同棲には賛否両論ある。

興味深いのは、同棲の経験者、未経験者に関わらず、賛否の比率はほぼ変わらない所だ。

同棲という言葉に甘いイメージを抱いていた頃は過ぎ、同棲の酸いも甘いも知り尽くした東カレ読者に改めて問いたい。

はたして同棲はアリなのか、ナシなのか。なぜ、そこまで意見が分かれるのか。

これから、同棲中のカップルの現在と数年先の姿を紹介し、今あらためて考えたい。同棲の先には何があるのだろうか?

前回記事:8年間の同棲。同棲はやはり「中途半端な関係」でしかない?




入社早々、同期との恋愛はNG?


「社内恋愛で、その上同棲してるって言うと大抵驚かれますね。」

口元に手を当てて笑いながら、里香は楽しそうに言った。彼女は大手飲料メーカーに勤務する25歳。新卒で入った会社の同期と付き合い、同棲を始めて丸1年になる。

相手は27歳の大地。彼は大学院まで行ったため、里香と同期入社だが年齢は2歳年上なのだそう。

里香は肩より長い髪を一つにまとめ、年齢よりもやや大人びた雰囲気で、赤い口紅が似合う色白美人。一見するとクールな雰囲気を漂わせているが、喋ってみると若手アナウンサーのようにハキハキ喋り、よく笑う。一方の大地は、口数は少ないが里香と同じくよく笑う、さわやか好青年といった印象。

二人の出会いは入社前のオリエンテーションだった。二人が入社した年は、グループ全体で約70名の新入社員がいた。全員が集められ、オリエンテーションの後は懇親会も開かれて、そこで初めて挨拶を交わした。後になってわかったことだが、この時から互いにタイプだと思っていたそうだ。

その後、入社前に開かれた同期の飲み会に二人とも参加したが、「お互い頑張りましょうね」と励まし合うだけで、何事もなく終わった。

入社後、1カ月の研修期間に入ると、いくつかのグループに分けられて課題が出された。ここで二人は同じグループになり、一気に仲を深めた。だが、二人が付き合うにはもっと時間がかかった。

真面目な二人は、これから長い会社員生活を送る場で、簡単に付き合ったりするのは気が引けたのだそう。互いになんとなく好意を感じながらも、一線を越えることはなく、同期としての関係をキープしていた。


里香の誘導尋問に、大地がハマる?!


社内恋愛は細心の注意が必要


研修期間が終わり、里香は営業部へ、大地はマーケティング部へ配属され、接点はほぼなくなり、定期的に開かれる同期の飲み会で会うだけの関係がしばらく続いた。

このプラトニックな関係を突破しようと動いたのは里香の方だった。二人で飲みに行こうと誘い、それとなく探りを入れながら誘導尋問のように、大地から「好きだ」と言わせた。そして二人は、同期の誰にも秘密で付き合いだした。



社内恋愛は、窮屈な面もあるようで「転職を考えた事もあります」と里香は言う。会社の飲み会で恋愛話になっても本当の事が言えず、息苦しさや申し訳ない気持ちを抱えたことは数え切れない。

ましてや二人は同棲を始めた。「社内ですれ違っても軽く会釈する程度の自分たちが、実は同じ部屋から会社に来て同じ部屋に帰って一緒に寝ているなんて、最初の頃は自分でも不思議な感覚だった」と二人は口を揃えて言う。

会社への住所申請で同棲がばれるのを避けるため、いまでも里香の部屋は残している。週に一度は自分の部屋へ帰るが、完全にクローゼット状態。その部屋に泊まることはほとんどなく、「もったいないし、どうにかしたいな」と里香はいつも言っている。

同棲しているのは、もともと大地が一人暮らしをしていた部屋で、学芸大学駅から徒歩10分の場所にある。広めのワンルームで家賃は10万円。年収は里香が400万円台後半、大地は約500万円。「里香の部屋を解約すればもっと家賃が高くても広い部屋を借りられるよね」と何度も話しているそうだが、タイミングを計りかねている様子。

社内恋愛は慎重にせねば、色々と面倒になるのは火を見るより明らかだ。朝はできるだけ時間をずらして出社するようにしている。先に里香が家を出て5分後くらいに大地が出る。同じ時間に出るときは、駅までは一緒に行くが乗る車両を変えるという徹底ぶり。

大学時代の友人など、会社と全く関係ない友達と思い切り恋愛トークをするのが、里香のストレス発散法で、会社の同僚たちには言えない事を赤裸々に語っているそう。

社内恋愛で、さらに同棲までしていると言うと決まって、「そんなに一緒にいて息がつまらないの?」と驚かれる。

確かに、大ゲンカをした次の日に会社の廊下ですれ違うと本当に気まずい。あからさまな態度をとるわけにもいかず、モヤモヤすることもある。付き合いだした当初は、大地が可愛いと人気の新入社員と親しげに話す姿に嫉妬したこともある。


同棲後、二人はどうなる……?




まわりに気を遣うのが馬鹿らしく思える


互いの社内での評判だって、聞きたくなくても耳に入る。それが良い内容の時もれば、良くない内容の時ももちろんある。まわりは二人の関係を知らないのだから当然のことだと理解しているが、大地が何かのプロジェクトでミスをして、プロジェクトメンバーから彼の愚痴を聞かされた事もある。大地は言わないが、その逆のような事ももちろんあったはずだ。

「相手がどんな仕事の進め方をして、今日はどこにいて、年収がいくらで、だれから嫌われているか…全てが分かってしまうのが、社内恋愛の良い所であり、悪い所」と里香は言う。

好きな人への批判や愚痴を聞くのは確かに辛いだろう。

「なんだか色々面倒だから、早く結婚しちゃった方がいいんですかね。たまに馬鹿らしく思っちゃう時があるんですよ。なんでこんなにまわりに気を遣ってまで付き合わなくちゃならないんだろうって。」

そうやって笑って話す里香。まわりに秘密の関係を続けるのはやはり、気苦労も多いようだ。


そんな二人の2年後は・・・


「結局ばれちゃって。でも良いきっかけだったと思います。」

いつも気をつけていた二人だが、休日に手を繋いで歩いている所を会社の同僚に見られ、そこから一気に二人の関係は広まったそうだ。別の同期から「こんな噂があるけど、本当なの?」と聞かれて初めて知り、認めざるを得なかった。

「言ってくれれば良かったのに」という同期には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

あまり上の人まで話が回らないよう、同じ部署の人間にはくぎを刺したが、やはり周囲からの見られ方が大きく変わってしまい、なんとなく居心地の悪さを感じる日が続いた。

居心地の悪さを「これも良いきっかけだ」と思ったのは大地で、噂が広まって間もなく、里香にプロポーズした。後に引けなくなり結婚した節も否めないが、それもひとつのタイミング。

そして結婚2年目の現在。里香のお腹には赤ちゃんがいる。まだ安定期に入っていないため、会社ではごく一部の人にしか伝えていない。

「ずっと秘密で、芸能人でもないのにコソコソ付き合ってた反動か、結婚してすぐは友達や同期を家に呼んでホームパーティをするのが楽しかったですね。」

そう言って、里香は優しい眼差しでお腹をさすった。



社内恋愛しながら同棲までしていた二人。「皆には秘密」というもどかしはあっただろうが、逆にそれがスパイスのようにもなっていたようだ。

ちょっと窮屈に感じる恋愛の方が二人の関係は発展しやすく、これまでに紹介したカップルのようにずるずると長い同棲にならずに済むのかもしれない。

【これまでの東京同棲白書】
vol.1:結婚前提で始めた同棲生活だが…。同棲は結婚への弊害だった?!
vol.2:同棲期間が長くなるほど、結婚へのハードルは上がっていく…?!
vol.3:互いに同棲経験あり。不毛な同棲をくり返さないための1年計画
vol.4:8年間の同棲。同棲はやはり「中途半端な関係」でしかない?