デーモン閣下、貞子と伽椰子を召還する(俊雄も)
スケジュール帳やカレンダーに「謁見」と予定を書き込んでいる人はいるだろうか。
「来週、誰それと謁見でさー」とかいえる人は、なかなかおるまい。
その予定を手帳にこないだ書いた、という話である。
先月のエキレビ!で聖飢魔IIのタイアップソングについて熱く語った縁で、デーモン閣下にインタビュー出来ることに相成った。
デーモン閣下と言えば悪魔を標榜するお方である。年齢は「十万五十三歳」というのも有名だ。
「標榜する」などという言い方も、閣下からすれば遺憾に感じるところだろう。
実際「誰も我が輩が悪魔ではないことを証明できない」との言がある(著書『我は求め訴えたり』より)。それはそうだ。まあ、理屈をいえば「悪魔であることも証明できない」のだけど、そういうことはむしろ尊重したい。
だって「閣下に謁見」って手帳に書けるだけで、楽しいじゃないか!
また、文章を書くだけなら勝手だが、お会いしてのインタビューだ。尊重しないといけないし、デーモン閣下直々に訂正されてしまう。
テレビで「ご本人は」と言われたら即座に「人じゃないけどな」と訂正を差し挟んでいる(少し前の「ひるおび!」などでも徹底していたのかは、チェックしきれていないが)。
閣下自身、発言にはかなり気をつけているようだ(「人」って言わないように……と続けようと思ったが、それこそ「気をつけてなんかないけどな」と即座に言われそうである)。
どんなインタビューでも「個人的には」とは決して言わない。「個悪魔的には」である。
……自分だけではない、キャンディーズ「やさしい悪魔」の歌詞にさえ「あの曲は『あの人は〜悪魔』って歌うけど、人だったら悪魔じゃないから、正しくは『あの悪魔は〜悪魔』って歌わないといかん」と(さすがに笑い混じりではあったが)言ってて、どこまでだよと呆れたこともある。
まあ、せっかくのインタビューである。やるからには絶対に粗相のないようにしたい。具体的には、「人」と絶対に呼ばない。「十万」を忘れない。さあ大変だ。「それは閣下が十万何歳から十万何歳ころの話ですか」スラスラ問えるようにしないと!
その上で、(そういう部分の面白さだけに終始してしまわずに)日頃聞きたかったこと、閣下の曲作り、特に作詞の面白さについて肉薄したい。
インタビューは、新作映画『貞子vs伽椰子』の完成記念イベントの前後に行えることになった。同映画の主題歌を聖飢魔IIが手がけたのだ。
今の時代『vs』がつく映画なんて、なかなかお目にかかれない。和製ホラー映画の人気キャラクター二人が初対決することがウリなのだが、そもそも「どっちが強い」なんてことが話題になること自体に、アリと猪木の時代みたいな牧歌性を感じる。『エイリアンvsプレデター』だって十年以上前の話だ。
しかし、会場は熱気に包まれていた。円形ステージの奥のモニターを見守る隣席の女性ファン二名は、画面に映る予告映像のすべてに「かわいい」と黄色い声をあげていた。主演の女優さんのファンかと思ったら、貞子にも伽椰子にも嬌声が。「貞子の、あのカツラは相当重いね」と言う隣席の声を鵜呑みにして感心する俺。
山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美といった、これもある意味この世ならざるスラーリ体型を持ちし女優たちと(普通体型の)監督が登壇。しばらくはワイドショーとかでよくみかけるようなインタビューだったが、途中からおなじみの不穏な笑い声。
書物のようなものを手に閣下登場! ゆったりと円形ステージを巡りながら朗々と呪言めいた紹介を読み上げ、貞子と伽椰子を「召還」する。
本来どちらの作品にも「悪魔」という設定はなかったろうが、いきなり似合うなー、似合う。しっくりきてる。会場全体が、なんだろう、「安心感」に包まれる。絡みにくいであろうホラー映画のスター二人を自然に招き入れ、茶番にみせない「体」が宿った。
そのまま和やかなトークに戻ったのだが、みているうち、無言の貞子と伽椰子の二人も、なんだか「閣下いてくれて居やすいわー、気まずくないわー」と思ってるんじゃないかという風にみえてくる。
なんだか貴重な存在だ、としみじみ思う。『デスノート』の映画化のときも、悪魔はCGなんかじゃなく閣下に頼めばよかったのにーと(CGより簡単という意味でも)思ったし『デトロイトメタルシティ』だって閣下には一言あってよかったと感じたものだが、来年あたり、キャラクター性の強い娯楽映画の中で、ごく自然に活躍している姿も想像できた。
映画『貞子vs伽椰子』も、門外漢からしても楽しそう。むしろ「お祭り」のような今作から楽しむのもあり、と思えたし、主題歌も、前のレビューで触れた通り、素晴らしい(映画内容にもハマった)出来。
そんなわけで閣下へのインタビューは来月のエキレビ!をお待ちください。
……インタビュー開始十分くらいですぐ「人」っていっちゃって、ご本魔に訂正される前に慌てて修正したのだったが。
(ブルボン小林)
「来週、誰それと謁見でさー」とかいえる人は、なかなかおるまい。
その予定を手帳にこないだ書いた、という話である。
先月のエキレビ!で聖飢魔IIのタイアップソングについて熱く語った縁で、デーモン閣下にインタビュー出来ることに相成った。
デーモン閣下と言えば悪魔を標榜するお方である。年齢は「十万五十三歳」というのも有名だ。
「標榜する」などという言い方も、閣下からすれば遺憾に感じるところだろう。
実際「誰も我が輩が悪魔ではないことを証明できない」との言がある(著書『我は求め訴えたり』より)。それはそうだ。まあ、理屈をいえば「悪魔であることも証明できない」のだけど、そういうことはむしろ尊重したい。
だって「閣下に謁見」って手帳に書けるだけで、楽しいじゃないか!
テレビで「ご本人は」と言われたら即座に「人じゃないけどな」と訂正を差し挟んでいる(少し前の「ひるおび!」などでも徹底していたのかは、チェックしきれていないが)。
閣下自身、発言にはかなり気をつけているようだ(「人」って言わないように……と続けようと思ったが、それこそ「気をつけてなんかないけどな」と即座に言われそうである)。
どんなインタビューでも「個人的には」とは決して言わない。「個悪魔的には」である。
……自分だけではない、キャンディーズ「やさしい悪魔」の歌詞にさえ「あの曲は『あの人は〜悪魔』って歌うけど、人だったら悪魔じゃないから、正しくは『あの悪魔は〜悪魔』って歌わないといかん」と(さすがに笑い混じりではあったが)言ってて、どこまでだよと呆れたこともある。
今の時代『vs』がつく映画!
まあ、せっかくのインタビューである。やるからには絶対に粗相のないようにしたい。具体的には、「人」と絶対に呼ばない。「十万」を忘れない。さあ大変だ。「それは閣下が十万何歳から十万何歳ころの話ですか」スラスラ問えるようにしないと!
その上で、(そういう部分の面白さだけに終始してしまわずに)日頃聞きたかったこと、閣下の曲作り、特に作詞の面白さについて肉薄したい。
インタビューは、新作映画『貞子vs伽椰子』の完成記念イベントの前後に行えることになった。同映画の主題歌を聖飢魔IIが手がけたのだ。
今の時代『vs』がつく映画なんて、なかなかお目にかかれない。和製ホラー映画の人気キャラクター二人が初対決することがウリなのだが、そもそも「どっちが強い」なんてことが話題になること自体に、アリと猪木の時代みたいな牧歌性を感じる。『エイリアンvsプレデター』だって十年以上前の話だ。
貞子と伽椰子を「召還」する
しかし、会場は熱気に包まれていた。円形ステージの奥のモニターを見守る隣席の女性ファン二名は、画面に映る予告映像のすべてに「かわいい」と黄色い声をあげていた。主演の女優さんのファンかと思ったら、貞子にも伽椰子にも嬌声が。「貞子の、あのカツラは相当重いね」と言う隣席の声を鵜呑みにして感心する俺。
山本美月、玉城ティナ、佐津川愛美といった、これもある意味この世ならざるスラーリ体型を持ちし女優たちと(普通体型の)監督が登壇。しばらくはワイドショーとかでよくみかけるようなインタビューだったが、途中からおなじみの不穏な笑い声。
書物のようなものを手に閣下登場! ゆったりと円形ステージを巡りながら朗々と呪言めいた紹介を読み上げ、貞子と伽椰子を「召還」する。
本来どちらの作品にも「悪魔」という設定はなかったろうが、いきなり似合うなー、似合う。しっくりきてる。会場全体が、なんだろう、「安心感」に包まれる。絡みにくいであろうホラー映画のスター二人を自然に招き入れ、茶番にみせない「体」が宿った。
そのまま和やかなトークに戻ったのだが、みているうち、無言の貞子と伽椰子の二人も、なんだか「閣下いてくれて居やすいわー、気まずくないわー」と思ってるんじゃないかという風にみえてくる。
なんだか貴重な存在だ、としみじみ思う。『デスノート』の映画化のときも、悪魔はCGなんかじゃなく閣下に頼めばよかったのにーと(CGより簡単という意味でも)思ったし『デトロイトメタルシティ』だって閣下には一言あってよかったと感じたものだが、来年あたり、キャラクター性の強い娯楽映画の中で、ごく自然に活躍している姿も想像できた。
映画『貞子vs伽椰子』も、門外漢からしても楽しそう。むしろ「お祭り」のような今作から楽しむのもあり、と思えたし、主題歌も、前のレビューで触れた通り、素晴らしい(映画内容にもハマった)出来。
そんなわけで閣下へのインタビューは来月のエキレビ!をお待ちください。
……インタビュー開始十分くらいですぐ「人」っていっちゃって、ご本魔に訂正される前に慌てて修正したのだったが。
(ブルボン小林)