(左)入学時に選抜試験のある小学校では、早生まれが標準より2割強少ない。(右)進学校では早生まれの割合が2割強少なく非進学校の場合は、逆に早生まれがほぼ3割増

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4月1日生まれが早生まれになる理由

 日本では1月1日から4月1日までに生まれた人を“早生まれ”と呼んでいる。この早生まれ、人生のさまざまな場面に影響を及ぼすと言われている。 

 和文化研究家&ライフコーディネーターで、情報サイト『All About』の暮らしの歳時記ガイドも務める三浦康子さんによると、

「民法では、“満年齢は、起算日に応当する前日をもって満了する”とあります。平たく言えば “自分の誕生日の前日に満〇歳になる”という考え方です。だから、4月1日生まれの方は、民法上、その前日の3月31日で満6歳を迎えるわけです」

 とはいえ、年度末は3月31日だし、新年度は4月1日からスタートする。どうして、4月1日生まれも早生まれになるの? 3月31日で締めたほうが区切りがいいのでは?

学校教育基本法では“満6歳になった翌日以降で最初に迎える4月1日に、小学校に入学する”とされています。ゆえに、4月1日生まれまでは前学年、4月2日生まれからが新学年となり、学年に差が生まれるわけです」

 年齢のカウントの仕方は、一般感覚と法律上では異なるようだ。

最終学歴にまで差が!? キーワードは成功体験

 同学年でも4月2日生まれと、4月1日生まれではほぼ丸1年違うが、学校教育では同じことをしなくてはならない。

「早生まれの子は、生まれてからの時間が物理的に短いので、体格や体力、学力面などでどうしても劣ります。幼少期はほんの数か月でも、かなり発達しますから」(前出の三浦さん)

 学年でくくられ、その中で順位づけをされたり、相対評価をされることで、早生まれの子は劣等感を抱きやすいという専門家もいる。とはいえ、幼少時の差は成長とともに解消されそうだが……。

 これについて、一橋大学の川口大司准教授(現・東京大学教授)が衝撃的な論文を'07年に発表している。国際学力テスト『国際数学・理科教育動向調査』『OECD 生徒の学習到達度調査』を受けた小学生から高校生の成績と誕生日を分析したところ、同一学年の最年長者と最年少者では偏差値に2〜3の差が見られた。学年が進んでもその差は埋まらず、最終学歴にも差が見られたという。

 この分野をさらに研究したのが、岩手大学の内山三郎名誉教授。

「僕が調査した公立小学校では、通う児童の割合に大きな特徴は見られませんでしたが、入学時に選抜試験のある小学校では、早生まれが標準より2割強少なく、4〜6月生まれが2割弱多かった。高等学校においては、進学校では早生まれの割合が2割強少なく、4〜6月と7〜9月生まれの割合が多かった。非進学校の場合は、逆に早生まれがほぼ3割増でした」

 4〜6月生まれは、学年の中では年長者。当然、できることも多く、ほめられる経験も多い。

「その成功体験が、後々まで影響していることが統計に表れたのではないかと思います。ただ、医学部入学者は、生まれ月に大きな特徴は見られませんでした」(内山名誉教授、以下同)

アメリカでは親の意向で入学を1年遅らせることも

「統計的な処理をしてみると、明らかに早生まれが不利な状態にあります。ただ、間違えないでほしいのが、早生まれの子の能力が劣っているかといえば、そうではないということ。人間として持っている能力に差はありません。ただ、学年がどのタイミングで区切られているかの問題なんです」

 アメリカでは、親の意向で入学を1年遅らせることもできる。

「日本でも同じような選択ができたり、秋入学の小学校もあればいいんですが、なかなか……。対応策としては、この現実を現場の先生がきちんと把握し、個々の児童にしっかり目配り、気配りすることだと思います」

 ちなみに、慶応義塾幼稚舎や立命館小学校など、一部私立小学校では、誕生日順にグループに分けて試験が行われるなど、月齢が考慮されている。

「生まれ月に左右されず、平等ですよね。それに学校側も4〜6月生まれの、その時点での生活経験上の優位性にとらわれず、早生まれでも伸びしろのある優秀な子をとりたい。双方にメリットがあると言えます」

早生まれが有利なプロスポーツは?

 では、スポーツ面においてはどうなのだろう? プロ野球選手、Jリーガー(J1)の誕生日をくまなく調べたところ、グラフのとおり4〜6月生まれが多かった。

「野球やサッカーだけでなく、バレーボールやバスケットボールなど、球技全般に言える傾向です。球技は、練習量に伴って、テクニックが上達しやすい。同級生より早い時期からボールに触れ、練習できることで上達し、それが成功体験や得意意識につながった結果だと考えられます」

 逆に早生まれが多かったのがジョッキー。

「競馬学校の入学には体重制限があります。小柄であるほうが優位なので、競馬学校の合格者に早生まれが多いのも納得できますね」