「ジョジョの奇妙な冒険」第四部待ち焦がれたアニメ化。1話からオリジナル展開の気配りがすごい

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ジョジョ第四部は「街を守る」物語


アニメ本編を語る前に、言わせてほしい。『ジョジョの奇妙な冒険』第四部がアニメ化される日を、どれほど待ち焦がれていたか。


1〜3作目を飛ばして、第四部だけをアニメ化するのはフツーあり得ない。原作の中でもダントツ人気の第三部でさえ、前2作がヒットしてなければ、テレビアニメ化に辿りつけなかったはず。初代ジョナサン・ジョースター、二代目ジョセフ・ジョースター、三代目の空条承太郎へと手渡されてきた命のバトンが、ようやく4代目に繋がれた。受け取ってくれーっ!と放たれた血染めのシャボンを手にした感動に震えているのだ。
第四部は第三部と同じく、生命力のパワーが形をとった異能力「スタンド」が存在し、共通のキャラクターもいる地続きの世界だ。しかし、前作までの延長やノウハウで作ればいいというほど、ことは単純じゃない。
なぜなら、第四部は杜王町という「ご町内の物語」でもあるからだ。前作までの主人公達は敵と戦いつつ旅していたし、特に第三部は世界各地を転戦するロードムービーだった。
第四部のジョジョ達は、町の外に出ない。スタンド使いは引かれ合うーーここは異能力者達が意識せずに集まってくる町。「一つの町をじっくり描く」という点が、今までのジョジョと正反対なのだ。
そしてスタンド使い達も、日常生活を営む人間のひとり。走るのが速い、手先が器用、スタンドが使える……という風に、個性を余分に持っているだけ。チョッカイ出してくる奴も、懲らしめて改心させたら「ちょっと一癖ある隣人」に戻るのだ。
主人公達は、これまで通りの生活が続くよう、あるいは水面下に潜んでいた悲劇の連鎖を断ち切るために、地域住人としてがんばる。巨悪と戦うのではなく、自分達にとって大切な「町を守る」物語なのだ。

今回はこんな話


エジプトでの宿敵DIOとの死闘から11年後の1999年、空条承太郎はM県S市にある杜王町にやって来た。目的は、祖父ジョセフ・ジョースターの隠し子で叔父に当たる高校生の東方仗助に会うこと。しかし、出会った仗助は承太郎達と同じくスタンド能力を身につけていた……。

原作の後半に近づけたキャラクターデザイン


爽やかな朝に流れるラジオ、ベーコンエッグが香ばしく焼けるキッチン。幸せそうなリビングには、本体が爆弾にふっ飛ばされたように、ちぎれた腕だけが残されていた……。
このシーンは原作にはないオリジナルであり「スタッフを信用してくれ」というサインに他ならない。
こんな惨劇を出現させられるスタンド使いといえば、「あの男」しかいない。おそらく荒木飛呂彦先生が、この原作を描いている時点では、明確な顔が浮かんでなかったキャラだ。アニメ版は完結した原作から逆算し「起こっていて当然の事件」を補完してる。グッド!
承太郎が街の外からタクシーに乗ってくるオリジナル場面にも意味がある。その道端には、どこかで見た鉄塔が。あの原作話でぽっと現れたわけではなく、ただ「誰にも存在が気づかれてなかっただけ」ということ。
承太郎とサブキャラ一の男前、広瀬康一くんとの出会い。うん、二人ともキャラクターデザイン(以下キャラデザ)がポップにされている。特に第三部ではワイルドでカッコよかった承太郎が、けっこう可愛くなってる。
放送前にファンの間でも賛否両論あったキャラデザだが、アニメ版の勝手アレンジじゃなく、原作後半の絵柄に寄せている印象だ。
荒木先生の画風は連載が続くにつれて変化していく傾向があり、それも原作を読む楽しみのうち。ただ、近年のアニメは「キャラが一定」であることが強く求められる。見ている人を混乱させないためにも、「作画崩壊」と騒がれがちな風潮のためにも。おっかない事件も多いが、住んでいて楽しい杜王町の雰囲気にピッタリだ。

「アトム」も「サザエさん」も再現!


そして不良先輩たちに絡まれる第四部の主人公・東方仗助。このシーン、仗助のデビューというだけでなく、作品の方向性を占う上で意外に重要である。

・不良に投げられて、割れた甲羅から血を流す亀→アリ
・仗助をドヤした先輩が「そのアトムみたいな頭も」→アリ
・「このヘアースタイルがサザエさんみてぇーだと?」(言ってない)→アリ

原作再現で心配されていた3点、オールクリア。合格です!
ロボットヒーローの元祖や不老不死ファミリーの固有名詞、そして痛々しいシーンからも逃げない。アニメ版の覚悟は本物と見ていい。

自分が隠し子と告げられて怒るどころか「すいませんでした」と謝るほどふだんは温和だが、髪型をけなされるとキレる仗助。しかし心の底には優しさがある…そんな性格が形になったスタンドが、クレイジーダイヤモンド。
その能力は、最強と言われる承太郎のスタープラチナのガードを跳ね上げるパワーと、殴った人や物を「なおす」こと。怒ってる時は「破壊したものを別の形に“なおしてしまう“」但し書きがつく。
破壊された承太郎の帽子がキテレツな形に“なおされる”過程が、動き付きで見られるなんて。仗助のデビュー戦としては、「アニメならでは」的に満点じゃないだろうか。

最初の敵・アンジェロの前フリまでていねいに補完


後半は、第一の難敵であるアンジェロこと片桐安十郎が登場。「世界征服の野望とかないけど猟奇殺人だいすき」という、第四部の悪人どもを煮詰めたようなキャラだ。
こいつのスタンド・アクアネックレスに取り憑かれた男が、コンビニ強盗をやらかして人質を取る。それをクレイジーダイヤモンドが人質ごとぶち抜いて、腹にナイフを封じ込めた形で「なおす」のが、仗助の最初の活躍だ。
ちょい役に過ぎないコンビニ強盗が、「アンジェロとすれ違って目をつけられた」という前フリまで補完してるオリジナル展開の気配りがすごい。この期待が次回以降も萎まずに膨らみ続けることを期待して、to be continued(続く)!
(多根清史)