精神科医に聞く、勘違いで起こる「嘘の空腹」の正体 

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「あ〜、お腹空いた!」のとき、実は2種類の「空いた!」があったのをご存知だろうか。
一つはまだお腹の中にモノがあるのに食べたくなる「嘘の空腹」、もう一つが、胃がほぼ空っぽになったときの「本物の空腹」である。果たして、この「嘘の空腹」とはどんなものなのだろうか。ダイエットと脳の関係に詳しい精神科医師の奥田弘美さんに聞いた。

「嘘の空腹」とは?


奥田さんによれば、嘘の空腹には、次の2種類があるという。

1.ストレスでイライラしたときに起きる空腹感
2.甘いお菓子や米・うどんなどの炭水化物に偏った食事の後に起きる空腹感

ストレスでイライラしたときは、甘いものを食べると心理的に落ち着き、気がまぎれるため、食べたくなることがあります。また、甘いものや炭水化物などの糖質の偏った食事をすると血糖値が急激に上がって、急激に下がっていくときに胃がもぞもぞするような落ち着かない感覚になることがあります。このときに空腹と勘違いしてしまうのです」

これらは「お腹が空いた」「なんとなく食べたい」と感じるため、一見空腹に思えるが、実際、胃が空っぽになっているとは限らないため、「嘘の空腹」ということになる。

「普通の大人の方であれば、少なくとも胃が空っぽになるまで、食後3〜5時間はかかります。デスクワークの方でも、昼食で一人前の量を食べれば、17時くらいまで持つはず。しかし、中には、小腹が空いたといってお菓子を食べる方もいます。ストレスや血糖値の急激な下降が空腹であるかのように勘違いしてしまうようです」

「嘘の空腹」のときは本来、食べる必要はない


では、この嘘の空腹が起きたときには、どうすればいいのだろうか。

「本来、食べる必要はありません。お腹が空ききっていないからです。そこで食べてしまうと、エネルギーが上乗せされて余ってしまいます。脂肪として合成されてしまうのです。

お腹がすっからかんの状態で食べるということは、車でいうと空のタンクになってからガソリンを入れるような状態です。つまり前に入れたガソリンを使い果たしてから、次のガソリンを注ぎ足すことになるので、余剰カロリーが出にくくなり脂肪が合成されにくくなるのです。太るのは、このようにお腹が空ききってないのに食べることも一つの原因です。

嘘の空腹が我慢できないときには、シュガーレスガムを噛む、お茶を飲む程度にして、余分なガソリンを注ぎ足さないようにしましょう」

「本物の空腹」とは?


では、「本物の空腹」がやってくると、どのような感覚があるのだろうか。

「スッキリとお腹が空ききっていて、すごく食べたい!大嫌いなもの以外は何でも食べたい感覚です。スーパーやデパ地下に出かけると、なんでもおいしく見えて、何でもウェルカムな状態。ストレスによる空腹のときは、甘いものや好物が食べたくなりますが、本物の空腹のときには、基本的に何でも食べたいという感じになるのが特徴です。実際、何でもおいしく食べられます。
ちょうど、子どものときに外で思いっきり遊んだ後、『あ〜お腹空いた!』となった状態。これが『本物の空腹』の感覚です。このときに食べれば、エネルギーをすっかり使ってから入れるので、エネルギーが余りにくく、脂肪になりにくいです」

「嘘の空腹」をつくらない対策は?


「嘘の空腹」は、太りやすく、何かと落ち着かず、なんだかあまりいいことはない。嘘の空腹をつくらない方法はないのだろうか?

「嘘の空腹のうち、血糖値の上昇と下降が原因のものは、菓子パンだけ、おにぎりだけなどの食事のときに起きやすいです。『野菜、卵・肉・魚などのたんぱく質、糖質』の3種類が整った食事にすれば、血糖値がゆっくり上がって、ゆっくり下がるので、嘘の空腹が起きにくくなります」

バランス良く食べた後、本物の空腹がやってくるまで3〜5時間待ってから、また食べるのが一番良いというわけだ。ただし、空腹が長すぎるのもよくないという。

「本物の空腹を確認したら、ほどよく食べるといいでしょう。胃が空っぽの状態が長時間すぎると、早食いやドカ食いの原因になります。すると必要以上に食べすぎてしまい、脂肪合成されやすくなります。本物の空腹がきたと思ったら、あまり時間を置かず、ほどよく、しっかり噛みながら、腹八分目ぐらいまで食べるのがいいですね。『野菜→肉や魚や卵などのタンパク質→糖質』の順番で食べると、自然で緩やかな低糖質食になってさらに太りにくくなります」

朝昼晩ときちんと食べるサイクルであれば、3〜5時間は「本物の空腹」が来ないはずだ。太りにくくするためには、すっかりお腹が空いてから食べるのを心がけよう。
(石原亜香利)

監修・取材協力
精神科医・産業医  奥田弘美さん
日々多数の人々の心と身体の健康サポートを行いながら、現代人が健やかに幸せに生きるためのヒントを執筆を通じて提案している。近著には「何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから」(扶桑社)、「1分間どこでもマインドフルネス」(日本能率協会マネージメントセンター)など。