国立社会保障・人口動態研究所の発表によれば、生涯未婚率は男性23%、女性14%で過去最高を記録したと言う。一生独身で暮らすことを現実的な選択肢として持つ人もいることだろう。

3月下旬のガールズちゃんねるでは、「年収いくらあったら一生独身でもいいですか?」というスレッドが立っていた。1000万円や2000万円という高額な数字も並ぶ一方、現実的な数字として目立ったのは300万円や400万円だった。

では仮に、年収400万円で退職後まで不安なく暮らすことはできるのだろうか。キャリコネ編集部ではこの疑問を解消すべく、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんに2つのケースで試算していただいた。

実家暮らしか賃貸かだけを相違点とし、他の条件は同一だ。35歳時点で貯蓄が400万円、都内で正社員、奨学金を借りており、親の介護費用は両親の貯蓄で賄う。定年の60歳まで同じ手取りで働いたのち、65歳までは何らかの方法で収入源を確保するとした。なお、実家を相続した際の税金などは計算に入れていない。

実家暮らしは余裕あり。ただし定年後も細々と働き続けること必須


ケース1:都内実家暮らしの場合

「結論から申し上げますと、年収が400万円でも、実家暮らしの人は比較的余裕があります」と黒田さんは言う。

食費や通信費、お小遣いなどの生活費が年間96万円、奨学金の返済が年間17万円、自宅に月々2万円ずつ入れるとして住宅費を年間24万円計上した。保険料が年間6万円、その他雑費が年間30万円とすると、1年の支出合計は173万円。手取りから支出額を引いた残り147万円は貯蓄に回せる計算になる。

「この生活を、奨学金の返済が終わる38歳まで維持します」
「返済が終わったら、これまで奨学金にかかっていた17万円もすべて貯蓄に回しましょう」

その後45歳で保険料の支払いが年12万円に上がっても、生活費は当初のまま96万円を維持。55歳から60歳までは自宅のリフォームに備え、家に入れるお金を一時的に年30万円に増額する。ここまでで赤字はない。

60歳の時点で退職金を1000万円受け取ると、貯蓄額は約4900万円にのぼる。

「ここでリタイアしてはいけません。年金受給年齢引き上げに伴い、定年の延長も予想されますが、とにかく65歳までは再雇用やシルバー人材センターなど、なんらかの形で働き続けましょう。試算では現役時の半分、160万円の手取りを見込みました。ここから80歳までは生活費77万円、保険料12万円、その他項目を50万円で過ごします」

ただ、家電の買い替えや冠婚葬祭など急な出費が必要になる場合もある。これに備え、3年に1回は「その他」項目で100万円の予算を計上した。65歳以降の収入は年金のみとし、年間160万円で計算している。

このペースで80歳を迎えた場合、貯蓄残高は約5000万円となり、60歳の時点から比べて残高は若干増えている。女性の平均寿命が85歳。破産を避けながら天寿を全うできそうだ。

都内賃貸暮らしはやや厳しいが実現可能 節約に加え住まいの確保が課題に

ケース2:都内賃貸暮らしの場合

問題は賃貸のケースだ。黒田さんは「ちょっと厳しいですね。生活を引き締めれば出来ないこともありませんが」と話す。やはり家賃の出費は大きい。

月々の家賃は8万円、年間96万円で計算し、食費や光熱費、小遣いなどの生活費は10万円を見込んだ。36歳の1年間で貯蓄できる額は66万円と、100万円には届かない。

「都内で賃貸となると、大学時代も親元を離れていた可能性があります。その分奨学金の返済額も大きくなるので、完済は41歳という設定になります」

60歳で退職金を受け取って、貯蓄は約3300万円。この時点で、実家組約1500万円の差が生まれている。

大変なのはここからだ。65歳まで働き続けたとしても、その後の収支が黒字になることは一度もない。貯蓄を減らしながら生活し、80歳時点での貯蓄は約2100万円まで減る計算だ。

「高齢になると、保証人の条件とされる『独立して生計を立てている』知人が見つけるのが難しく、入居できる賃貸物件を見つけるのが大変になります。高齢者向けの賃貸物件があるとはいえ、賃貸組はお金も大事ですが、頼れる人間関係も重要な資産と考えてください」

NHKは5月1日、賃貸物件のオーナーの約6割が「高齢者の入居に拒否感がある」と答えていると報じている。住まいの確保はシビアな問題のようだ。

「35歳までに貯蓄癖をつける」 男性は更に「人間関係を大切にする」を意識すべし

試算を終え黒田さんは「どちらの居住形態でも、年収400万円はけして高収入ではないと肝に銘じて生活することが重要です」と釘を刺す。

「収入が上がると支出の幅も広げてしまいたくなりますが、それではお金は貯まりません。タイトな生活スタイルを目指しましょう」

とはいえ、老後の不安も解消しつつ、今の生活も楽しみたいというのが本音だ。両立させるコツはあるのか。

「35歳までに貯蓄癖をつけてください。『身の丈』を知り、支出を抑える暮らし方を沁みこませておきましょう。また、年齢に関わらず『10年後、どういう生き方をしていたいか』を考えるといいですよ。目指す生き方の実現には今よりお金が必要なら、収入を増やすか支出を減らすか、対策を検討する必要も出てきます」

お金を運用するのも手だが、出来るだけ長く働き続けられるようキャリアを磨く重要性を強調する。

「ニッチな分野でもいいので、1つ強みを作りましょう。得意分野が出来たらその周囲にも手を広げて、どんどん強みを太くしていく。稼ぎ続けられるだけのキャリアや経験を持っておくのは、有効なリスクヘッジになります」

また、「特に男性には気を付けてほしいのですが、良好な人間関係を築いておくことも、独身者の大事な防衛手段です」と教えてくれた。

「お金さえあれば安泰と考えるのは少し危険です。実際の生活では、体調不良時のゴミ出しのように、お金があっても解決できない『ちょっとした困りごと』が多いものです。隣近所や知人と良好な関係を築いていれば、こうした頼み事をお願い出来ます。女性は心配いらないのですが、男性は弱みを見せたがらないせいか、こういう時に頼れる人間関係を築きにくい傾向があるようです。若いうちから意識しておく必要があります」

計画的な貯蓄やキャリアアップのための自己研鑽、人間関係の手入れに加え、これらを持続するための自律心も重要のようだ。ソロ人生の謳歌には、戦略が必要らしい。