指原莉乃が連覇を狙えるラストチャンス？ AKB48総選挙の見どころを語らせてくれ
AKB48グループではこの１年間、総監督の高橋みなみ（AKB48）をはじめ中心メンバーの卒業があいつぎ、率直に言うなら一時期のブームも落ち着いた感がある。今回の選抜総選挙も、世間的には関心が薄くなっていることは否めまい。
指原莉乃が連覇を狙えるラストチャンス？
さて、昨年、福岡で開票された「選抜総選挙」で頂点に立ったのは、地元・HKT48の指原莉乃だった。いまや指原は、単独でバラエティ番組に出演するなどグループ外での仕事も多く、メンバーのなかでも抜群の知名度を得ている。
その指原は今年も出馬している。その活躍ぶりを思えば、もはや48グループ内で競い合わなくてもいいのではないかと思う向きもあるだろう。しかし考えてみれば、指原はもともとアイドルファンで、アイドルになりたくてAKBに入り、その頂点をめざしてきたのだから、今回も立候補しないという選択肢はなかったのではないか。それにまだ、２連覇という選抜総選挙では誰も成し遂げていない目標も残っている。《２連覇を狙えるのって、今年がラストチャンスかもしれないし……》とは、今回の選抜総選挙の公式ガイドブックでの彼女の言だ。
それにしても、ファンをそれなりに長くやっていると、どうしても指原を含めベテランメンバーを「どう送り出すか」を考えてしまう。前出の北原里英にしても、これまでにもともといたAKB48だけでなく、SKE48も一時兼任するなど、グループ全体への貢献はきわめて大きい。おそらく遠からずして区切りをつけるときが来るだろう彼女に、新潟での開票イベントで花を持たせたいと思っているファンはけっしく少ないはずだ。
AKB48本体でいえばこのほか、昨年、連覇に挑みながら２位にとどまった渡辺麻友、昨年３位でNGT48と兼任する柏木由紀、それから１期生の峯岸みなみ、小嶋陽菜……じゃなくてにゃんにゃん仮面と、ベテラン勢のランクが気になるところ。
姉妹グループでは、SKE48の松井珠理奈とNMB48の山本彩と、各グループを結成より牽引するメンバーが今回どのあたりまで票を伸ばすのか。山本は朝ドラ「あさが来た」の主題歌「365日の紙飛行機」でメインボーカルを務めて脚光を浴びたし、松井もここへ来て連続ドラマ初主演（TBSで７月よりスタートの「死幣」）が決まり、追い風が吹いている。
ニューシングルを歌う次世代メンバーにも注目
今回の選抜総選挙の投票券がつけられたAKB48の44thシングル「翼はいらない」。そのミュージックビデオでは、メンバーたちによって大学紛争華やかなりしころの青春群像が演じられている。一体このMVのディレクターは誰なのかと思いきや、ホイチョイ・プロダクションズの馬場康夫というので驚いた。いわゆる全共闘世代より下の世代（ついでにいえば、馬場らホイチョイの結成メンバーは現首相の安倍晋三と成蹊学園の同級生にあたる）、しかもバブルの時代に「私をスキーに連れてって」など流行を先導するような作品を手がけていた馬場が、なぜいま現代のアイドルを起用して学園紛争の時代を描いたのか、気になるところではある。
「翼はいらない」を歌うのは、センターの向井地美音をはじめ岡田奈々、木崎ゆりあ（崎は正しくは「大」が「立」）、宮脇咲良（HKT48と兼任）、後藤楽々（SKE48）、須藤凛々花（NMB48）、高倉萌香（NGT48）など、全共闘どころか、バブル期から10年近くあとに生まれた20歳以下のメンバーが中心になっている。いずれも今回の選抜総選挙での飛躍が期待される面々だ。
このうち岡田奈々は、総選挙を前に30センチも髪を切り、決意のほどをうかがわせた。ただし、投票開始直前より体調不良のため一時休養に入っている。休養にあたっては「総選挙の前には、絶対に戻ってこれるように頑張ります」とのコメントを寄せたものの、くれぐれも無理はしないでほしい。
昨年の“第一党”SKE48、今年は…？
最後に、昨年、AKB48本体の23名を上回る26名のメンバーがランクインして“第一党”に躍り出たSKE48について。
前回の開票イベントでは、選抜総選挙常連の須田亜香里が思った以上にランクが上がらず、ステージ上で泣きながらスピーチするという一幕があった。それもあってか開票開始時より須田への票が集まり、６月１日の速報では、５位にランクインしている。あるラジオに出演時には、「今回は順位が上がっても下がってもおいしい」と発言するほど余裕を見せていた。昨年のことはすっかりふっきれたらしい。
速報でいちばん驚いたのは、選抜総選挙には昨年まで３回参加しながらいずれも圏外だったSKE48の竹内彩姫（さき）が９位に入っていたことだ。世間的にはまだまだ無名のメンバーだろう。しかしファンのあいだでは、そのダンスパフォーマンスやファン対応に定評がある。
正直言って、私にはダンスの巧拙を見極める目はほとんどない。そんな人間ですら、昨年名古屋のSKE48劇場でチームKII公演を観覧したときには、竹内彩姫のダンスのスキルは格段高く見えた。終演後のアンケートでは、今回の公演でベストパフォーマンスを選ぶとしたら誰かとの質問があり、迷わず彼女の名前をあげたのを覚えている。
ちなみに竹内はSKE48加入以前、中日ドラゴンズの公式パフォーマンスチーム、チアドラゴンズのキッズメンバーだった。研究生時代の2013年に出演した「AKB48グループ研究生コンサート」（日本武道館）でも、自己紹介のなかで「燃えよドラゴンズ」に合わせてダンスを披露したほか、好きなドラゴンズの選手として小田幸平（2014年引退、現・野球評論家）をあげていた。奇しくもその日、小田はナゴヤドームでの試合で、ホームにヘッドスライディングしてサヨナラ勝ちを決めている。あのとき小田にほほえんだ勝利の女神が、今度は彼女にほほえんでくれるだろうか。
昨夏に松井玲奈、今春には宮澤佐江が卒業し、屋台骨を失ったSKE48ではグループ内に危機感が漂う。中心を担う松井珠理奈は今年、自分の順位以上にSKEとして昨年に続き第一党になれるよう目標に掲げた。そしてもし宿願を果たしたのなら、《そのご褒美に、来年は名古屋で選挙をやってほしい。ファンの方に喜んでもらえるお返しがしたいから》と語っている（「日刊スポーツ」2016年６月15日付）。来年のことを言えば何とやらだが、地元ファンとしてはやはり今週土曜、開票結果が決したあとには、ぜひ鬼と一緒に笑いたい。
（近藤正高）
