増田明美節が聞き逃せない。リオ五輪女子マラソンはここを観るべし2

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いよいよ明日、日本時間14日(日)よる9時30分にスタートする、リオオリンピック注目種目、女子マラソン。日本からは伊藤舞、福士加代子、田中智美の3選手が出場する女子マラソンの観戦ポイント、メダルの可能性などについて、実況を担当する佐藤文康アナウンサー(TBS)に、リオへ出発する直前、話を聞いた。(前編はこちら)


「私、なんのために走ってるのかな?」


──女子マラソンといえば、1992年のバルセロナ大会で有森裕子さんが銀メダルを獲得して以降、96年のアトランタ(有森裕子:銅)、2000年のシドニー(高橋尚子:金)、2004年のアテネ(野口みずき:金)と、4大会連続で日本人選手がメダルを獲得しました。そこからメダルには遠ざかっているわけですが、今回、ここがいいぞ、という部分というと?

佐藤 今回は、本当に個性的というか、違ったタイプの3人が集まりました。それと、高橋尚子さんに話を聞くと、「昔の練習にちょっと近づいた」ということも言っているんですね。

──たとえば?

佐藤 伊藤舞選手なんかは50キロの練習を取り入れたりとか。それぞれ、メダルを獲るためにいろいろ試行錯誤して、昔ながらの練習も敢えて取り入れながらやっていたりします。それらがいいキッカケになればいいな、と思っています。福士(加代子)選手なんて、本当は長い距離とかまったく好きじゃないのに走り続けているわけですから。

──そうなんですか?

佐藤 好きじゃないんですよ。普段は飄々としたタイプなんですけども、先日話を聞いたときには「私、なんのために走ってるのかな?」と言っていました。「でも、リオがあるから、やるしかないんです!」と。

──ちょっと意外です。福士選手といえば、今回、オリンピックとしては4大会連続での出場です。これまでの3大会は10,000メートル。どうしてもマラソンで出たい、と思っていたのかと。

佐藤 実は2013年の世界陸上モスクワ大会のあと、現役引退も考え一旦競技から離れていたそうです。銅メダルを獲って、もうこれで陸上は終わりにしよう、と。でも、少し休養期間を挟んでもう一度考えたときに、やっぱりオリンピックで一等賞になる、と。それで、リオまでやりきる、と決めたんです。だから今回、覚悟を持ってスタートラインに立っているはずです。

──まさに集大成、と。

佐藤 はい。リオのあとのことは全く考えていないはずです。このオリンピックで金を獲ることしか、今は考えていないと思います。

ちょっとした奇跡も含めて選ばれた3人


佐藤 ちなみに、今回代表に選ばれた3選手って、2年前に陸連が実施したナショナルチームの合宿で、他にも選手がいたなかで偶然にも同部屋だった3人。そこで寝食を共にし、いろいろと話あったメンバーなんです。

──おぉ。

佐藤 そういうちょっとした奇跡も含めて選ばれた3人。今回、その3人でともにがんばろう!という雰囲気になっています。面白い組み合わせだなぁ、と改めて思いますね。福士さんがああいう奔放な性格で、田中さんは、ほわーっとしていて、伊藤さんはその中間で静かに二人を見つめている。いいバランスの3人なんですよね。

──マラソンって個人競技だと思うんですけども、そういう「チーム・ニッポン」みたいなまとまりがレースで生きてくる部分はありますか?

佐藤 給水が取れなかったら誰かに渡すとか。オリンピックでは不思議とそういう場面があるんですよね。リオでも食事などで一緒に過ごす時間があると思いますので、そういう(チーム・ニッポン)意識は間違いなくあると思います。加えて、2年前の合宿で一緒だったという縁もある。そういう部分も含めて、今回は本当に楽しみだし、期待したい部分だと思います。

3人それぞれの苦労した経験を紹介したい



──佐藤文康アナウンサーは、早稲田大学競走部出身です。自分でも走ってきた経験というのは、マラソンを実況する上で生きる部分はありますか?

佐藤 いやいやいや。私はもう、たいしたことないランナーでしたから。箱根駅伝も、1年生のときに山下りの6区にエントリーされたのに、当日、エントリー変更になった、というくらいしか実績もなにもないランナーです(笑)。

──十分凄いと思いますが。

佐藤 ただ、今回の3選手は、学生時代からものすごい結果を残してきたわけじゃない選手たちです。福士選手は高校時代、インターハイで辛うじて決勝に残ったぐらいの選手。田中選手も全国大会にはほぼ出たことなく、伊藤選手にいたっては高校から陸上を始めた選手です。

──それぞれ、脚光を浴びたのは遅かったと。

佐藤 そうですね。3人それぞれに苦労した経験があり、その点では、私もランナーとしては挫折しか味わったことないような人間ですので、気持ちは理解できるというか。そういう部分がうまく紹介できればいいかな、というのはありますね。

──ちなみに今回、解説は?

佐藤 解説は、増田明美さんです。

──増田さんの解説を聞きたいというファンもいるくらいですが、実況アナウンサーとしては、どういった心意気で掛け合いをしていこうと?

佐藤 増田さんは、選手の情報から家族の情報、好きなものや朝食べたものまで、全部頭の中に入っていますから。増田さんならではの特徴的な情報を楽しみにしているファンの方も多いと思います。そこをうまく引き出しつつ、うまくバランスを取りながらやりたいと思います。まあでも、「増田節」がもうこれだけ世間に浸透していますから。

──増田節がどこで出てくるか。

佐藤 はい(笑)。増田さんのモットーは、まずその選手のお母さんの電話番号を知ること。まずお母さんに電話をかけて、幼少期をぜんぶ引き出す。先日は、福士加代子選手の大親友に密着マークをしていましたから(笑)。2時間半、たっぷり時間はありますから、それをどのタイミングで出すか。3人の話題をできるだけ多く引き出したいですね。ぜひ、レースの最初から最後まで、お楽しみいただきたいと思います。

◆リオデジャネイロ オリンピック 女子マラソン
8月14日(日)よる7時〜(レーススタートはよる9時30分 ※日本時間) TBS系列で独占生中継。

(取材日:7月27日)
(オグマナオト)