よくも僕の可愛い妹を!「ファイアパンチ」15話

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Web無料漫画配信サービスジャンプ+にて「ファイアパンチ」第15話が配信されている。


ここ数話はアグニとトガタのシーンが多く、ギャグマンガっぽくなっていた。海で生首持ってパチャパチャしたり、心の底から憎んでいるのに演技で怒っているセリフを何度も言わされたり、「絶望中なのになんか明るいですね〜」くらいの感覚で読まされていた。

しかし、このマンガはエログロダークファンタジー。そう呼ばれているかどうかはわからないが、うんざりするほどグロいシーンがたくさん詰まったマンガ。今話はそれを嫌というほど思い知らされた。暗い気持ちで月曜日を迎えた人は少なくないはず。

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今話は久しぶりの暗い話


久しぶりに登場のサンはベッドに括り付けられ、ある施設へとジャックによって運ばれていた。その施設は、数え切れない祝福者達がサンと同じようにベッドに括り付けられ、強制的にその能力を搾り取られていた。でん粉の液体を出すもの、炎を出すもの、鉄を出すもの、人間がベヘムドルグの資源になっていた。

おそらくここがベヘムドルグの一番の闇の部分だろう。それにしてもジャックは「民が飢えないのは彼らのおかげだ」とか、「じゃ!僕はこれで失礼するよ。頑張ってね」とか、優しい口調がなんとも憎たらしい。

資源にされている祝福者達は、逃げることも出来ない。首から流される祝福を搾り取る何かによって起こる焼けるような痛みに一日中耐えていた。そのせいでいつも死ぬことを夢見ていた。

今話は第1話以来の世界観を提示する話になっている。かなりダークな仕上がり。明るいノリの後だけに、落差がすさまじくい。

その話が、嘘でもいいから聞いていたい


一日のうち、痛みが起こらないのはたったの4時間だけ。その時間に祝福者たちは眠っていた。しかし、サンは貴重なこの時間にいつもアグニの話をしていた。アグニという神様がいて、いつかきっと助けに来てくれると。

祝福者達は貴重な痛みの起こらない時間を大事にしたいと、サンを黙らせようとした。しかし、次第にサンの話に興味を持ち出した祝福者達。彼らにとって嘘のようなアグニの話だけが唯一の希望となっていく。

焼けるような痛みに苦しむ祝福者達の希望となったアグニは、その頃、本当に焼ける痛みに苦しんでいた。気を紛らす何かがないと、痛みを我慢することが出来ず、夜は眠る事も出来ない。救いを求める弱者よりも、それを助け出すかもしれないヒーローの方が苦しいなんて、なんて複雑な話だ。

よくも僕の可愛い妹を!!って気持ちが世界を救う


アグニの目的はドマを倒すこと。それ以外には何もない。大好きな妹を殺された。その恨みだけで生きている。とても悲しい事だが、言ってしまえば「よくも僕の可愛い妹を!殺してやる!」っていうだけになる。

だがそのドマへの復讐の副産物を他人が求めている。ドマや悪の王国ベヘムドルグを滅ぼせば、捉えられているサン達は救われる。映画を撮りたいだけのトガタは、最高の復讐物語をカメラに収めることが出来る。つまり、全然そんなつもりないのに人の役に立ってしまうのだ。

そして諸悪の根源である氷の女王。アグニの武器である燃え尽きるまで消えない炎は、彼女を倒すのに必要な要素なのかもしれない。アグニはただただ妹が殺されて怒っているだけなのに、この先世界を救う事になるのかもしれない。

もし、仮にアグニが凍りつく世界を溶かすことが出来たとしても、妹は戻らない。話が進めば進むほど、バッドエンドしか見えない「ファイアパンチ」。続きは8月8日配信予定だ。
(沢野奈津夫)