二階堂ふみがなんてエロい…映画「蜜のあわれ」

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現在公開中の映画『蜜のあわれ』
金魚の少女・赤子(二階堂ふみ)と老作家のおじさま(大杉漣)の艶やかなラブ・ストーリー。
真木よう子、永瀬正敏、高良健吾が物語を彩る。
監督は「狂い咲きサンダーロード」「生きてるものはいないのか」「シャニダールの花」の石井岳龍。
室生犀星の小説を映画化した。

赤子(二階堂ふみ)がエロかわいい!



少女とおじさま、という設定でいうとまず『ロリータ』
(映画/スタンリー・キューブリック監督)が思い浮かぶ。少女がおじさまを翻弄するという点で言えばロリータ・コンプレックス要素を含む作品なのだろう。

しかし、大きく違う点が。
赤子(二階堂ふみ)は人間ではなく「金魚」なのだ。
そういう点ではキューブリックの「ロリータ」よりも宮崎駿の『崖の上のポニョ』に近いのかもしれない。

赤子は金魚でありながらも姿は少女。
老作家とキスをし、夜はいっしょに寝て、小遣いをねだり、お出かけもする。
赤子(二階堂ふみ)と老作家のおじさま(大杉漣)のやりとりは、脳がトロンとするほどエロティック。

「じゃ、そろそろ、尾っぽの継ぎ張りをやろう。もっと、尾っぽをひろげるんだ。」
「何よ、そんな大声で、ひろげろなんて仰言ると誰かに聴かれてしまうじゃないの。」
「じゃ、そっとひろげるんだよ。」
「これでいい、」
「もっとさ、そんなところ見ないから、ひろげて。」
「羞かしいな、これが人間にわかんないなんて、人間にもばかが沢山いるもんだナ、これでいい、……」
(小説「蜜のあわれ」より)

…エローい!どんな妄想力だ、室生犀星!

室生犀星の幽玄美


この映画、登場人物の半数が生身の人間ではない。
金魚の赤子(二階堂ふみ)、老作家の昔の女の幽霊(真木よう子)、老作家の昔の友人・芥川龍之介の幽霊(高良健吾)。

憶測だが、犀星は「能楽」を意識していたんじゃないだろうか。
室生犀星の出身地・金沢はかつて「空から謡が降ってくる」と言われるほど能楽が盛んな地だった。


能舞台は幽玄の世界だと言われる。
この世ではないものとの対話や存在を愛おしく思う心を「幽玄美」と言うのならば、『蜜のあわれ』は実に幽玄美あふれる映画だった。

室生犀星記念館に行ってきた



室生犀星記念館は金沢市を流れる犀川のすぐ近く、室生犀星の生家跡に建つ。

1階は常設展。
室生犀星の生い立ちや作品など、わかりやすく知ることができる。

映画に登場する芥川龍之介とは頻繁に互いの家を行き来する間柄。
軽井沢でいっしょに過ごしたこともあったそう。芥川龍之介が自殺した翌年、犀星は住んでいた田端を離れる。

また犀星は動物好きの人物であったらしい。家族も動物が好きで、多くの動物を飼っていた(犬、猫、鳥、虫、リス、金魚…)。生きもののに関する作品も多い。
大田区の家の庭で金魚をながめる写真なども展示されていた。


2階では「蜜のあはれ」企画展を開催中(平成28年6月26日(日)まで)。
蜜のあわれに関する原稿や書簡のほか、犀星が金魚の絵で画料を貰った雑誌(「小説新潮」昭和33年6月号)、小説内で老作家が赤子にプレゼントしたタータンチェックの布、幽霊・田村ゆり子のモデルとなった女性の存在などを見ることができる。
映画に関するものの展示は少ないが、興味深かったのは赤子と老作家の衣装。時間の経過につれて変化するのだ。赤子の衣装の丈がシーンごとに変化するのは一目瞭然だったが、老作家の着物の色の変化には気づかずに見ていた。
これから映画を見る方はぜひ衣装の丈や色にもぜひご注目くださいまし。
(イラストと文/小西りえこ)