西島秀俊劇場が終わって「とと姉ちゃん」6話

写真拡大

連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第1週「常子、父と約束する」第5話 4月9日(土)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


とと姉ちゃんの誕生


暗い・・・。
とと(西島秀俊)が死んで、家の中が薄暗い。
朝からこんなに暗くて大丈夫なのかと不安になってくる。影の付け方などがすごくていねいできれいなのだが、画に凝れば凝るほど深刻さが増して見えるのだ。

みんなが悲しみにくれるなか、常子(子役・内田未来)だけ涙を見せず、気丈に振る舞うことで、「冷たい」と鞠子(子役・須田琥珀)に責められてしまう。

可哀想過ぎる・・・。

でも、とことん暗いのは、その後の希望の光をより明るく見せるため。
トンネルを抜けた常子は、ととの遺言をちゃんと守って、「家族を守る」宣言。

第1週6話、ここに「とと姉ちゃん」が誕生する。

頑張ろうとする娘に、母・君子(木村多江)は、ととの撮った家族の日常写真を並べながら、
「なにげない暮らしのなかの一瞬一瞬を大事にしてた人だったから。ととになるってそういうことなんじゃない」とアドバイス。
女4人は「毎日を大事にやっていこう」と誓い合う。
画面もちょっと明るくなってホッとした。

こうして第1週では物語のバックボーンがしっかり描かれた。
1週は、とと役の【西島秀俊劇場】だったが、常子の子供時代を演じた内田未来の、幼いながら理知的な雰囲気も捨てがたい。「梅ちゃん先生」でもヒロインの子供時代を担当している内田。いつか、ヒロインとして活躍する時がくるだろうか。

そして、昭和10年4月からは、とと姉ちゃんこと常子が、いよいよ高畑充希に。
お手並み拝見である。

では、第2週が始まる前におさらいしておこう。

◯小橋家は、母・君子と三人姉妹(常子、鞠子、美子)の女だけの4人家族。父(とと)は、長女・常子が10歳のときに結核で亡くなった。
◯父親代わりに奮闘する長女・常子は、亡くなったお父さんの呼び名「とと」を引き継ぎ「とと姉ちゃん」と呼ばれている。彼女は名前だけでなく、父の生きる哲学のようなものも引き継いでいる。
◯ととは、父親が絶対権威だった、昭和初期の時代には珍しく、威張ることなく公平に家族に接した。
◯ととは「なにげない暮らしのなかの一瞬一瞬を大事に」していた。
◯小橋家の家訓は、「一、朝食は家族皆でとること 一、月に一度、家族皆でお出掛けすること 一、自分の服は自分でたたむこと」
◯常子の名前の由来は、百人一首の「世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも」(鎌倉右大臣)という歌から「世の中の様子が、こんな風にいつまでも変わらずにあってほしいものだ」と、ととが願いをこめたもの。

こうして見ると、ととは父の権威を振りかざすことはなかったが、結果的に、常子たち家族にとっての「絶対」的なものとして残り続けることになる。
とと姉ちゃんはファザコンにならざるを得ないだろう。
「父」不在のなかで、「父」とは何か? を問いながら、「女」を浮かび上がらせるドラマになるとしたら、うまくすればとても面白いドラマができそう。西田征史の視点に期待している。
(木俣冬)