公式HPより

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幼い仗助を救ったリーゼントの男は誰?


ハンバーグみたいな髪型(リーゼント)をバカにされるとブチ切れる仗助。それは幼き日に自分を救ってくれた憧れのヒーローを真似してるという理由がついに語られる!
そんな今回のエピソード、連載当時は「後々のデカい伏線なのでは」との憶測が、まことしやかに囁かれていた。回想の中に出てくるリーゼントの男は、髪型はもちろん背格好も仗助ソックリ。そして第三部のラスボス・DIOは「時を止める」スタンド持ちだったから、今回は「時間を遡る」能力だろう。とすると、命の恩人は過去にタイムスリップした仗助……?

この伏線めいた話は、その後一コマも触れられることなく第四部は終了。諦めきれないファンは「伏線を回収し忘れたのでは?」と粘っていたものの、第三部OVAのおまけインタビューの中で荒木先生ご本人が「あれは仗助の美しい思い出ですよ」とサラッと語ったことで論争にピリオドが打たれた。

よかった、あの話が伏線じゃなくて。リーゼントの男が仗助本人じゃなくて本当に良かった。

通りすがりの男が、大雪の中で立ち往生してる車を見かね、自分の勲章であろう学ランがズタズタになるのも構わずチェーンタイヤの下敷きにして、名前を告げずに去っていくからカッコいい。自分が助かりたいために過去の自分を助けたとしたら、見返りを求めない「黄金の精神」とは程遠い。これでいいのだ!

第15話は、こんなお話


いつの間にか露伴の家にやってきた康一。悪いと思いながら家の中に入ってみると、そこにはものすごいスピードで漫画を描く露伴の姿があった。君の記憶を読んで創作意欲がかき立てられたという露伴の言葉で、自分がスタンド攻撃で本に変えられたことを思い出す康一。またページが破り取られようとしたそのとき、玄関に現れた二人の人物!

20分で2ページ描く漫画家の理想像


「すまないが待っててくれるかい?あと2枚で来週分の原稿が完成なんだ。あと20分ほどでできると思うから」
露伴先生、連載マンガを2枚で20分!Twitterのタイムラインにいたマンガ家さんたちが一斉にため息。2枚が20分で書けるなら、夏コミの原稿を落としたりしないし、きっと『HUNTERXHUNTER』も休載されていなかったはず。

ここからが康一くんのマンガ執筆実況タイム。

「し…信じられない!あんな複雑な構図を下描きもしないなんて!どんどん仕上がっていく…しかも背景まで一緒に描きこんでいるぞ!」
「なにぃ〜!?ベタだ〜!インクを手裏剣のように飛ばしてはみ出さずに正確に命中させているぞ!こんなテクニック…ベタって筆の手作業で塗ってたんじゃあないのかぁ〜!?』
「もうスミベタが終わっちゃったよ〜!」

念のためにいうと、今回の露伴先生はまだ一回もスタンド能力を使ってない。手裏剣のように正確無比なベタ塗りも、真っ白から2分で背景まで描き込んでることも、本人の持つ生身の能力だ。すごいなあ、マンガ家ってこんなことできるんだ!(できません)

「一晩で19頁も描けるなんて僕自身も初めての体験だ!君の体験はすごい!」

もうやめて!プロ漫画家さんたちの残りHPはゼロよ!

そんな激しすぎる開幕の後、いよいよ新オープニングの公開だ。明るく楽しかった前期からガラリと変わり、クールかつ激しくカッコいい曲。「日常に紛れ込んだ悪魔」や「貫いた矢のような鋭さで」と原作モチーフを織り込んで忍び寄る闇との戦いを歌い上げるのは、広島出身のロックバンド『batta』だ。

ジョジョだけに徐々に(やかましい)見せるのではなく、ドバっと新スタンド使いが顔出し。しげちーや辻彩といった重要キャラのほか、康一くんと縁があるらしいスタンドのシルエット。そして謎の猫目は、「植物の心」のような平穏な人生を望んでいそうだ。

康一くんのひとり爆笑コント


「ページを取れば取るほど君の体重は減っていくけど、構いやしないだろう?』
そんな康一くんのピンチに、絶妙なタイミングでピンポォーン。持つべきものは友だち、頼もしい二人がやってきた。

ほうほうの体で玄関のドアまで逃げ出してきて、またまた始まる康一くん劇場。

「何とかして助けてもらわなくては!」→「あれ?億泰くんと仗助くんじゃないか」「それじゃな光一!」→「あ〜思い出した!」

ドアを開けると「助けてもらうこと」をコロッと忘れ、閉めると「た……助けを!」と思い出す康一くん。また必死に開けると「すぐ学校行くからね〜」と呑気に見送る切り替えの落差。怖いシーンなのに大爆笑させられる康一くん=梶裕貴さんの演技力の高さがヤバい。

が、康一くんの腕の傷に気づいて、家に乗り込んできた億泰の男前さ。でもコピー機に罪はないから土足で乗らないであげて……。

「君は死んだ兄・形兆にコンプレックスを抱いており、何かを決断する時いつも『こんなとき兄貴がいればなぁ』と思っている」

この容赦ない億泰レビュー、実際は「康一くんがそう思っている」ということ。今回の露伴がいう酷い言動は、すべて参考資料は康一くんという事実。

「君には興味なかったがこの家に来ちまったものはしょうがない!君も資料にしとかなくてはな!」

お前も蝋人形にしてやろうかのノリで「資料にしとかなくてはな」というマンガ家を初めて見ました。

ザ・ハンドが襲いかかるよりも速く原稿を手にとって億泰に見せ、スタンドごと「本」に変えてしまう露伴先生のスピード。が、残るはドアの影に隠れてる東方仗助。貴様、見ているなっ!でBパートに続く。

スタンドに全力で殴られて1ヶ月休載


ヘブンズ・ドアーの強みは「初見殺し」。相手になんの警戒心も抱かせない、魅力たっぷりの「マンガ家の生原稿」を見せて術中に落とし、一方的に好き放題できることだ。

が、億泰が罠にハマったおかげで、仗助に正体がバレてしまった。しかもクレイジーダイヤモンドはスピードAで、ザ・ハンドとは比べ物にならない。普通に考えれば勝ち目はゼロだが、ここから心理戦が始まるのがジョジョたるゆえん。

「なぜ東方仗助はあのドアの影に隠れていると思うね?」
「仗助君はあなたのその漫画を見ないために今隠れている…」

逆らえない康一くんに質問の答を言わせる露伴先生。なぜか? 仗助に聞かせるためだ。直接の攻撃力はないヘブンズドアーの弱みもあるが、それだけじゃあない。

「東方仗助は「このままこの屋敷から自分だけ逃げだすというのはどうか」と考えている」

仗助は仲間を見捨てて逃げる性格じゃない。が、「逃げる」ことは仗助の父であるジョセフの得意技だった。「逃げる」ことで戦いの選択肢が広がるのだ。

「漫画家というものは職業柄いつもあらゆる状況を考える癖がついてるものなんだ。『漫画の主人公はこの状況で一体どんな行動が可能か、とね。この場合正体を知られた仗助に逃げられたら僕は実に困るんだよ』

さすがジョセフの生みの親・荒木先生……ではなくてプロ漫画家の露伴先生。

「そうか!そりゃいいかもしれない!承太郎さんを呼べるしよ!由花子が康一のこと知ったらあの女怒りまくるぜ!」
「あの髪なら勝てる!会いたくないけど!」
君に恋する山岸由花子が聞いたら絶対泣くよ! 今回の康一くんは被害者のくせにとことん酷い。

でも、仗助は決して逃げられない。「露伴を困らせたらわたしは自殺します」と億泰に命令を書き込まれてしまったから。

なぜかライターを持ってた億泰がメラメラ燃え始めると、目をつぶって突進する単純だが効果的な方法で勝負をかけてきた仗助。閉じている目を何とかして開かせればいいわけだな!とペン先を抜群のコントロールで投げる露伴先生。すごいなあマンガ家さんって!

それでも止まらない仗助に戸惑った露伴先生、思考時間わずか0.2秒。参考書の康一くんのファイルを読んで、こう煽る。

「お前のその髪型な。自分ではかっこいいと思ってるようだけどぜーんぜん似合ってないよ!ダサい」

それは勝利のカギではなくて、地雷を踏み抜いただけ!

ここで驚くべきは露伴先生が負けたことではなく、「原稿を出すスピードが仗助に勝っていた」ということ。凄まじいスピードで動く承太郎のスタープラチナ、それを「時止め」を使う状況に追い込んだプッツン時のクレイジーダイヤモンドを、生身の露伴先生の動きが上回っちゃったよ! 弓と矢で貫かれなかったとしても、この人は「仕事の速い漫画家の理想像」なのだ。

康一くんの想像を遥かに超えていた仗助の怒りの激しさ。それはファイルにも載ってなかった、仗助のとある過去……ということで、初めにまとめた「仗助の髪型」に戻る。

4歳のとき原因不明の高熱に倒れ、50日間生死を彷徨ったことがある仗助。そう、第三部でDIOの影響を受けて、承太郎の母ホリィが倒れたのと同じ症状だ。ここでリーゼントの男に声を出させず、サイレント映画風の字幕で処理したのはウマい。仗助と同じ声であれ違う声であれ、「原作があえて空白にした箇所」を埋めてしまうからだ。

「たぶんあの話が原因なんじゃないかな。仗助君のホラ話だと思って真面目には聞いてなかったんだけれど……」

仗助の話をマジメに聞いてなかった康一くん、やっぱりヒドイ! だからファイルにも書き込まれず、仗助も勝てたんだけど。

「嬉しいなぁ…こんな体験滅多にできるもんじゃないよ。これを作品に生かせば……得したなぁ…杜王町に引っ越してきてよかったなぁ…」

心底こう思える露伴先生は善悪を超越して尊敬できる。しかし、プッツンしたクレイジーダイヤモンドに全力でボコボコにされて、たった1ヶ月の休載で済む頑丈さも漫画家の理想像だ!
(多根清史)