中国メディアの微信はこのほど、日本人は中国で放送されている「抗日ドラマ」をどのように捉えているかというテーマについて解説する記事を掲載した。本来は中国人に愛国心を培わせるためのドラマであるはずだが、反日感情を煽りたてる以上に、「日本人でさえ楽しむことのできる娯楽ドラマ」と化している点を指摘している。(イメージ写真提供:123RF)

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 中国メディアの微信はこのほど、日本人は中国で放送されている「抗日ドラマ」をどのように捉えているかというテーマについて解説する記事を掲載した。本来は中国人に愛国心を培わせるためのドラマであるはずだが、反日感情を煽りたてる以上に、「日本人でさえ楽しむことのできる娯楽ドラマ」と化している点を指摘している。

 記事は抗日ドラマに対する日本のネットユーザーたちの感想をいくつか紹介、そのなかには例えば「これを日本で放送したらきっとすごく人気が出る」、「早く翻訳版が出てほしい!面白すぎる!こういうB級ドラマは大好きだ」、「抗日ドラマというが、これはSFドラマだ」というコメントがあったと紹介した。

 こうしたコメントからはっきり分かるのは、本来は日本による侵略戦争に立ち向かった中国人の姿を描き、愛国心を培わせる目的で制作されているはずの抗日ドラマが、驚くべきことに日本人に娯楽ドラマと見なされている点だ。それもそのはず、日本兵を素手で切り裂く、手榴弾で戦闘機を撃ち落とすなど、中国でも批判が集まるほど一時は内容が荒唐無稽だったからだ。

 だが、こうした状況は少し異常だといえる。仮に誰かがアウシュビッツをテーマにしたドラマを制作、しかしその映画がドイツ人に「これは娯楽として楽しめる」と見なされるようなことは絶対に生じない。そして誰もそのようなドラマを制作しようとは決して思わないだろう。しかし抗日ドラマは中国人が制作、そして日本人に「B級ドラマ」として楽しめる作品だと揶揄(やゆ)されている。記事は抗日ドラマに対して「愛国というのは表面だけで、実は自国の歴史を重んじないドラマ」と批判。ある意味で誠実さに欠けるドラマであると日本人に批判されている点を紹介した。

 また記事は、中国共産党機関紙・人民日報も抗日ドラマの内容に異議を唱えた過去を紹介。人民日報は「中国人は8年の抗戦における勝利のために、極めて痛ましい犠牲を払った。我々の勝利は巨大な犠牲と引き換えに手に入れたもの」とし、痛ましい犠牲を払ったはずの歴史が荒唐無稽な描写で台無しになっていると批判したことを紹介した。

 中国共産党にとって、抗日戦争は自らの存在意義を正当化するためのものであり、抗日ドラマは言わば、中国共産党の中国における功績を大々的に主張するためのドラマとも言える。それにもかかわらず、内容が荒唐無稽になっていることは自らの存在意義を荒唐無稽にしているのと同様ではないだろうか。(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)