夢を追う姿は、ほかの誰かをイラつかせる「僕のヒーローアカデミア」6話

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「自覚するんだ……今日から自分はヒーローなのだと! いいじゃないか、みんな。格好いいぜ……。さあ、始めようか、有精卵ども!」

ヒーロー科の面々が自己流のコスチュームで勢ぞろい! いよいよ本格的な戦闘訓練が始まった日5枠アニメ『僕のヒーローアカデミア』第6話「猛れクソナード」。ひどい物言いだが、かっちゃんだから仕方ない。


世界人口の8割が“個性”と呼ばれる超能力を持つ時代、個性を持て余した連中は犯罪に走り、それを個性で取り締まる“ヒーロー”は職業として確立された。個性を何も持たない“無個性”の緑谷出久(いずく)は、憧れのNo.1ヒーロー、オールマイトにヒーローとしての資質を見出され、威力抜群だが諸刃の剣の個性“ワン・フォー・オール”を受け継いで、ヒーロー養成校の最難関・雄英高校に入学する。

出久の個性を見て、驚きと怒りを隠せないのは幼馴染の爆豪勝己、通称かっちゃんだ。金髪のギザギザヘアーに三白眼のイケメンで、爆破という戦闘力抜群の個性を持つヒーロー候補生は、幼少の頃から出久をバカにし、見下していた。勝己が出久につけたあだ名が「デク」。しかし、いつの間にか優れた個性を身につけて自分と同じエリート校で肩を並べている……。

「道端の石っコロだったろうが!」

勝己に個性を発現させた出久を祝う気持ちなんて1ミクロンもない。ヒーローとしての素質も戦闘力も抜群だが、性格最悪、口も最悪、おまけにすぐに手が出る男、それが爆豪勝己だ。

そしていよいよ迎えた「ヒーロー基礎学」の授業。生徒同士がくじ引きでコンビを組み、ヒーローと敵(ヴィラン)に分かれて屋内模擬戦闘を行うというものだ。

出久は親しくなった麗日お茶子とのAコンビ。お茶子の個性は“無重力(ゼログラビティ)”。触れたものを浮かせてしまう能力だ。敵対するのは、勝己と飯田天哉のDコンビだ。飯田の個性はとてつもない瞬足の“エンジン”。ゆるふわなAコンビと戦闘力が高いDコンビのマッチアップである。

“石っコロ”のくせにヒーローを目指す生意気な出久に怒りマックスの勝己は、戦闘にかこつけて出久をぶっ飛ばす気満々だ。しかし、出久だって、やられっぱなしではない。自戦闘開始前、パートナーのお茶子に静かな闘志を語る。

「嫌なヤツだけど、目標も自信も体力も個性も、僕なんかより何倍もすごいんだ」
「……」
「でも、だから今は……負けたくない、って」

威力はあるがリスクの高い個性を使いこなせない出久は、生身の体と蓄積したヒーロー戦闘に関する知識のみで戦闘訓練に臨む。しかし、勝己は奇襲! いきなり爆破をかましてくるが、出久は間一髪で避けるどころか、勝己の動きを読んで一本背負いで反撃してみせる。

「いつまでもザコで出来損ないのデクじゃないぞ……かっちゃん! 僕は『頑張れ!』って感じのデクだ!」
「デク……ビビリながらよぉ、そういうところが……ムカつくなああああ!」

戦闘訓練はいきなりクライマックス! 次回に続く!

夢見るナードの逆襲!


それにしても『僕のヒーローアカデミア』は、オープニングやエンディングに入るタイミングが本当に良いですね。劇伴がデデデーン、ジャジャーンと盛り上がり、キャラのキメカットがあって、♪ジャージャジャジャッジャッジャッジャジャーンとポルノグラフティ「THE DAY」のイントロにつながったり、同じ感じで一瞬息を吸う間があって「♪さえないぼーくのー」とBrian the Sun「HEROES」が始まったり。

出久と爆豪勝己の因縁とライバル関係がググッと前に押し出された第6話。タイトルの「クソナード」とは、勝己の出久に対する蔑みの一種。ナード(Nerd)とはアメリカのスクールカーストの中で“冴えないオタク”の階層を指す言葉で、ハリウッドの学園もの映画には必ず登場する。『ヒロアカ』はアメコミ映画の影響が強い作品だが、サム・ライミ版の映画『スパイダーマン』の主人公、ピーター・パーカーもナードとして描かれていた。

“無個性”で“ナード”で“石っコロ”の出久(デク)が、ヒーロー候補生として自分の視界に入ることが勝己にはとにかく許せない。非常に人間の器が小さいというか、ケツの穴の小さな男である。また、無力なのに人を見たら助けずにはいられないという出久の資質が勝己を苛立たせている部分もあるが、そのあたり勝己自身はなぜ苛立つのかわかっていないようだ。

出久と勝己の関係を横軸とすると、縦軸にあたるのがヒーローを夢見る出久の意志と行動だろう。第6話には、出久のコスチュームをプレゼントする母親のエピソードが挿入されている。

「お母さんね、ひどいことを言ってしまったって、ずっと引っ掛かってたの。あのとき、私は諦めちゃった。なのに、出久は諦めないで夢を追い続けてたんだよね」

ヒーローに憧れながら無個性に生まれてしまった子に、涙ながらに謝罪していた母。でも、子ども自身は諦めずに夢を追い続けて、その夢に指一本届きつつある。徹底的にヒーローを研究し、わずかな出会いをチャンスに変え、厳しいトレーニングにも耐え抜いた。『ヒロアカ』は、出久が夢を現実に変えていく過程を描く物語なのだ。

しかし、誰かがひたむきに夢を追う姿は、それだけで他人を無性に苛立たせることもある。オールマイトが出久を強烈な光で照らせば照らすほど、勝己という影の黒さは色濃くなっていく。

本日放送の第7話は、因縁の2人が全面的に激突する「デクVSかっちゃん」。飯田くんとお茶子さんの活躍も忘れずに。それではご唱和ください、さらに向こうへ、「Plus Ultra!」。
(大山くまお)