ミドルクラスなのにフラッグシップモデル!HUAWEIの新時代のスマホ戦略の転換とは【Turning Point】

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今、日本国内のSIMフリースマートフォン売り場は、海外ブランドのモデルがひしめき合っている。

流石にグローバル展開しているモデルたちは、「高性能」で「低価格」と、まさに非の打ち所がない。

そうした中、今年2月、ファーウェイ・ジャパンはミドルレンジの「HUAWEI nova」を発売した。

実は、この「HUAWEI nova」は、ファーウェイ製品のなかでも、新しいカテゴリーとなる製品だったのだ。


■激戦の3万円台 SIMフリースマートフォンは、どうすれば売り込めるのか
novaの販売価格は、家電量販店で3万6千円台。
この価格帯は、各社ミドルクラスの実力モデルがひしめき合うボリュームゾーンに位置する。

現在購入できるファーウェイ製品だけでみても、
・「HUAWEI P9」(以下、P9)が4万7千円台
・楽天モバイル専売モデル「honor 8」が42,800円(税抜)
キャンペーン期間においては29,800円(税抜)ということもある。

どちらのモデルもファーウェイならではの「ダブルレンズ」カメラを搭載し、撮影後にピント位置の変更やボケ量を調整できるなど、個性的な機能を搭載している。
とくにライカ仕様とも言うべきカメラを搭載するP9は、非常に競争力があり、魅力的なモデルだ。

このようにnovaの価格に約1万円プラスすることで、高性能な人気モデルが購入できるとなると、novaをあえて選べるかどうかは、非常に悩ましいところだ。

ただ、P9は、たしかに強力なモデルだが、
一方では、P9では「ここまでの機能は必要ないからもっと安いモデルが欲しい」というニースもあり、こうした価格面でのメリットに目を向ければ「nova」が最適となるとも考えられる。

ファーウェイでも、このような機種選択でのストーリーを想定しているのか、novaにおいては、まさに比較対象となるかのように余計なものは搭載されてないのだ。

それでいて安っぽさはなく、性能が著しく悪いわけでもない。
つまり、あえて「丁度良いな」と思わせるモデルに仕上げているように思える。

■ファーウェイのラインナップの中でnovaが担う役割とは




2月に都内で行われた発表会でファーウェイは
Mateシリーズは、「ビジネスフラグシップ」
Pシリーズは、「ファッション&カメラフラグシップ」
とし、
novaシリーズは、「若い世代に向けたフラグシップ」
と位置づけている。

先ほどプラス1万円で「ファッション&カメラフラグシップ」のP9が選択肢に入るとしたのだが、novaはP9や、Mate 9の競合ではない。

新たな層を開拓するためのファーウェイ3本柱の1つを担うフラグシップモデルだったのだ。

年々SIMフリースマートフォン市場は大きくなっている。
市場が大きくなれば。購入層の幅も大きく、多様化していく。

つまり、いままでとは、ユーザー層も変わりつつあるのだ。

SIMフリースマートフォン選びにおいて、
リテラシーが高ければ高いほど、価格とスペックで悩む。
結果として「この性能なら8万円でも納得」と考えてハイエンドモデルを購入する。

一方で、リテラシーが低ければ「1万5千円なら買ってみようか」と、価格を基準に、シンプルな選択ができる。
こうしたユーザー層は、「スマホが8万円もするなら買わない」と考える。

さらに購入者が求める条件は厳しくなる。
「予算は低くでも、良いものが欲しい」という考えだ。
こうした層には、novaをはじめとする2万円〜3万円台のスマートフォンが、まさにストライクゾーンとなるだろう。

では、ファーウェイがターゲットとする若い世代はどうだろうか?

18歳未満の学生であれば、家族と一緒に大手通信キャリアで購入することが多いため、あえてSIMフリーモデルのnovaを選ぶことが少ない。

では、もう少し年齢があげたターゲットが、大学生や20代の社会人だ。

身だしなみにも気を遣うこの世代であれば、
・通信費は、極力抑えて、お金は別も用途に使いたい
・チープな外装や子どもっぽいデザインは避けたい
と、思っていることだろう。

SIMフリースマートフォンの大本命であるアップルの「iPhone」シリーズは、大手キャリアでも取り扱っており、安っぽさや性能の低さで不満を覚えることはがない。
大学生や20代の社会人にとって、申し分のない性能と機能、デザインだ。

しかしながら、最新の「iPhone 7」購入でネックとなるのが、一番安いモデルでも7万円を超えるということだ。

一方、novaは、iPhoneに引けを取らない仕上がりと高級感、機能でありながら、半額に近い価格で購入できる。
iPhoneを店に買いに来てAndroidを買うというのは稀な例だろうが、事前のスマートフォン選びにおいては、novaの価格と性能は、多くの大学生や20代の社会人にとっては、自分に丁度良いモデルと見えてくるだろう。


メタルボディのnovaとiPhone 7


しかし、novaのコストパフォーマンスの高さや、品質の満足度の高さは、店頭や情報誌などから得られるが、それは能動的に動けるユーザーであるケースに限られる。

現実は、多くにユーザーに「nova」というスマートフォンの知名度は、圧倒的に不足している。

もしファーウェイが、novaをシリーズとして育てて行くのであれば、
もっと「若者向け」であることを大胆に言い切り、プロモーションを行ったほうがいいのではないだろうか?

■性能以外に魅力を伝えられるかがカギとなる
スマートフォンnovaはどんなモデルなのだろう?

CPUにはミドルレンジのQualcomm「Snapdragon 625」(オクタコア)、3GB RAM、32GB内部ストレージ、1200万画素アウトカメラ、800万画素インカメラ、DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)対応、そしてディスプレイは5.0インチFDH(1080×1920ドット)を搭載する。

ハードの構成としては特に悪いところがなく良くまとまっている。
手の届く価格帯ながら、文句なしの性能と言うことでコストパフォーマンスは高い。

また、大手キャリア製のスマートフォンのように特定のターゲットのためのプリインストールアプリがない点も良いところ。

若者向けだから「時間割アプリ」を入れておきました。
といった仕様が国内モデルでは多いのだが、安易で雑なアプローチであり、逆にターゲットが絞り切れていないように感じるのだ。
利用者としては、使わないアプリや消せないアプリだらけのスマートフォンよりも、SNSなど必要なアプリ、好きなアプリだけを入れておけるほうが、わかりやすく、愛着もわく。

またnovaのデザインは、前面にはフチが丸く加工された2.5Dガラス、背面はアルミとマグネシウム合金の薄型ボディとなっており、質感、デザインともに価格以上と思える高いレベルで仕上げられている・

こうしてみるとnovaは若い世代向けではあるが、それ以外の世代でも、持ちやすいサイズと質感で選びたくなるモデルと言える。しかしながら、そうした欲が出ると、novaの個性は汎用化し、個性を失ってしまうだろう。
そして、競合するSIMフリースマートフォンがならぶ店頭で、novaを見つることは確実に難しい状況となる。

だからこそ、「若者向け」という導線をブレずに、ひとつ確実に作っておくことが大事なのだ。

SIMフリースマートフォン市場は、アーリーアダプターから、一般層へと広がりを見せている。

この一般層をどうやって獲得していくのか?

それはスマートフォンの性能だけではなく、人気シリーズとして育て行くためのイメージ作りが、今後、もっとも重要になって行くのだろう。


執筆 mi2_303