今年1月にはロッテ伊東監督(左)と共に野球殿堂入りした星野氏(中)と平松氏(右)

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野球熱が高い岡山、星野氏は「我々は田舎者だから(笑)」

 星野仙一氏(元ドラゴンズ)、平松政次氏(元ホエールズ、現ベイスターズ)、福井優也(カープ)。その他、岡山出身の投手は多いが、彼らには共通項がある。巨人に対してとにかく強いのだ。その理由は何なのだろうか。

 毎年、岡山県倉敷市のマスカットスタジアムでは秋季キャンプやオープン戦がおこなわれる。天候も良く、選手にとっては最適というのが大きい。マスカットスタジアムは95年に開場。両翼99.5メートル、中堅122メートル。二層式のスタンド構造で3万人以上の収容人員を誇る。NPBで使用している球場に比べても遜色がない素晴らしい箱。ここで秋季キャンプやオープン戦などが行われるのも納得である。また野球熱も高く、多くのファンがスタンドに詰めかけてプロのプレーに大きな拍手を送る。

「岡山出身の投手がなぜジャイアンツに強いのか?」

 岡山県社会人野球連盟理事長、藤原克也氏に聞いた。

「岡山はなかなか広島に勝てない。広島には強豪と呼ばれる社会人野球のチームもある。だからそこをどうやって埋めて行くか、が課題だと思っています」

「最近はJリーグのファジアーノ岡山がものスゴく人気が出てきた。そういったチームとも切磋琢磨して岡山の野球界を盛り上げていかないといけない。でも岡山は大阪が近いので新聞さんに取り上げてもらったり、いろいろサポートもしてもらえる。そういった意味では本当にありがたい」

「子供の時から野球は、タイガース、南海ホークスだった。そういう意味で我々にとってもジャイアンツに負けたくないというのはあった」

星野仙一氏の考えは…

 岡山県は中国地方だが、実は関西圏に近い。そういう意味でも、岡山人にとっては「東京=ジャイアンツ」は大きな憧れでありつつ、敵なのだろうか(言葉は悪いかもしれないが)。実際、前出の岡山県野球関係者のように、子供の時から好きなNPBチームは関西地方が多いらしい。そういった意味で大きな敵に立ち向かって行く、強いモチベーションが生まれるのではないだろうか。

 東北楽天ゴールデンイーグルス副会長、星野仙一氏に話を聞く機会に恵まれた。

「ジャイアンツに強い理由? そんなのわかんないよ(笑)。でも我々は田舎者だから(笑)。東京や大阪に対する気持ちは強かったよ。絶対に負けない、負けてたまるか、という気持ちでずっとやっていた。それが結果につながったんじゃないかな。その結果、そういう投手が出てきたんじゃないのかな」

 岡山といえば、「桃太郎」。イヌ、サル、キジを引き連れて、きびだんごを持参し鬼ケ島へ鬼退治に行く。まさに岡山県の野球人は桃太郎を体現しているようだ。巨大戦力のジャイアンツに真っ向から向かって倒す。そこに大きなロマンが誕生するのだろう。春を感じる暖かい吉備の地で、岡山野球人の強い意志がわかったような一日だった。

*ジャイアンツ相手に、星野仙一氏は通算35勝。平松政次氏は通算51勝。福井優也は16年5勝ながらそのうち3勝が対ジャイアンツ。

山岡則夫●文 text by Norio Yamaoka
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。 Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。