子育ては難しくて楽しくて泣ける「甘々と稲妻」3話

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父子家庭の高校教師と5歳の娘が、女子高生と一緒にごはんを作っておいしく食べるアニメ『甘々と稲妻』。月曜の夜から腹を減らしつつ、涙で少し画面が滲み、明日への活力にもなるという作品だ。


先週放送の第3話「つむぎとおまたせのハンバーグ」は、子どもの大好物ハンバーグを作るお話。ざっと振り返ってみましょう。

まずは、女子高生・小鳥(演:早見沙織)の朝食シーン。たらの西京漬け2枚に卵焼き、野菜の煮物、おひたし、味噌汁、そして山盛りの白いごはんというバランス完璧な組み合わせ。こんな朝食が出てきたら、小鳥でなくてもテンションが上がるはず。

この完璧な朝食を用意したのが、小鳥の母親である料理研究家の恵(演:新井里美)だ。最近多忙でほとんど家にいない(ゆえにここまで姿を見せていない)恵だが、この日はあろうことかセーラー服姿でテレビに出演(『Qさま』的なクイズ番組の番宣)し、小鳥に衝撃を与えていた。なかなか似合っていたのも衝撃だったらしい。

公平(演:中村悠一)とつむぎ(演:遠藤璃菜)親子の朝食はというと、スクランブルエッグは焦がして失敗、味噌汁も煮詰めてしまってお湯で薄めたもの。だけど、つむぎは味噌汁を一口すすって「おいしい!」。後片付けのお手伝いも率先してできる良い子です。これぐらいの年の女の子って、本当にお手伝い好きだよね。

さて、つむぎの通っている幼稚園でトラブル発生。友達から粘土をもらったつむぎを同級生のミキオが「泥棒!」と言い、その後もみ合いになってつむぎが相手をひっかいてしまったのだ。4歳から5歳って言葉がキツくなる年頃なんだそうで、ウチの娘(4歳)も園で「嘘つき!」とクラスの子に言われているのを見たことがあった。

なお、作品の中では、どちらがどのように手を出したのかは描かれていない。5歳児同士の場合、どちらが先に手を出したかはあまり重要ではなく(本人の証言もあいまいだし)、親も先生も子どもの事後のケアが最優先になる。このときも公平が呼び出されて、ケアを任されている。スモックを頭にかぶったままスネているつむぎの姿が可愛い。

公平と小鳥はつむぎを元気づけるため、ハンバーグ作りに挑戦する。子どもは生焼けのものを食べるとお腹をこわすので、しっかり火が通る煮込みハンバーグだ。ハンバーグ作りは慣れないとハードルが高そうに感じるが、やってみると案外シンプルで簡単なもの。2人は小鳥の母が用意したレシピを見ながら、順調に食事の用意を進めていく。

ところが、つむぎは落ち込んだまま。小鳥が公平に「先生、もっと頑張って聞いてあげて。ちゃんと」と好アシスト。
公平は家で「つむぎは泥棒じゃない」と声をかけながら、抱きしめてあげるというケアをしていたが、つむぎは「結局、粘土を返していない自分は悪い子じゃないか」という別のポイントで引っかかっていた。ものすごく些細なことだが、5歳の子どもにとっては大きなこと。結局、自分はケアした気になっていただけだと気づいた公平は、あわててつむぎに声をかける。

「つむぎ! つむぎは悪い子じゃないよ! 大丈夫だよ、大丈夫。
父さん、つむぎは良い子だって知ってるよ。
つむぎは優しいし、言われたことをちゃんと守るし、
家のお手伝いだってしてくれるし。それに、それにね、
つむぎは父さんにいっぱい元気をくれるんだ。
父さん、つむぎが大好きだよ!」

うう、公平の言葉を聞いているだけでじんわりと来る。
しっかり子どもの話を聞いた上で、子どものことを認めて、ちゃんと愛情を言葉で表現する。わかっているけど、なかなか難しい。忙しいシングルファーザーの公平ならなおさらだと思うけど、こうやってできているんだから世のお父さん、お母さんたちも一緒に頑張ろう。
小鳥が公平にアシストできたのは、自分が幼い頃、両親に話を聞いてもらえなかったからなのかもしれない(小鳥の両親は離婚済み)。

こねたハンバーグをつむぎが上から投げおろし、それを公平が両手でしっかりとキャッチする。親はとにかく受け止めなきゃいけないんだよなぁ。子育ては難しいが、やっぱり楽しい。

父子家庭のつむぎが幼稚園に通っている理由


父子家庭なのにつむぎが幼稚園に通っているのは、妻が亡くなった後も友達がいる同じ園に通わせ続けたいという公平の父親心の表れだろう。幼稚園が終わるのはだいたい午後2時頃で、専業主婦(主夫)家庭でないと通わせるのは難しい。延長保育は17〜18時ぐらいまで(保育園は19時まで)の園が多く、毎日お弁当も持たせなければいけない(保育園は給食が多い)。公平とつむぎが通っている園は16時までしか延長保育がないようなので、ベビーシッターの手を借りている様子(1話より)。手間的にも金銭的にも公平の負担はかなり大きいはずだが、つむぎへの愛ゆえ笑顔で乗り切っている。

『甘々と稲妻』は、見ていると大変温かな気持ちになるアニメだが、とにかくすべての描写が「丁寧」なのが印象的だ。丁寧な描写の積み重ねが威力を発揮しているアニメである。
実際に子どもたちが演じているつむぎたちの声だけでなく、一つ一つの動きや仕草も無理がなく、とても自然。手の表情や吐息などもリアルだ。
また、食べものアニメなのだから、食べものが美味しそうに丁寧に描かれているのは当たり前なのだが、半熟の目玉焼きの黄身がとろっと垂れるところや、玉ねぎを刻む音も実にリアル。アニメか実写かとは関係なく、そういうものをちゃんと見せたい、ちゃんと聞かせたいというスタッフの意思の表れだと思う。
ひょっとしたらスタッフは、視聴者だけでなく、つむぎに料理の様子を見せたい、あるいは聞かせたいと思っているのかもしれない。

さて、今夜放送の第4話は「きらいな野菜とコロコログラタン」。公平と小鳥は、つむぎのピーマン嫌いをなおすことができるのか? 野菜嫌いの子を持つ親も必見。
(大山くまお)