々木 真 写真=日刊スポーツ/アフロ)